- まえがき
- 酒井式スキルと特別支援教育について /酒井 臣吾
- 特別支援に対応した酒井式の思想とスキルを読み取っていただきたい /小林 俊也
- 1章 言語を含む身体の問題 ◎集中力不足,多動,指示が聞けない
- 1 「部分完成」「ほめる」の連続が集中力持続のコツ
- ―1年「はだかの王様」の実践を通して― /佐々木 智穂
- 2 特別支援を要する子が多いクラスは超スモールステップで
- ―1年「かみなりの国」の実践を通して― /勇 和代
- 3 視覚認知が難しい子は,擬態語を含めた言語活動の活発化で
- ―1年写生会「うさぎをだいたじぶん」の実践を通して― /角銅 隆
- 4 酒井式の原点「しっかり押さえ,しっかりほめる」を貫く
- ―2年「しゃぼん玉」の実践を通して― /椿 善弘
- 2章 授業態度の問題 ◎暴言を吐く,パニックになる
- 1 「それを生かす」指導で自信をつける
- ―1年「ひまわりと小人たち」の実践を通して― /神谷 祐子
- 2 うまくいかないと泣く子には「よし」とする指導で
- ―1年「どんぐりと山猫」の実践を通して― /田村 ちず子
- 3 A君が「シャボン玉をふくわたし」を完成させるまで
- ―1年「シャボン玉をふくわたし」の実践を通して― /筒井 隆代
- 4 「よしとする」「それを生かす」で押し通す「木のある風景」
- ―2年「木のある風景」の実践を通して― /田村 ちず子
- 5 極端に失敗を恐れる子でも大満足の切り貼り法
- ―2年「てんとう虫の運動会ポスター」の実践を通して― /寺田 真紀子
- 6 失敗が成功になる切り貼り法
- ―2年「イルカショー」の実践を通して― /寺田 真紀子
- 7 「手を添える」「手を離す」2つのタイミング
- ―3年一版多色刷り版画「動物を抱いたよ」の実践を通して― /上木 信弘
- 8 全員が成功体験をすることによって絵を描くことが好きになる
- ―3年写生会「マグロのセリ市場」の実践を通して― /岩本 武
- 9 非言語性LD児が3年間でどう変わったか
- ―3〜5年 酒井式スキルの生かし方― /丸亀 貴彦
- 3章 学習に対するやる気の問題 ◎絵に対する苦手意識が強い
- 1 形をうまく表現することが難しい子を激変させた思想
- ―1年「イルカショー」の実践を通して― /大沼 靖治
- 2 特別支援を要する子も喜んで取り組む「やまなし」
- ―1年「やまなし」の実践を通して― /原口 雄一
- 3 自信のない子には,強い憧れをもたせることで教材に引き込む
- ―2年「かさこじぞう」の実践を通して― /佐藤 則子
- 4 手をゆっくり動かすのが難しい子には切り貼り法を
- ―3年「河川敷ポスター」の実践を通して― /牛田 美和子
- 5 完成作品を見せること,ほめ続けることの指導の効用
- ―3年「ジャックと豆の木」の実践を通して― /荒木 拓実
- 6 ダウン症の子が描いた皆既日食
- ―3年「奄美大島の皆既日食」の実践を通して― /原口 雄一
- 4章 コミュニケーションの難しさの問題 ◎言語性に問題のある子
- 1 言葉の通じない子(外国籍)には,部分完成法で
- ―1年「かみなりの国」の実践を通して― /佐藤 貴子
- 2 登校をしぶる子でも楽しく描ける題材「花火」
- ―2年「花火」の実践を通して― /田村 ちず子
- あとがき
- /小林 俊也
- 本書に登場するシナリオと関連書籍一覧
まえがき 酒井式スキルと特別支援教育について
酒井式描画指導法研究会 主宰 /酒井 臣吾
酒井式描画法の原則の中に,「全員合格」の一項がある。今更全員合格もないものだと思うかもしれないが,私はこの原則には一番こだわる。
これは平たくいえば,40人のクラスなら40人全員,文字通りに1人残らず自分が満足する絵を描かせることを指導者に要求することである。
かなり厳しい要求である。
とにかく,全員合格ということになれば,当然クラスの中にいる発達障がいの子どもも含まれる。どんな重度な障がいをもった子どもでも,必ず成功させることを原則としているのである。
長い間,私はそのような考えの中で,シナリオを書き続けてきた。
特に,最近の5カ年は常にクラスの中にいる発達障がいの子どもたちを念頭に置き,よりシンプルでわかりやすい指導法を考え続けてきた。
しかし,発達障がい児といっても,それは実に多様である。ADHD,LD,自閉症などと分類されても,そのADHDの子ども一人ひとりが皆異なっている。
したがって,指導の一般論に入るのは,まだ時期尚早である。
もっともっと個別の事例に当たりながら,具体的な指導の手がかりを積み上げていく必要がある。
そこで,現場の皆さんに,発達障がい児を含め特別支援教育を要する子どもたちへの指導の具体的な事例を提示していただきたいと考えたわけである。
当然のことながら,特別支援を要する子どもたちが1枚の絵を描く中で,本人が十分に満足し,自尊感情を高めることができるような指導を組織することは並大抵のことではできない。
したがって,成功例だけでなく失敗例も大切にされなければならない。成功,失敗にかかわりなく,生の指導を具体的に記述していただいた。
確かに,特別支援を要する子どもに対して1枚の絵を描かせることは容易ではない。しかし,その反面,絵の指導ほど彼らに自信と自尊感情とを育てるために適したものはないともいえる。
私は,数えきれぬほど多くの発達障がい児に自信を与えてきたことを誇りに思っている。
-
- 明治図書