- まえがき
- T 時代の変容と学校行事
- 1.行事指導が難しくなった
- 2.演劇・合唱は終焉に向かっている
- 3.演劇・合唱の指導力がこれまで以上に必要になる
- 4.価値を語り,技術を身につける
- U 「合唱コンクール指導」魔法の30日間システム
- T 合唱コンクールに臨む心構え
- 1.合唱コンクールが「コンクール」であることを意識する
- 2.学級担任のやる気が生徒のやる気を左右する
- 3.各パートの音,曲想まで頭に入っている定番曲をもつ
- U 合唱コンクールの選曲
- 1.合唱コンクールは選曲で半分が決まってしまう
- 2.ユニゾンから入る曲を選ぶ
- 3.発達段階に応じて,ユニゾンを応用していく
- 4.発声練習箇所のある曲を選ぶ
- 5.強弱のはっきりした箇所のある曲を選ぶ
- 6.発達段階に合った歌詞の曲を選ぶ
- 7.得意分野では自分なりに工夫する
- 8.学級の実態に合った曲を選ぶ
- V 合唱コンクール練習以前の準備
- 1.年度当初に学級の実態を把握する
- 2.一歩リードする雰囲気をつくる
- 3.担任の得意な曲を選ぶ
- 4.指揮者は個人能力の発揮よりも成長機会であると心得る
- 5.伴奏者は二番手ピアニストをあてる
- 6.パートリーダーは二人ずつ選出する
- 7.決意の表情とポーズを決めて学級写真を撮る
- 8.個人用楽譜は丁寧に製本する
- 9.夏休み前に個人CDを配布する
- 10.夏休み前に副担任の協力を仰いでおく
- W 合唱コンクール練習週間の第1週
- 1.2学期始業式に1学期末の空気を思い出させる
- 2.音楽の時間に担任もいっしょに参加する
- 3.最初に全パートをあわせてみる
- 4.毎日,最後に全体の合唱をしてビデオ撮影する
- 5.練習1日目でパート練習の基本パターンを確立する
- 6.歌詞のイメージから強弱をつけて音を取る
- 7.ビデオ撮影は次の日への仕掛けである
- 8.初日から飛ばしすぎない
- 9.声量を上げる
- X 合唱コンクール練習週間の第2〜3週
- 1.生徒の耳を鍛える
- 2.歌詞をはっきり歌わせる
- 3.鼻濁音をつくる
- 4.曲想をつける
- 5.最後には音楽の先生を頼る
- Y 合唱コンクール練習週間の第4週・当日
- 1.合唱曲に対する気持ちをあらためてつくる
- 2.課題をもって歌い込む
- 3.学級別交流会の体験を積む
- 4.本番当日に少しだけテンポを上げる
- 5.直前ミーティングは静かなトーンで行う
- V 「ステージ発表指導」魔法の30日間システム
- T ユニット型ステージの構成法
- 1.ステージ発表は花形である
- 2.演劇型ステージには二つのデメリットがある
- 3.二つのデメリットには理由がある
- 4.ユニット型ステージ発表のすすめ
- 5.全体としてポジティヴな雰囲気を醸成する
- 6.大規模なユニット型ステージは学年発表で行う
- 7.一つのユニットを4分程度におさめる
- 8.生徒のタイプによってユニット構成を考える
- 9.1秒たりとも「無駄な間」をつくらない
- U 演劇型ステージの構成法
- 1.演劇とは主人公の成長物語である
- 2.トリック・スターを印象的に描く
- 3.脇役が主人公の価値を決める
- 4.登場人物の特徴を具体的に把握する
- 5.物語の全体構造を具体的に把握する
- 6.場面には重要度の違いがあり優先順位がある
- 7.オープニングを派手につくる
- 8.トリック・スターの登場を派手に演出する
- 9.最終場面は感動的に幕を閉じていく
- 10.大道具はできるだけつくらないことを原則とする
- V ステージ発表を構成する技術
- 1.ステージ発表を構成するには五つの観点がある
- 2.演出に一貫性をもつ
- 3.会場の空間全体を支配する
- 4.効果的に場面転換する
- 5.格好良さとおもしろさを追究しよう
- 6.できるだけ早く全体像を共有することが成功への近道となる
- W ステージ発表練習に取り組む30日間
- 1.子どもたちのアイディアを可能な限り実現する
- 2.リーダー生徒に音響・照明をあてる
- 3.演劇型ステージはハイペースでつくっていく
- 4.30日間をこう組み立てる
- あとがき
まえがき
私という教師は,現在,行事指導を得意とする教師として生徒たちの目にも同僚たちの目にも映っているだろうと思います。
ステージ発表の指導を得意としていますし,ビデオ映像をつくることも得意としています。ダンスの指導さえ心得ており,アイドルグループを真似る女子生徒たちのパフォーマンスも形にしてしまいます。合唱コンクールでは「優勝請負人」と呼ばれることさえあるほどです。
しかし,新卒1年目,初めての学校祭で私が生徒たちとつくった教室発表はそれはもう無残なものでした。企画だけは壮大だったのですが,思いはあっても手立てを知らず……生徒たちとああでもないこうでもないと取り組みましたが,学校祭前日,生徒たちが帰ったあとに出来上がった製作物を見た私は,自らを嘲笑することしかできませんでした。1991年9月下旬のことだったと思います。
それから二十数年の歳月が経ちました。
私は毎年毎年,学校祭と合唱コンクールを経験する中で,少しずつ少しずつ,よりよい指導の在り方を模索してきました。いつか自信満々で行事指導にあたれる日を夢見て,どんな小さな技術でも身につけよう,自分のものにしようと,同僚の指導を観察し,他学級の製作物の写真を撮り,学校祭や合唱コンクールの打ち上げでは,指導を成功させている同僚の横に行って話を聴きました。
本書は私が二十数年を費やして獲得してきた行事指導の在り方のエッセンスをまとめたものです。特に,21世紀になって指導が難しくなったと言われる合唱コンクールと学校祭・文化祭のステージ発表に絞って,その指導の心構え,指導の技術について具体的に語ったつもりです。
第T章は「時代の変容と学校行事」と題して,最近,殊に生徒たちのノリが悪くなったと先生方を悩ませている演劇指導と合唱指導について,その所以と現状認識を語りました。
第U章は合唱コンクール指導です。合唱コンクールの練習が始まってから1ヶ月間の指導だけでなく,4月からこの行事に取り組む姿勢を学級にどうつくっていくのか,合唱曲の選曲はどのような観点で行うのか,合唱練習はどのようにシステマティックに動かしていくのか,本番直前にはどのような留意事項が必要なのか,私の二十数年の経験から得たことをかなり具体的に語ったつもりです。
第V章は学校祭・文化祭のステージ発表のつくり方について述べています。第一に時代の変容,生徒の変容に対応した形のユニット型ステージ発表,第二に従来からのステージ発表の王道である演劇型ステージ発表とに分けて,それぞれにおいてどのように指導していくべきなのか,具体的な技術としてどんなものがあるのか,更にはどの時期にどんな練習をすればよいのかという目処について,これもまたできる限り具体的に語ったつもりです。
また,本書はできるだけ図や写真を入れて,読者の皆さんに私の言っていることをイメージしやすいように配慮したつもりです。特にステージ発表について述べた第V章では,写真や図表をふんだんに盛り込んでいます。その意図が成功しているか否かは読者の判断に委ねるしかありませんが,私としてはできる限りのことをしたつもりです。
本書が右も左もわからない新卒教師に,若さで乗り切ることに限界を感じ始めた中堅教師に,最近の子どもがわからなくなったと嘆くベテラン教師に,総じて行事指導に悩んだり不安を感じたりしているすべての教師に,少しでもお役に立てるなら,それは望外の幸甚です。
大変助かりました。