著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「行事指導」が劇的に変わる! 成功の極意
「研究集団ことのは」代表堀 裕嗣
2012/8/2 掲載
 今回は堀裕嗣先生に、新刊『必ず成功する「行事指導」 魔法の30日間システム』について伺いました。

堀 裕嗣ほり ひろつぐ

1966年北海道湧別町生。北海道教育大学札幌校・岩見沢校修士課程国語教育専修修了。1991年札幌市中学校教員として採用。学生時代,森田茂之氏に師事し文学教育に傾倒。1991年「実践研究水輪」入会。1992年「研究集団ことのは」設立。

―先生は本書のT章の中で、「行事指導が難しくなった」と言われるようになった理由について、「演劇と合唱の指導が機能しなくなってきた」ことをあげられています。本書でも触れられていますが、この点について教えて下さい。

 かつては合唱も演劇も社会にコンセンサスのある芸術形態でしたから、生徒たちも学校で合唱や演劇に取り組むことを楽しむことができました。小中学校でも芸術教室のような行事があって、合唱団や劇団を招いていましたよね。いまは合唱も演劇にもほとんど触れたことのがない……という生徒が多いのではないでしょうか。合唱や演劇の代わりを、いまはバンドやダンス、アニメ、映像などが担っていると感じています。

―本書U章では合唱コンクールの指導法についてまとめられていますが、その1、「合唱コンクールに臨む心構え」の箇所で、「各パートの音、曲想まで頭に入っている定番曲をもつ」ことをあげられています。先生はご自身の「定番曲」をどのように作られていったのでしょうか。これから取り組まれる先生方のヒントとして、教えて下さい。

 これはもう、新卒から意識的に自分の得意な曲を地道に増やしていくということ以外にないと思いますね。僕は自分が中学生のときから合唱コンクールが好きでしたから、教員になったときにも、なんとなく合唱コンという行事を普通の教師以上に大切に考えているところがありました。なんとか合唱コン指導が得意な担任になりたいという意識を新卒からもっていましたね。

―V章では「ステージ発表指導」についてまとめられています。とかく「面倒」と避けられがちとも言われますが、その苦手イメージを生むもとになっている「演劇型ステージ」に対して、先生がすすめられる「ユニット型ステージ」の効果、よい点を教えて下さい。

 簡単に言うと、@出演者が多いこと、A簡単につくることができること、B最初から最後まで完成度にムラのないステージをつくまることができること、C生徒たちのやりたいことを一度に複数取り上げられること、Dバラエティに富んだステージ発表になるので見る者を飽きさせないこと、の五つですね。生徒たちのアイディアを活かしながら進められるので、生徒たちが意欲をもって取り組むことができます。

―本書の底流に流れているのは、先生の「行事は生徒の成長機会である」というお考えだと思います。本書でも詳しく紹介されていますが、合唱コンクールやステージ発表においてこの点をいかすポイント、場面はどこでしょうか。本書でも紹介されていますが、教えて下さい。

 まずは企画段階ですよね。合唱にしてもステージ発表にしても、リーダー生徒たちといっしょに企画をつくる段階がものすごく大きな成長機会になります。もう一つは実際に練習が始まる段階ですね。企画段階で抱いていたイメージとのギャップをどう埋めていくか、これを考えることもリーダー生徒にとって大きな成長機会となります。
 一般生徒に関しては、どれだけ完成度を高められたかということが生徒たちの成長とイコールになります。完成度の低いものはどうしても自己満足に陥りますからね。結局、他のクラスの生徒とか、担任以外の教師とか、保護者とかにどれだけ「良かった」「凄かった」と言ってもらえたかというのが現実的には大きいですよね。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 合唱しても演劇にしても、学校行事として取り組むのが難しくなってきています。それは、実はそれだけ教師の力量が必要になってきているということなんですよね。でも、多くの先生方はどうやって指導したらいいのかを知りません。知らないだけに、ちょっと勉強すると劇的に変わる、劇的に完成度を高められる可能性のある領域でもあるということなのです。本書が少しでも役立てばと思っています。

(構成:及川)

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