- 著者インタビュー
- 学級経営
かつては合唱も演劇も社会にコンセンサスのある芸術形態でしたから、生徒たちも学校で合唱や演劇に取り組むことを楽しむことができました。小中学校でも芸術教室のような行事があって、合唱団や劇団を招いていましたよね。いまは合唱も演劇にもほとんど触れたことのがない……という生徒が多いのではないでしょうか。合唱や演劇の代わりを、いまはバンドやダンス、アニメ、映像などが担っていると感じています。
これはもう、新卒から意識的に自分の得意な曲を地道に増やしていくということ以外にないと思いますね。僕は自分が中学生のときから合唱コンクールが好きでしたから、教員になったときにも、なんとなく合唱コンという行事を普通の教師以上に大切に考えているところがありました。なんとか合唱コン指導が得意な担任になりたいという意識を新卒からもっていましたね。
簡単に言うと、@出演者が多いこと、A簡単につくることができること、B最初から最後まで完成度にムラのないステージをつくまることができること、C生徒たちのやりたいことを一度に複数取り上げられること、Dバラエティに富んだステージ発表になるので見る者を飽きさせないこと、の五つですね。生徒たちのアイディアを活かしながら進められるので、生徒たちが意欲をもって取り組むことができます。
まずは企画段階ですよね。合唱にしてもステージ発表にしても、リーダー生徒たちといっしょに企画をつくる段階がものすごく大きな成長機会になります。もう一つは実際に練習が始まる段階ですね。企画段階で抱いていたイメージとのギャップをどう埋めていくか、これを考えることもリーダー生徒にとって大きな成長機会となります。
一般生徒に関しては、どれだけ完成度を高められたかということが生徒たちの成長とイコールになります。完成度の低いものはどうしても自己満足に陥りますからね。結局、他のクラスの生徒とか、担任以外の教師とか、保護者とかにどれだけ「良かった」「凄かった」と言ってもらえたかというのが現実的には大きいですよね。
合唱しても演劇にしても、学校行事として取り組むのが難しくなってきています。それは、実はそれだけ教師の力量が必要になってきているということなんですよね。でも、多くの先生方はどうやって指導したらいいのかを知りません。知らないだけに、ちょっと勉強すると劇的に変わる、劇的に完成度を高められる可能性のある領域でもあるということなのです。本書が少しでも役立てばと思っています。