- まえがき
- 序章 校長1年目で「職員会議をなくせた」わけ
- 第1章 「校長になる前」の行動戦略
- 1 リーダーシップを発揮する
- 2 複数の視点を持てるようになる
- 3 プロジェクトマネジメントを知っておく
- 4 人を動かすために自分が動く
- 第2章 「校長になることが決まってから」の行動戦略
- 1 学校を知る
- 2 組織体制をイメージする
- 3 目指す学校像を確認する
- 4 実現するための方法を示す
- 5 やらないことを決める
- 6 リーダーとしての覚悟を決める
- 第3章 「組織」を変える行動戦略
- 1 「学習する学校」になる
- 2 ビジョンを共有する
- 3 余白をつくる
- 4 共創的に対話しチームになる
- 5 探索し探究する
- 6 実践し体得する
- 7 対話と越境を重ね自律を促す
- 8 ときに強いリーダーシップを発揮する
- 第4章 「業務」を変える行動戦略
- 1 ゴールを定めて共有する
- 2 枠組みをつくる
- 3 枠組みを具体に落とし込む
- 4 目的に合わせた体制をつくる
- 5 外部のスペシャリストの力を借りる
- 6 会議をアップデートする
- 7 学校DXを進める
- 8 人材を確保し育成する
- 9 広報はみんなで取り組む
- 第5章 「学び」を変える行動戦略
- 1 学びが変わる背景を理解する
- 2 学びを変える目的を体感する
- 3 学習環境をデザインする
- 4 子どもの変化を捉える
- 5 越境を応援する
- 6 校長自ら学び続ける
- 第6章 校長2年目からの行動戦略
- 1 慣れすぎない
- 2 焦らない
- 3 あきらめない
- 4 止まらない
- 5 校長室にいない
- あとがき
まえがき
はじめまして、「複業する校長」の赤司展子です。北海道にある札幌新陽高等学校(以下、新陽高校)の校長を務めています。校長をやりながら、自分が創業したウィーシュタインズ株式会社の代表取締役や、NPOや社団法人の理事なども兼務しています。従事する時間や仕事量における差はあれど、何が主(メイン)で何が副(サブ)であるという意識はなく、全ての仕事や役割において主体的に取り組みたいと思っているので、あえて「副業」ではなく「複業」という言葉を使っています。
新陽高校は、北海道札幌市南区にある全日制普通科の私立高校です。1958年に札幌慈恵女子高等学校として開校、1987年に共学化された際に札幌新陽高等学校と改名し、まもなく創立70周年を迎えます。私はその第13代校長として2021年4月に就任、今年4年目になりました。
現在は新陽高校がある札幌に住んでいますが、2021年4月に校長になるまで、札幌どころか北海道とは縁もゆかりもありませんでした。また、教員免許は持っていませんし、新陽高校以前に学校で働いたこともなく、2014年に福島県双葉郡の教育復興プロジェクトに携わるまで、学校教育とはかけ離れたビジネスの現場でずっと働いていました。
そんな私がなぜ札幌で校長をしているのかというと、きっかけは偶然というかご縁としか言えないのですが、続けているのには必然性があるとも感じるようになりました。
私は、長年教育現場で経験を積んできたベテラン校長でもないし、特別な改革を進めたカリスマ校長でもない。新陽高校は予算が潤沢なわけでも、特別な教員や生徒を集めているわけでもない。それなのに、新陽高校を視察したいという問い合わせは後を絶たず、メディアの取材を受けることもしばしば。2023年にはForbes JAPANの「INNOVATIVE EDUCATION 30」に選ばれ、「地方私学のロールモデル」として特集記事が掲載されました。私自身がセミナーや研修の講師を頼まれることも多く、依頼元の地域も学校種も様々です。
なぜこんなに注目されるのか。
それは、新陽高校でやっていることを「自分でもやってみたい」「これなら自分でもできるかもしれない」と思う方々がいるからではないかと思うのです。
変化の激しい不確実な社会で、学校も変わっていくし、変わらなければいけません。その学校現場で、「変わりたいけど変われない」と悩む声をたくさん聞きます。さらに、学校が変わるためにはリーダーである校長の意識や行動が大きく影響しますが、「校長(管理職)が変わらない、変わろうとしない」という声も少なくありません。
変われないのはたぶん、やり方が分からない、できると信じていない、やってみない、のどれか(あるいはその全部)です。ならば私たちのナレッジと経験をシェアしたら、やり方が分かって、できると思えて、やってみようとする人がいるかもしれない、そう思っています。
「複業する校長」と名乗り始めたのは、校長就任してすぐです。北海道の教育界や校長会でマイノリティである自分をどうしたら認識してもらえるか考えていた時、教員の複業でさえ一般的でないなかで「校長」が「複業」していたら面白いのではないか、そんな軽いノリで言ってみたのがきっかけです。
ですが、今ではこの名称は私の校長としてのあり方にもなっていると感じています。実際に兼業していることよりも、学校の外と中の視点を持っていること、教育とビジネスの両方の経験があること、素人であると同時にプロであるという意識を持っていること、教育者であると同時に自分自身が学びの主体であること、など、いくつかの分野や経験を越境し、複数の自分を持っている「複業する校長」としてのスタンスが、新陽高校が変革し続ける秘訣なのかもしれない、と思うのです。
この「複業する校長」はあくまでもメタファー(比喩)なので、この視点やスキルは実際に複業していなくても持つことができるはず。ただし、少しコツがあります。身に付けるためのトレーニングや、今いる環境から意識的に外に飛び出すことも必要です。そこでこれまで私が公開している実践事例や、やってみたいと思っている方法をこの本にまとめました。項目ごとに、もとになっている理論や考え方、ポイント、実践の背景について書いてあるので、一つでもヒントを見つけていただけたら幸いです。
本書は、初めて校長になる方やなったばかりの方、そして近い将来校長になろうと思っている方に向けたものです。特に、これまで教員として学校現場で働いてきて、急にリーダーとして学校経営や組織マネジメントを任された方のお役に立てればと思って書きました。そして、現在教員をしている方でも、学校とは関わったことがない方からも、学校の校長をやってみたい!という人が増えてくれたら嬉しく思います。
2025年1月 札幌新陽高校「複業する校長」 /赤司 展子
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- 明治図書