- はじめに
- 第1章 “サクセスフル・セルフ”の成り立ち
- 第1節 “Health for all”(すべての人に健康を)
- 第2節 青少年の問題行動を予防するための欧米の効果的なプログラムの概観
- 第3節 青少年の問題行動を理解するための理論とモデル
- 第4節 “サクセスフル・セルフ”が出来上がるまでの手順
- 1.アプローチの方向性/2.学習内容の選定/3.参考にした米国の心理教育的プログラム/4.アプローチの方法/5.プログラム検証からマニュアルの作成へ
- 第2章 “サクセスフル・セルフ”実施要項
- 第1節 実施の概要
- 1.ねらい/2.対象と方法/3.各レッスンの目標,内容,教材/4.評価/5.プログラム実施に際してのポイント/6.各レッスンに共通した留意点
- 第2節 レッスンの実施方法
- レッスン1 “サクセスフル・セルフ”(成功していく自分)への道
- @ “サクセスフル・セルフ”(成功していく自分)をイメージしてみよう
- ・“サクセスフル・セルフ”イメージのワークシート
- A “サクセスフル・セルフ”(成功していく自分)への道
- ・“サクセスフル・セルフ”のワークシート
- ・“サクセスフル・セルフ”のカード
- レッスン2 もめごとへの対処・解決 基礎編 友達関係における大切なワザ“適切な自己主張”・“共感”・“ゆずりあい”
- @ 友達に無理強いしたときの自分や周囲の気持ちを考えてみよう
- ・友達に無理強いしたときに起こる結果を考えるワークシート
- ・友達に無理強いしたときに起こる結果を考えるグループ用ワークシート
- ・(まとめ例)友達に無理強いしたときに起こる結果
- A 言い合いをしたときの自分や周囲の気持ちを考えてみよう
- ・言い合いをしたときに起こる結果を考えるワークシート
- ・言い合いをしたときに起こる結果を考えるグループ用ワークシート
- B 不適切な自己主張をしたときの自分や周囲の気持ちを考えてみよう
- ・不適切な自己主張をしたときに起こる結果を考えるワークシート
- ・不適切な自己主張をしたときに起こる結果を考えるグループ用ワークシート
- C いやがらせをしたときの自分や周囲の気持ちを考えてみよう
- ・いやがらせをしたときに起こる結果を考えるワークシート
- ・いやがらせをしたときに起こる結果を考えるグループ用ワークシート
- D 友達に服従したときの自分や周囲の気持ちを考えてみよう
- ・友達に服従したときに起こる結果を考えるワークシート
- ・友達に服従したときに起こる結果を考えるグループ用ワークシート
- ・(教師用回答例)友達に服従したときに起こる結果
- E キレて暴力をふるったときの自分や周囲の気持ちを考えてみよう
- ・キレて暴力をふるったときに起こる結果を考えるワークシート
- ・キレて暴力をふるったときに起こる結果を考えるグループ用ワークシート
- F 困っている友達を見て見ぬふりをしたときの自分や周囲の気持ちを考えてみよう
- ・困っている友達を見て見ぬふりをしたときに起こる結果を考えるワークシート
- ・困っている友達を見て見ぬふりをしたときに起こる結果を考えるグループ用ワークシート
- ・(教師用回答例)困っている友達を見て見ぬふりをしたときに起こる結果
- レッスン3 もめごとへの対処・解決 応用編 問題解決法を使って友達関係や学校生活を楽しくしよう
- @ やってみよう! 仲なおりの仕方
- ・仲なおりする方法を考えるワークシート
- ・仲なおりする方法を考えるグループ用ワークシート
- ・(まとめ例)仲なおりする方法
- A どうする? 悪口を書くことを誘われたら
- ・悪口を書く誘いを断る方法を考えるワークシート
- ・悪口を書く誘いを断る方法を考えるグループ用ワークシート
- B どうする? 万引きに誘われたら
- ・万引きの誘いを断る方法を考えるワークシート
- ・万引きの誘いを断る方法を考えるグループ用ワークシート
- ・(まとめ例)悪い誘いを断る方法
- レッスン4 ストレスと自己コントロール ストレスの原因・心身のサイン・ストレスマネージメント
- @ ストレスと自己コントロール:ストレスの原因・心身のサイン・ストレスマネージメント
- ・ストレスの原因ワークシート
- ・心身のサインワークシート
- ・ストレスマネージメントワークシート
- ・ストレスマネージメントグループ用ワークシート
- ・(教師用回答例)ストレスの原因・心身のサイン・ストレスマネージメント
- ・(まとめ例)ストレスマネージメント
- “サクセスフル・セルフ”卒業証書
- 心の健康教室“サクセスフル・セルフ”アンケート
- 第3章 “サクセスフル・セルフ”の意義と展望
- 第1節 小学生における“サクセスフル・セルフ”の評価
- 1.方法/2.調査内容/3.分析方法/4.結果および考察/5.まとめ
- 第2節 学校教育における心理教育的プログラム“サクセスフル・セルフ”の意義
- 1.すべての子どもたちの心の健康の向上をめざす/2.心の健康を増進する行動を行うきっかけ作り/3.子どもと教師の関係の向上/4.教師の心の健康の向上
- 第3節 学校教育における“サクセスフル・セルフ”の活用のコツ
- 1.実施方法/2.実施者に求められる技量
- 第4節 今後の展望と課題
- おわりに
- 引用文献
- Appendix 心理教育的プログラム“サクセスフル・セルフ”に関する発表論文
はじめに
青少年の問題行動は,いじめ,対人暴力,器物破壊といった攻撃行動,深夜徘徊や夜遊びなどの非行,喫煙・飲酒,不登校,抑うつなど多岐にわたり,そのどれもが青少年の健全な発達に影響を与える重大な問題である(文部科学省,2005,2006;内閣府,2004)。欧米の調査によれば(Dryfoos,1997),この時期の子どもたちの65%は何らかの問題行動を経験していると推定されており,問題行動を防ぐには,多くの継続的な支援の必要性が指摘されている。特に学校においては,一見些細なことのよう見える問題でも,効果的な対策を行わない場合はエスカレートして,それがあたり前で許容される環境を作り出す可能性がある。
そのため欧米では,問題が生じてから対処するだけでなく,問題が大きくなる以前(日頃)から,すべての子どもの健康を増進したり,健全な発達を阻害する行動の発生を予防したり,発生した場合は早期解決を行うなど,子どもの健康な心身の発達を支援する健康活動(ヘルスプロモーション)が行われている(Bloom & Gullotta, 2003; Greenberg et al., 2001; Weissberg et al., 2003)。このような活動は徐々に広がり,20世紀後半以降には,800を越える青少年を対象とした予防や健康増進に関する実践研究が報告され,近年その有効性が科学的に実証された(Nation et al., 2003; Weissberg et al., 2003; Weisz et al., 2005)。
日本においても,問題が顕在化しているかどうかに関わらず,すべての子どもの心身の健康を増進し,問題行動を予防するための積極的な取り組みが必要と考える。
そこで,日本の実情にあった問題行動を予防するための心理教育的プログラムの開発を試みた。いくつかの小中学校にご協力を頂き,プログラムの試行と修正,評価を行った。そして,自分を知る方法,問題解決法,ストレス対処法,友達に対する適切な自己主張・共感・ゆずりあいの方法を学習するプログラムとしてまとめ,“サクセスフル・セルフ”と名づけた。このプログラムは,自己理解や他者理解を深め,健康的な生活を送るための意欲を高め,社会性が向上し,いじめなどの攻撃行動が減少するといった変化をもたらすものである(安藤,2007ab, Ando et al., 2007)。
本プログラムは,2005年7月に国際心理学者協会より祐宗・ベイン心理学奨励賞を頂いた。それがきっかけとなり,いくつかの新聞でプログラムを含めた青少年に対する心理教育的アプローチの重要性が取りあげられ,全国各地の教育機関や学校,教師の皆様からご関心が集まり,手軽なマニュアルがあったらよいとのご要望を頂いた。そこで今回“サクセスフル・セルフ”の実践マニュアルをまとめることになった。
本書では,“サクセスフル・セルフ”の実施方法をわかりやすく解説するとともに,サクセスフル・セルフの成り立ち,サクセスフル・セルフの意義についても紹介する。
2007年12月 /安藤 美華代
子どもたちに「いじめはいけないよ」と教えるような指導に
なってしまいがちでした。
しかし、この本で具体的な指導方法がわかり、
勉強になりました。
大人になると、いつの間にか気にならなくなりますが、
子どもの時って、友達との小さなもめごとに悩むものです。
そして、その小さなもめごとがやがて大きないじめへと発展する可能性があります。
もめごとをどのように対処すればいいのか学習する、
これこそ子どもたちが毎日生活する上で必要なことだと思いました。
時間があったら、ぜひ実践してみます。