- まえがき
- 1章 学び合い,仲間とともに育つ授業づくりのポイント
- 1 はじめに
- 2 わかって動ける授業づくりとは?
- 3 「わかって動ける」授業づくりの手順
- 4 支援ツールの特徴を理解する
- 5 個別指導と小集団指導から授業づくりを考える
- 6 おわりに
- 2章 「学び合う」授業づくりの実際
- ◆【教科・領域を合わせた指導】
- @特別支援学校/幼稚部/日常生活の指導(朝のあつまり) /福元 康弘
- みんな,おはよう!
- A特別支援学校/小学部/日常生活の指導(給食準備) /松村 香織
- 自分たちで準備するとおいしいね!
- B特別支援学校/小学部/遊びの指導(鬼ごっこ) /小沼 順子
- 「ぼくも 鬼ごっこしたいよ」
- C特別支援学校/小学部/生活単元学習(劇・学習発表会) /小沼 順子
- 「劇団!1組」,始まるよ
- D特別支援学校/高等部/作業学習 /浅川 義丈・池ア 理恵子
- 働く力を伸ばそう!
- ◆【教科別の指導】
- E特別支援学校/小学部/国語科 /野原 秀年
- 言葉博士になろう
- F特別支援学校/中学部/国語科 /野原 秀年
- 質問ゲームをしよう
- G特別支援学校/小学部/体育科(サーキット) /原 康行
- プレイルームから体育館へ!
- H特別支援学校/中学部/数学科(模擬買い物) /本田 智寛
- お金の学習・買い物をしよう
- I特別支援学校/中学部/体育科(ポンポンホッケー) /原 康行
- 全員参加でシュートを決めよう
- J特別支援学校/高等部/国語科 /福元 康弘
- 面接に向けてともに頑張ろう!
- K特別支援学校/高等部/社会科(昔の道具と今の道具) /本田 智寛
- 昔の道具,これは何?
- L小学校/自閉症・情緒障害特別支援学級/国語科 /岡田 一幸
- 「○・×」カードで相互評価する音読の学習
- M中学校/特別支援学級(知的障害)/生活単元 /宮本 美奈子
- 電車とバスに乗って出かけよう
- ◆【自立活動の指導】
- N特別支援学校/幼稚部/自立活動の指導 /佐藤 圭吾
- おやつタイムに伝え合い,学び合い
- O特別支援学校/小学部/自立活動の指導 /山内 功
- 互いにかかわり合って運動しよう
- P小学校/自閉症・情緒障害特別支援学級/自立活動の指導 /岡田 一幸
- 「4くみタイム」で楽しく学ぼう
- 3章 「学び合う」授業づくりQ&A
- Q1:「こう動いて欲しい」の手がかりを教えるポイントはありますか?
- Q2:視覚手がかりが有効なのはどんな時ですか?
- Q3:教師が行う子どもへの働きかけの「基本原理」はありますか?
- Q4:大人に褒められなくても,自分で動ける子の育て方を教えてください。
- Q5:授業中の子どもへの「いい支援」ってどんな支援でしょうか?
- Q6:交換記録ツール「チャレンジ日記」とは?
- Q7:協同支援ツール「サポートブック」とは?
- Q8:個別指導での課題内容は,どのように設定するとよいのでしょうか?
- Q9:子どもの気持ちがそれずに学習がすすむ個別指導の極意を教えてください!
- Q10:小集団指導の待ち時間に子どもが離席してしまうのを防ぐ方法はありますか?
- Q11:「協同学習」のよさを教えてください。
- Q12:協同学習や学び合いを取り入れると,子どもはどう育つのでしょうか?
- Q13:子どもが聞き合う発表にするための工夫を教えてください。
- Q14:TT場面で効果的なSTになるためのポイントは何ですか?
- Q15:TTがうまくいく!ちょっとしたコツ,教えてください。
- Q16:「ダメでしょ」と注意しても効果がありません。叱り方のコツを教えてください。
- Q17:「○○して」と指示すると激しく抵抗します。どうしたらよいでしょうか?
- Q18:手をヒラヒラさせたり身体を揺すったりする行動をやめさせたいです。
- 〈引用及び参考文献〉
- あとがき
まえがき
私が8年にわたってお付き合いをしている特別支援学校には,子ども同士が関わり合い,学び合う姿があります。
授業観察に伺うと,小学部の朝の会では,「チャレンジ発表」が行われていました。一人の児童が「チャレンジ日記」を手に持って誇らしげに登校後に取り組んだ個別学習や家庭でのお手伝いの成果を読み上げると,それを聞いていた他の児童が,手に持っていた「がんばったねカード」を一斉に挙げて仲間を賞賛しています。
中学部の国語「四字熟語」の授業では,生徒がペアになり,「これかな?」「これがよい」と意味を調べて話し合っています。
ふと廊下の踊り場に目を向けると,高等部の生徒が集まって各自が分担した清掃の様子をチェックシートに記録しています。仲間の仕事ぶりや甘いところを評価し合っているのです。その態度や振る舞いは実に大人らしく,確認をし合う眼差しは真剣そのものです。
このように,真に,子どもたちが主体的に活動に参加し,仲間と高め合うような授業づくりを日本中の特別支援学校や特別支援学級に広げていければと願っています。学校を超えた教師の仲間づくりをしたいと考えています。
一方,ほかのいくつかの特別支援学校では,子どもの障害特性や関わる力の難しさもあるのでしょうが,教師と子どものやりとりに終始する授業を見かけることもあります。
教師との関係の構築は,仲間同士の学び合いの基盤となるものですが,同年齢や異年齢集団が形成できる学校だからこそ,子ども同士の学び合いを大切にしたい,と私は考えています。知的障害や自閉症といった「関わり」に困難を示す子どもたちではありますが,だからこそ,仲間関係を通じて,助け合い認め合って,新たな自分を発見したり役割と責任を見出せたりするような授業づくりを求めたいのです。
どうすれば授業の中で学び合う機会を豊富に設定し,機会の質を高めていけるでしょうか。子どもたちの関わり合う力を信じて,学び合う機会をどのようにして提供できるでしょうか。その術が求められています。
そこで,本書を刊行し,知的障害や自閉症のある子どもが在籍する特別支援学校や特別支援学級において,子ども同士が「学び合い,ともに伸びる」授業づくりの視点と指導の手順を紹介したいと思いました。「学び合い,ともに伸びる」授業づくりの基盤には,「わかる,動ける」授業づくりの理論があり,私はその理論についても1章で述べました。2章では,学校現場にいらっしゃる教師に,子ども同士が「学び合い,ともに伸びる」授業事例を紹介していただきました。
初めて担任する教師が本書を手にとられても,本書を参考にそのコツをつかんでいただけるように,子どもが「学び合い,ともに伸びる」ための支援のポイントを重点に置いてまとめました。
本書が,教師の明日からのよりよい授業の一助になれば,幸いです。
上越教育大学 /村中 智彦
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- 明治図書