- はじめに
- 序章 「1人1台端末」の活用と,「個別最適な学び」「協働的な学び」の一体的な充実
- 1 「1人1台端末」が教室にやって来たけれど…
- 2 「個別最適な学び」を実現するために
- 3 「協働的な学び」を発展させるために
- 4 本書で紹介する実践例について
- 第1章 「1人1台端末」の授業の基本を押さえよう!
- タイピング練習の実践例と代表的なツール・アプリの基礎的な活用方法
- タイピング練習で,ローマ字入力を覚えよう!
- Teamsで課題を作成しよう!
- Teamsで連絡帳を提示しよう!
- Formsで振り返りをしよう!
- Formsでアンケートを集計しよう!
- OneNote Class Notebookで「Collaboration Space」をつくろう!
- ロイロノート・スクールでノートを共有しよう!
- 第2章 「話すこと・聞くこと」の実践例
- タブレットで撮った写真を使って,お話をしよう!
- (1年「ききたいな,ともだちの はなし」(光村図書))
- 動画を撮影して,スピーチの質を高めよう!
- (3年「たからものをしょうかいしよう」(教育出版))
- PowerPointでミニプレゼンをしよう!
- (5年「『町じまん』をすいせんしよう」(教育出版))
- 第3章 「書くこと」の実践例
- Wordのディクテーションで,手紙の下書きをしよう!
- (1年「てがみで しらせよう」(光村図書))
- 付箋アプリを使って,物語のアイデアを広げよう!
- (3年「たから島のぼうけん」(光村図書))
- Wordで手紙の下書きをしよう!
- (4年「お礼の気持ちを伝えよう」(光村図書))
- Wordを使って,構成や表現を工夫したポスターをつくろう!
- (5年「ポスターを作ろう」(教育出版))
- 第4章 「読むこと」の実践例
- 自分の声を録音して,もっと音読上手になろう!
- (1年「おむすび ころりん」(光村図書))
- 動画や画像をヒントに,自動車のはたらきとつくりを調べよう!
- (1年「はたらく じどうしゃ」(教育出版))
- OneNoteにドーナツチャートをかいて交流しよう!
- (3年「モチモチの木」(光村図書など))
- ごんをどう思うか,Formsで投票して交流しよう!
- (4年「ごんぎつね」(光村図書など))
- TeamsとOneNoteで「協働的な学び」を進めよう!
- (5年「言葉と事実」(教育出版))
- Teamsで気づいたことを伝え合おう!
- (5年「新聞を読もう」(教育出版))
- ブレイクアウトルームで考えを交流しよう!
- (5年「世界遺産 白神山地からの提言」(教育出版))
- 学習問題ごとに分かれて,ビデオ会議で考えを伝え合おう!
- (5年「大造じいさんとガン」(光村図書など))
- 参考文献一覧
- おわりに
はじめに
「1人1台端末でつくる,個別最適な学びと協働的な学び」と言われると,読者の先生方はどのような子どもの姿をイメージされるでしょうか。
タブレットを前に,黙々と学習に取り組む姿でしょうか。
グループワークをしながら活発にタブレットを活用する姿でしょうか。
それとも,タブレットを駆使して全体に向けて発表をする姿でしょうか。
これらはどれも,本書に出てくる子どもたちの姿ですが,わずか数年前までは,私の担任する教室では,こうした光景は見られませんでした。
「1人1台端末」以前のICTの使われ方は,教師の教材提示が高いウエイトを占めていました。子どもたちは,情報の受け手として動機づけられたり,興味関心をふくらませたりすることはあったものの,プレゼンテーションや情報収集のためにICTに触れる機会は限定的でした。せいぜい,教室に1台の教師用パソコンか,学校に1室のパソコンルームがあるぐらいで,おそらく1年に数える程度しか,学校でパソコンに触れる機会はなかったでしょう。
しかし「1人1台端末」が実現した今,毎日子どもたちが教室で何らかの形でタブレットを使用する姿にも,違和感はなくなってきました。
しかし,子どもたち一人ひとりの学びは,個別最適なもの,協働的なものになっているでしょうか。何をすればよいのかわからず,ただタブレットの画面を眺めているだけになっている子どもはいないでしょうか。また,タブレット上で活発に子どもの発信が行われているけれど,進む方向性を見失い,教師の意図する単元のねらいや子どもたち自身が立てた学習のめあてから外れてしまっていることはないでしょうか。さらに,学びが停滞している子どもがいたとき,そのことを私たち教師は的確に把握し,学習状況を踏まえた指導・助言ができているでしょうか。
「1人1台端末」によって,一人ひとりにとって最適な学びや,真に意味のある協働的な学びをどのようにつくり出せばよいのか。本書では,国語科を切り口として,各学年の発達段階や学習材の特性を踏まえながら,そのあり方を模索しました。
実践を重ねていく中で,自立して進めることができる学習方法を子どもたちが理解できるようにすること,その学習方法を発揮することができる時間と場を単元の中で計画的に確保すること,振り返りを行って次の学習に生かすように促すことなどが必要だとわかりました。そのためには,教師が全体の場で学習方法を教えることに躊躇はいりません。むしろ,丁寧な全体指導は,個別最適な学びを成立させるために必要不可欠です。一方で,単元の中で子どもたちを全体指導から解き放ち,45分間のうち30〜40分間は個々やグループのペースで学ぶことができる時間を設定することも大切です。そのような時間で,教師は支援が必要な子に手厚く寄り添うこともできるし,各グループの学びを順番に手助けすることもできるでしょう。教室全体を見渡し,タブレットを効果的に学びに役立てている子どもを見つけて称賛し,全体にそのよさを広げることも大切です。
私たち令和の教師には,子どもたちが「1人1台端末」から発信した情報を効果的に整理し,個に応じた指導・助言をし,価値づけ,学級全体にフィードバックをしていく力が求められています。いつまでも,チョーク&トークに終始する,従来の授業方法だけにとどまっているわけにはいきません。ICTを効果的に用い,個別最適な学びと協働的な学びを一体的にはぐくむ令和の教育を展開するため,本書を通じて一緒に学んでいきましょう!
2022年3月 /藤原 隆博
実践例はMicrosoftのものだったが、勤務校はGoogleを使用しているので、追試する際には工夫しようと思う。