- まえがき
- 本書の特長と使い方
- 第1章 資質・能力の育成に関するキーワード
- 1 資質・能力の育成に関するキーワード
- はじめに/資質・能力とは 海外での議論/資質・能力とは 日本での議論/資質・能力とは なぜ重要なのか/資質・能力とは 日本での今後の課題/資質・能力とは OECDの場合/全体像の一部としてのコンピテンシー/生徒エージェンシー/ウェルビーイング
- 第2章 次世代教育研究推進機構プロジェトの概要
- 1 育成すべき資質・能力の定義
- 批判的思考力/問題解決力/協働する力/伝える力/先を見通す力/感性・表現・創造の力/メタ認知力/愛する心/他者に対する受容・共感・敬意/協力しあう心/好奇心・探究心/困難を乗り越える力/向上心/正しくあろうとする心/より良い社会への意識
- 2 研究方法
- 本プロジェクトの基本的な考え方/分析方法および用いたデータ
- 3 資質・能力を育成するプロセス
- はじめに/批判的思考力(正誤・適切性)を育成するプロセス/批判的思考力(価値)を育成するプロセス/批判的思考力を育成するカリキュラム・マネジメントの例(1年間・6年生)/教科等をつなげて指導するメリット/批判的思考力を育成するカリキュラム・マネジメントの例(学年間)/学年を超えて指導するメリット
- 4 資質・能力を育成する手立て
- はじめに/批判的思考力(汎用的スキル)/協働する力(汎用的スキル)/問題解決力(汎用的スキル)/好奇心・探究心(態度・価値)/他者に対する受容・共感・敬意(態度・価値)/困難を乗り越える力(態度・価値)/手立ての共通性/まとめ
- 第3章 資質・能力(コンピテンシー)育成のための授業
- 小学校国語・5年 話し合いで批判的思考力を育てる
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/単元の目標/単元の指導計画(全5時間)/本時の流れ(第3時/全5時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 小学校社会・3年 主体的・対話的な追究により協働的な問題解決力を育てる
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/単元の目標/単元の指導計画(全8時間)/本時の流れ(第4時/全8時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 小学校音楽・4年 グループ演奏で協働する力を育てる
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/題材の目標/題材の指導計画(全10時間)/本時の流れ(第5時/全10時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 小学校図画工作・4年 ペア学習で高められる感性・表現・創造の力
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/題材の目標/題材の指導計画(全2時間)/本時の流れ(第2時/全2時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 小学校道徳・3年 批判的思考力と他者に対する受容・共感・敬意を育む道徳科の学習
- 資質・能力育成のポイント/本主題における指導のポイント/本主題における目標/本主題(大主題)の指導計画(全3時間+家庭学習1時間)/本時の流れ(第1時/全3時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 小学校特別活動・6年 話合いでよりよい学級(より良い社会)への意識を育てる
- 資質・能力育成のポイント/学習指導のポイント/単元の目標/本時の流れ(全1時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 中学校数学・2年 より良い社会を志向する態度を育む
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/単元の目標/単元の指導計画(全3時間)/本時の流れ(第2時/全3時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 中学校理科・2年 実験を位置付けた問題解決を通して資質・能力を育成する
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/単元の目標/単元の指導計画(全3時間)/本時の流れ(第2時/全3時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 中学校技術・3年 技術による総合的な問題解決活動の中で協働的な力と意思決定への力を育てる
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/題材の目標/題材の指導計画(全10時間)/本時の流れ(第3時/全10時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 中学校家庭・2年 実験を通し批判的思考力やメタ認知力・より良い社会への意識を育てる
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/単元の目標/単元の指導計画(全6時間)/本時の流れ(第2・3時/全6時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 中学校保健体育(保健分野)・3年 批判的思考力と他者に対する受容・共感・敬意を往還的に相互に高め合うグループディスカッションとその共有
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/単元の目標/単元の指導計画(全2時間)/本時の流れ(第2時/全2時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- 中学校保健体育(体育分野)・1年 ゲームとチームミーティングで協働する力を育てる
- 資質・能力育成のポイント/教科指導のポイント/単元の目標/単元の指導計画(全10時間)/本時の流れ(第6時/全10時間)/指導上の工夫/資質・能力の育成の場面
- あとがき
- 執筆者紹介
まえがき
変化が激しく、予想がつかない時代だと言われている。実際2020年に新型コロナウイルス感染症拡大で通常の授業が困難になるなんて2019年には誰も予想がつかなかったのではないか。もはや未来を予測して、必要な能力を子どもに身につけさせるという方法では対応できなくなってしまっていると考える。以前は子どもたちに「大人になったら使うからしっかり覚えておきなさい」と説得することができた。しかし現在では子どもが今学んだ知識や技能の多くは、社会の変化が激しいので大人になったときに活用できる保障がなくなってしまっているのである。
そのため子どもたちにどのような能力を身につけさせるべきか。それは未来がどのように変わったとしても対応できる能力であろう。それがコンピテンシー(資質・能力)の育成についての基本的な考え方である。批判的思考力、問題解決力、好奇心・探究心などの能力は変化に対応する能力として注目され、そのような能力を育成する授業方法が求められるようになった。しかしカリキュラム・オーバーロードと言われるように、教えるべき内容がどんどん膨らんできて、授業時間数がもはやぎりぎりになってきてしまっている。新しい何かを付け足すことは難しい状況にあると考えられる。
このような難しい状況であるが、日本の良い授業の中で、今までも無意識的に資質・能力は育成されてきたのではないかと考えれば、切り抜けることができるだろう。今まで行われてきた授業を見つめ直し、どのような資質・能力が、どのように育成されているのか、そのための手立ては何か、を発見することができるのではないか。そのことによって新たに時間をとらずに、資質・能力を育成することができるのではないか。
これが本書の提案である。日々の授業を工夫して考えていらっしゃる先生方、資質・能力の育成に関心のある研究者・大学院生に手にとって頂き、ご批評いただけたら幸いである。
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- 明治図書
- 2030年を見据えた教育会のキーワードがたくさんあり、とても勉強になった。未来創造型のカリキュラムづくりをしていく必要があると感じた。2021/7/1030代・小学校教員