- はじめに
- 序章 若い先生を取り巻く時代環境
- 1 今どきの若手と、何が違う?
- 2 若手も、ベテランも、お互いに悩んでいる
- 第1章 若手を育てるリーダーのマインドセット
- 1 学校現場から変わっていこう 〜まず、足元から〜
- 2 いつも笑顔で 機嫌よく
- 3 職員室を居心地よくするために
- 4 職員室は保護者対応を学べる貴重な場
- 5 「ありがとう」は魔法の言葉
- 6 逆ピラミッドを支える立場をとる
- 7 語ることより聞くことを優先する
- 8 教職員同士、フラットな関係を意識する
- 9 強いリーダーシップとは?
- 第1章のポイント
- コラム1 「指示・命令」を「問い」に変える
- 第2章 若手が育つ環境のつくり方
- 1 良好な人間関係の築き方
- 2 教育目標を絵に描いた餅にしない
- 3 学校教育目標の共有ワークショップを行う
- 4 どこを切っても学校教育目標があるように
- 5 長時間労働の改善には、教職員の「脱・形状記憶マインド」が必要
- 第2章のポイント
- コラム2 やる気がなく、段取りの悪い若手の力を伸ばすには
- 第3章 教職員を「支えて伸ばす」空気づくり
- 1 忘れてはいけない教職員のメンタルヘルス
- 2 職員室の「心理的安全性」
- 3 「この指とまれプロジェクト」と「研究ファシリテーター」
- 4 教職員の居場所づくり
- 5 働きやすい職場にも、危険が潜んでいる〜「みんなで」やらない〜
- 6 職員室をよくする「わくわくワークショップ」
- 第3章のポイント
- 第4章 若手のモチベーションマネジメント―ほめ方・叱り方・かかわり方
- 1 「ベテランの常識」は、若手のモチベーションを下げる原因
- 2 いまどきの若手とどうかかわるか こんなことに気をつけよう
- 3 若手のモチベーションを保つには?
- 4 叱ることの難しさ
- 5 みんなの前で指摘をしない
- 6 指示待ち人間をつくるのはやめよう
- 7 若手を救うかかわり ただ1つ、孤立させないこと
- 第4章のポイント
- コラム3 見方を変えれば常識は非常識になり得る
- 第5章 働きやすい職場に必須の「ケアリング」
- 1 「いい雰囲気」をどうつくる?〜「ケア」の溢れる職場に〜
- 2 認め合う空気を学校全体に広げる
- 3 「ケア」が溢れると学校の人間関係が変わる
- 4 若手教師に伝えたい「自分をケアする」13のこと
- 第5章のポイント
- 第6章 それぞれの立場で、若手教師をどう支えるか
- 1 学年主任、身近にいる学年や教科の先生方にできること
- 2 ミドルリーダー・管理職にできること
- 3 新卒1年目の先生方へ
- おわりに
はじめに
学校の大切な
仲間として受け入れる
福井県から東京に派遣され約1年間、首都圏の様々な学校を視察した吉川あき子先生が、私の著書『カラフルな学校づくり』を読んで、次のようなコメントをくれました。まえがきに代えて、ご紹介します。
数年前の夏の研修。ある教員養成大学の先生からお聞きした言葉は衝撃的なものでした。
「教師になってほしいと思う優秀な学生たちは企業に就職し、心配な学生が教員採用試験を受けて教師になっていく。それが大学の現状です」
その後も、いくつかの県の様々な立場の方から、団塊の世代の大量退職による大量採用時代の到来にも関わらず、教師の志望者が減ったことで、学校現場が苦労しているという話を聞きました。
『学校=ブラック』というイメージが世の中に蔓延し、働き方改革を進めようという動きが沸き上がる反面、実はそのことが思わぬ形で日本中の学校現場に深刻な影響を与えているのではないか、そう思わずにはいられませんでした。
就職氷河期の時代に苦労して教師になった自分は、こんな時代が来ることを想像すらしていませんでした。教師になりたいと強い思いをもちながら、採用難のために何年も苦労してきた優秀な仲間をたくさん見てきました。誇りをもって長年教師という仕事を続ける多くの方々は「教師という仕事が若者から敬遠される」現状をやりきれない思いで見つめているのだと思います。
東京にある大学で教育実習に携わる先生を訪ね、お話を伺ったことがあります。学生の実習先の学校の校長先生との会話で忘れられないことがあるのだそうです。教員志望でもないのに教育実習に来る学生に対してどう思うのかを実習生の担当教員から問われた校長先生は、このように返されたそうです。
「いいんだよ、たとえ教師にならなくても。学校の現状を知って、将来学校の応援団になってくれれば、それでいい」
私にとっても忘れられない言葉でした。この校長先生の思いが、まっすぐ「子ども」「学校の未来」に向かっているのだと感じたのです。
東京の様々な学校に訪問して校長先生方からお話を伺う際、若手の先生方についての話題になることがありました。「担任を任せるのが難しい状況」「やめられても代わりの教師は誰も来ない。何とか頑張ってほしい」…どれも厳しい言葉のようですが、「子どもたちのために、若手の先生方に育ってほしい」「学校を支える存在になってほしい」という切なる願いが伝わってくるのです。
「教育の未来を守りたい」という気持ちはみな同じなのだと思います。
『カラフルな学校づくり〜ESD実践と校長マインド〜』(学文社、2019)を読んで心から感激し、たくさんの元気を頂き、居ても立ってもいられずお会いしに行ったのが、著者である住田昌治校長先生でした(今や、私の教育観を大きく変えたバイブルになっています)。
その住田先生のお話の中でよく出てくる言葉があります。
『子どもを、若者を尊敬しています』
『これからの社会を持続可能にするのは大人ではない。若者です』
『若者から学んでいます。若者に育てられています』
若者を1人の人間として尊重し、むしろ自分たちの世代にはないものをもった未来の社会の創り手として尊敬している住田先生の在り方が伝わってきます。
若者がその力を最大限発揮できる職場環境や人的環境をつくる手助けをすることこそが自らの使命であるという住田先生の「思い」があり、そしてその「思い」の先には、10年後、20年後も持続可能な学校や社会があるのだと感じます。
教師の仕事が「ブラック」と表現される時代。それでも「教師」という道を選んでくれた若き教師たちは、きっと強い信念や気概、希望をもって現場に入ってきてくれたはずです。そんな若き教師たちが学校の大切な仲間として受け入れられる学校こそ、子どもの幸福を生む持続可能な学校なのだと思います。
小学校では、新卒でも学級担任を受けもつことが多く、中学校では部活の顧問を担わなければならないこともあります。学級担任や部活の顧問を1人で担うことが難しい教師がいると、そのサポートやフォローに入る教師が必要になります。場合によっては、長時間労働や過重負担、過重ストレスによって休んだり、休職、退職したりするようなことになり、代替えの教師が見つからない現状では、多くの教師に負担がかかり、学校現場は火の車になります。
学校現場では、どんな新卒/若い教師も、「できる先生」として育てることが必要です。
そのために、先輩教師や管理職に必要なことってどんなことでしょう。
ぜひこの本を読んで、考えてみてほしいと思います。
/住田 昌治
「若手が育つ」には、情的な部分が大事と常々考えてはいたが、本書はポイントを押さえとても明確に具体的に整理された論調で書かれており納得できた。これなら楽しい学校づくりができると思った。現職時に一歩踏み込む勇気が足りなかったと振り返る。