- はじめに
- 1章 話し合いの成立はよい学級の証!
- 1 話し合いができると,こんなによいことが!
- 2 話し合いで規範意識の高い学級をつくる
- 3 話し合いで認め合う学級をつくる
- 4 話し合いで自治的な学級をつくる
- 5 話し合いで楽しい学級をつくる
- 2章 こんなところに原因が!話し合いの問題点克服法
- 1 学級経営の基盤が崩れている
- 1真剣に話し合おうとしない
- 2話し合いに協力しない
- 3 独善的,利己的な話し合いとなる
- 4 他の子の発言を促さない,否定的な発言が出る
- 5 全体を考えた話し合いにならない
- 2 話を聞く態度・能力が育っていない
- 1 話し合いのテーマがわからない,理解できない
- 2 他の子の発言に耳を貸さない,傾けない
- 3 互いに意見を言いっぱなし
- 3 自分の意見がない
- 1 自分の意見をもとうとしない,考えようとしない
- 2 意見があってもはずかしがって発言しない
- 3 自分の立場を真剣に考えない
- 4 話し合い・討論のマインドセットの不備
- 1 何のために話し合うのか,目的意識が薄い
- 2 発言が乱暴
- 3 意見を述べることの価値がわからない
- 5 話し合い・討論そのものの指導がなされていない
- 1 方法を教えていない
- 2 おしゃべりはできるがお話はできない
- 3 意見が噛み合わない
- 6 活用・習熟が足りない
- 1 できるまで習熟させていない
- 2 日常化できていない
- 3 成功体験をさせていない
- 3章 みるみる上達!話し合いスキルの指導法
- 1 自分の意見をもたせるための指導
- 1 YESかNOか,二者択一
- 2 答えを選ばせる
- 3 簡単な一問一答
- 4 理由を考えさせる
- 5 無理な理由を考えさせる
- 6 ユーモアのある答えを考えさせる
- 7 ノートに書かせる
- 8 時間を限る
- 9 「質より量」を奨励する
- 10 端的に書かせる
- 2 発言することに慣れさせるための指導
- 1 決まった答えの約束練習
- 2 答えやすい問いを入れる
- 3 挙手指名にこだわらない
- 4 発言数を記録させる
- 3 思考力を鍛えるための指導
- 1 まず量,それから質へ
- 2 違いを見つけさせる(対比)
- 3 似ているところを見つけさせる(類比)
- 4 理由を考えさせる
- 5 相手視点で理由を考えさせる
- 6 考えがまとまるまで待つ
- 4 意見を噛み合わせる指導
- 1 端的に話させる
- 2 端的にメモさせる
- 3 引用して話させる
- 4 賛意を表させる―理由の繰り返し
- 5 賛意を表させる―理由の補強
- 6 賛意を表させる―別観点からの理由
- 7 異論を述べさせる
- 8 根拠の間違いを指摘させる
- 9 根拠の例外をあげさせる
- 10 論理の不備を見抜かせる
- 5 発言意欲を高める指導
- 1 手のあげ方の練習をさせる
- 2 ノートを見て評価する
- 3 時間や分量で挑戦意欲をあおる
- 4 発言競争を行う
- 6 話し合い・討論のマインドセットの指導
- 1 発言すると自分が成長することに気づかせる
- 2 発言によりクラスが成長することに気づかせる
- 3 発言することは義務であると心得させる
- 4 発言内容と発言者を分けて考えさせる
- 5 否定されることに慣れさせる
- 6 語って育てる
- 4章 こうすればうまくいく!場面別 話し合い指導のポイント
- 1 「朝の会・帰りの会」での話し合い
- 2 「学級会(子ども中心)」での話し合い
- 3 「学級指導(教師コーディネート)」での話し合い
- 4 「児童会活動」での話し合い
- 5 「教科指導」での話し合い
- 6 「国語の授業」での話し合い
- 7 「道徳の授業」での話し合い
- 8 「社会や理科の授業」での話し合い
はじめに
子どもたちに話し合いをさせたことのない先生は,おそらく一人もいないでしょう。
それほど,話し合いは日常的な学習活動です。言わばありふれた,特別に際立つようなものではない学習活動です。
しかし,話し合いを上手にさせたことのある先生となると,これは反対にかなり少なくなるのではないでしょうか。
私もそうでした。
話し合いをすると,いつも次のようなことに悩んでいました。
〇決まった子だけが発言し,黙っている子はだいたいいつも黙っている。
〇まったく発言が出ないことがある。
〇理解力が高く,よい意見をもっているのに,自分から発言しない子がいる。
〇それぞれが意見を言っているだけで,お互いの意見が交流することがない。
これらは子どもたちの様子ですが,裏を返せば,以下のように,指導ができていないということです。
〇決まった子だけにしか発言させることができない。
〇黙っている子に発言を促すことができない。
〇子どもたちに意見をもたせることができない。
〇よい意見をもっている子に積極的に発言させることができない。
〇互いの意見を交流させることができない。
それでも私は,話し合いによって考えが練り上げられ,より価値のある適切な合意が形成されたり,自分一人で考えたのではたどり着けなかった,深い気づきを得たりする,そういう授業にあこがれていました。
話し合いによる理想の授業にあこがれていました。
何とかしてよい話し合いの授業がしたいものだと思っていました。
ですから,まったく愚直に,子どもたちに意見をもたせ,子どもたちに発言を促す実践をやり続けてきました。
発言しようとしない子どもたちを叱ったこともありました。
発言するまでずっと待ち続けたこともありました。
報酬を与えて発言を促したこともありました。
子どもたちの心を傷つけたこともありました。
ずっと待ち続けて時間を無為に過ごしたこともありました。
目的のために手段を選ばないようなこともありました。
そのようなたくさんの失敗の中から,ほんのわずかですが,よい結果をもたらす実践が生まれました。
そのわずかな実践の成果を少しずつ積み上げてみました。
そのわずかな成果を繰り返して,少しずつ改善しました。
そうしてでき上がったのが,本書で紹介している私なりの話し合いの指導の仕方です。
話し合いの指導は簡単ですが,簡単には上達しません。
指導する先生の根気が必要です。多くの時間と練習が必要です。
それでも,話し合いの指導がうまくできなかった私でも,何とか話し合いを成立させることができました。
ですから,子どもたちによい話し合いを体験させたいという熱意のある先生ならば,きっとうまくいくと思います。
本書が先生方の話し合い指導の一助となることを願います。
2017年2月 /山中 伸之
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