- はじめに
- 本書の使い方
- Chapter1 英語授業づくりで押さえておきたい5つのこと
- 1 楽しさと英語力は別物と考える
- 2 児童と教師が共有するものとは
- 3 授業はテンポよく
- 4 静→動を意識する
- 5 授業を延長しない
- Chapter2 これで安心!授業準備・環境づくりのポイント
- 1 新年度の準備をする@(お天気チャート・12か月カード・曜日カード・アルファベットフラッシュカード)
- 2 新年度の準備をするA(ALT連絡シート)
- 3 新年度の準備をするB(教師用・児童用名札)
- 4 新年度の準備をするC(教室移動用かご)
- 5 教材・教具を準備する(挨拶セット・磁石・ベル・アルファベットフラッシュカード・言語カード板書用・カード入れ用の袋・フラッシュカード)
- 6 やり取りの指導用掲示教材を用意する(やり取りルール3つ・コミュニケーションのポイント)
- 7 ライティング指導用掲示教材を用意する(4線おうち・ライティングルール4つ)
- 8 装飾ではなく使うための掲示をする(colors/shapes/weather seasonsポスター)
- Chapter3 授業ですぐ使える!指導スキル
- 【授業準備】
- 1 授業の型を毎回決める
- 2 単元内指導は音声→文字へ移行する
- 3 1授業1言語材料にし,アウトプット量を調整する
- 4 ライティングは単元最後に行う
- 【導入】
- 5 挨拶は簡潔に,学びある内容にする(5・6年)
- 6 発音・フォニックス動画で英語空気に切り替える
- 7 英語絵本や歌,TPRで体験的に導入する(3・4年)
- 8 Today’s goal を毎回確認する
- 【インプット】
- 9 言語習得のイメージをベースにする
- 10 インプット→アウトプットの順番を守る
- 11 インプット>アウトプットとする
- 12 インプットの質を確保する(理解可能なもの+1レベル)
- 13 教科書のリスニング教材は内容把握のみ&2回聞かせる
- 14 追いインプットする@(教師→児童)
- 15 追いインプットするA(教師⇔児童)
- 【言語材料紹介】
- 16 言語材料(単語)はインプットの中で紹介する
- 17 ゲームで楽しく単語を学習する
- 18 キーフレーズ(文法)を紹介する
- 【やり取り】
- 19 アウトプットは不完全と考える
- 20 やり取り前に目的・目標を確認する
- 21 やり取りは教具(カード等)を持たせる
- 22 やり取り@は言語材料に集中する
- 23 ミドルコメントをする
- 24 やり取りAではFluency を鍛える
- 【リーディング・ライティング】
- 25 「読む活動」のアプローチを意識する
- 26 虫食いリーディングで,音声でのアウトプットをする
- 27 伝えるためのライティング活動をする
- 28 ライティング指導は書く手元を映す
- 29 ライティングルールは自己確認をする
- 【振り返り】
- 30 振り返る内容を提示する
- 【パフォーマンステスト(事前準備)】
- 31 言語材料を選定する
- 32 状況を設定する
- 33 目標を設定する
- 34 形式を押さえる
- 35 評価項目を決定・説明し,ALTと打ち合わせる
- 【パフォーマンステスト(事前指導)】
- 36 原稿を作成する
- 37 録画→提出→フィードバックをする
- 38 Fluencyと緊張の練習をする
- 39 フリートーク(質問,リアクション)の練習をする
- 【パフォーマンステスト(評価・振り返り)】
- 40 パフォーマンステストの実施・採点をする
- 41 振り返りをさせて,返却する
- 【パフォーマンステスト(時間調整)】
- 42 パフォーマンステストの時間調整をする
- 【ALTとの授業】
- 43 ALTに期待する役割を伝える
- 44 ALTの立ち位置に気をつける
- 45 リアルなインプットをお願いする
- 46 ライティング指導はチームワークで行う
- 47 あと一押し!な子へのアプローチをしてもらう
- 【発問】
- 48 児童の対話へのエンゲージメントを高める
- 49 視覚教材・ジェスチャーを使う
- 50 あえて疑問文で聞かない
- 51 ほめるときは日本語も使う
- 【板書】
- 52 板書の型@Today’s goalは必ず書く
- 53 板書の型A左側に予定を書く
- 54 板書の型B真ん中にフレーズ・言語材料を書く
- 55 板書の型C右側にやり取り例を書く
- Chapter4 どの授業にも役立つ!指導理論
- 1 Focus on Form指導法
- 2 Input enhancement
- 3 Input flood
- 4 Corrective feedback
- 5 Structured input activity
- 6 Dictogloss
はじめに
私自身,留学や海外経験等がなく,一般的な日本人英語学習者として長い間英語を学んできました。しかし,「こんなにたくさんの時間を費やして英語を勉強してきているのに,なぜ満足できるレベルに至らないんだろう」と,英語を学ぶ楽しさよりも,辛さの方が大きかった時期もあります。子どもたちには,英語を学ぶ楽しさも,英語で外国の人とつながる楽しさも味わってほしい,そう願って英語教師になりましたが,私の英語学習経験で,子どもたちの英語力を伸ばしてあげられないのではないかと,大きな不安が常にありました。
そんな不安と,英語教師として働く楽しさを日々感じながら,私に必要なことは自分の授業を振り返り,日々改良を重ねていくことだと信じて,問題集や検定試験の参考書を読み漁り実践して改良し続ける,そんな英語教師人生を送っていました。「これもいいかもしれない!」「これも楽しそう!」と,いろいろなアイデアを得て実践してみるも,何か自分の授業に“芯”がない。
そんなときに,大学院の教授から,“Don’t believe in your experience. Believe in the empirical evidence and SLA theory.”と助言を受け,その英語授業の“芯”とは理論だということに気づいたのです。
英語教師の経験だけでは,学習者の英語力を伸ばせられない。
楽しい授業が必ずしも学習者の英語力を伸ばすとは限らない。
2年半の研究を経て,「第二言語習得理論」を芯に,小学校外国語の授業実践をし,たくさんの失敗もありましたが,それ以上に指導理論への納得と効果を感じることができました。
「○○って言うだけだよ。簡単だね」。そんなふうに教師が思った英語表現さえも,児童は言えない。そんな経験はありませんか?
「たくさん単語をリピートして練習をしたのに,やり取りのときになると子どもたちが言えない」。そんな場面はありませんか?
私も実際に経験した,これらの教師の「なぜだろう?」と思った疑問の答えが第二言語習得理論の中にありました。
また,「前に習ったときは言えたのになぜ言えないの?」や「たくさん声を出しているのに言えないのはなぜ?」と児童の理解度や定着度に先生自身が焦りを感じたことはありませんか?
第二言語習得理論で,学習者の言語習得プロセスを注意深く観察していくと,なぜ子どもたちが話せるようになったのか,なぜ子どもたちが難しさを感じるのかが見え,教師の「なぜ?」の焦り感が軽減され,児童理解が深まりました。
第二言語習得理論で日々の英語授業にぶれない“芯”を。
英語習得のために効率的な授業実践を。
児童の英語学習プロセスを理解して成果も間違いも受け入れられる教師に。
これらの願いを込めて,私の大学院での学びと日々の授業実践をイラスト図解とともに本書で紹介します。専門性を武器にする外国語専科の先生はもちろん,「英語の授業の進め方を一から知りたい!」という先生にぜひ読んでいただき,お役立ていただければと思います。
2024年11月 /増渕 真紀子
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- 明治図書