- はじめに
- 生徒の立場から考える中学校数学科の教材研究
- 生徒のつまずきを生かす指導 全国学力・学習状況調査の分析から
- 生徒のつまずきと指導のポイント
- 1年
- 教材研究のポイント
- マイナスがついた数はどうやって比べるの? 【正の数・負の数】
- 減法はどうやって数直線に表せばいいの? 【正の数・負の数】
- 中学校ではひき算,わり算はなくなるの? 【正の数・負の数】
- 「たせば増える」ではないの? 【正の数・負の数】
- 7−2は「7マイナス2」? 「7ひく2」? 【正の数・負の数】
- 小学校で使った(比例)数直線は使っちゃダメなの? 【正の数・負の数】
- 小学校でもいつでもひき算できたけど… 【正の数・負の数】
- どうやって式をつくればいいの? 【文字と式】
- 式が答えになるの? 【文字と式】
- a+a=a? 【文字と式】
- 計算の答えは1つの項にならないの? 【文字と式】
- −(4−3a)=−4−3a? 【文字と式】
- a(m)b(cm)はa.b(m)? それともa0b(cm)? 【文字と式】
- x(kg)の3%は3x(kg)? 【文字と式】
- x時間は何分? 【文字と式】
- xに数を当てはめたり,逆算で解いてはダメなの? 【一次方程式】
- 両辺に文字があるときはどうやって解くの? 【一次方程式】
- 何と何の比が等しい式なの? 【一次方程式】
- わからない値が2つあるときはどうすればいいの? 【一次方程式】
- 平均の速さは(12+18)÷2=15(km/時)? 【一次方程式】
- xが増えたのに,yが減るの? 【比例・反比例】
- 反比例は,xが増えるとyが減るのではないの? 【比例・反比例】
- xが増えてyが減るなら,a<0ではないの? 【比例・反比例】
- 直線と直線の距離ってどうやって測るの? 【平面図形】
- 対称軸をまたいでいるところはどうすればいいの? 【平面図形】
- 接線は共有点が1個? 【平面図形】
- 角はどこにあるの? 距離はどこを測ればいいの? 【空間図形】
- 階級の幅はどうやって決めればいいの? 【資料の散らばりと代表値】
- 何を根拠に理由を説明すればいいの? 【資料の散らばりと代表値】
- 合計が違う場合はどうやって比べればいいの? 【資料の散らばりと代表値】
- 2年
- 教材研究のポイント
- 2桁の自然数は「xy」ではないの? 【式の計算】
- 偶数や奇数はどうやって文字で表せばいいの? 【式の計算】
- もっと簡単に説明できないの? 【式の計算】
- 二元一次方程式の解っていくつあるの? 【連立方程式】
- 式に式を代入するってどういうこと? 【連立方程式】
- 何についての方程式をつくればいいの? 【連立方程式】
- 比例は一次関数? 一次関数は比例? 【一次関数】
- 点と点を結んでいいの? 【一次関数】
- 平行線の性質と平行線になる条件はどう違うの? 【平行と合同】
- 外角ってどこ? 【平行と合同】
- なんで証明しなきゃいけないの? 【三角形と四角形】
- 何から何を証明するの? 【三角形と四角形】
- 区別するの? 区別しないの? 【確率】
- なんで実験して調べなければいけないの? 【確率】
- 3年
- 教材研究のポイント
- 展開と分配法則はどう違うの? 【多項式の展開と因数分解】
- 展開公式はなぜ必要なの? 【多項式の展開と因数分解】
- なんのために素因数分解をするの? 【多項式の展開と因数分解】
- 面積図はいつでも使えるの? 【多項式の展開と因数分解】
- 面積が2cm^2の正方形ってどうやってかけばいいの? 【平方根】
- √5^2=5だから,√(−5)^2=−5じゃないの? 【平方根】
- √2+√5はこれ以上計算できないの? 【平方根】
- 二次方程式かどうかどうやって判断するの? 【二次方程式】
- 「,」は「または」? 「かつ」? 【二次方程式】
- 比例なのにグラフは直線じゃないの? 【関数y=ax^2】
- 変化の割合は一定ではないのになぜ求めるの? 【関数y=ax^2】
- 伴って変わらないのに関数なの? 【関数y=ax^2】
- 「それぞれ」と「すべて」はどう違うの? 【図形と相似】
- どことどこが対応するの? 【図形と相似】
- 見た目で接しているだけではダメなの? 【円の性質】
- 斜めに見えるところが斜辺ではないの? 【三平方の定理】
- どこから図を見ればいいの? 【三平方の定理】
- 何と何を比べるの? 【標本調査】
はじめに
正の数・負の数。
そこには中学校に入学したばかりの生徒にとって幾多の不思議があり,学び直しの機会があります。それを乗り越えた後,今度は数の範囲と計算を学びます。その際,
「なぜ,先生は小学校ではひき算ができなかったというの? 小学校でもひき算を学んだし,ひき算できたのに…」
という疑問をもつ生徒がいることでしょう。このように,生徒が不思議に思う場面にこそ,学び直しの契機となる本質的な問いがあります。
このような問いは,数学学習では,既存の学習内容を拡張する場面で現れます。惜しいことに,このような大切な問い(教師からみてのつまずき)は,教科書の教師用指導書にさえ書かれていません。理由は2つあります。1つは,わかるように書くには小学校の内容を解説しなければならないからで,指導書にはそのスペースはありません。もう1つは,仮に言及してあっても,自分の数学上の知識を教えようと構える先生,生徒の既習を聞く機会のない先生,小学校の教科書を開く機会のない先生にはその真意が読み取れないためです。
問題解決の指導は,生徒の考えを聞くことで成立します。では,そこで聞くべき考えとは何でしょうか? 解答の意味での生徒の考えは,指導書に記されています。記されていないのは,既習を生かして現れる教師からみてのつまずき,生徒にとっての問いです。本書では,その問いが,小学校からのいかなる既習のもとで現れるのかを明らかにしました。そして,その問いを生かした学習指導の工夫を紹介し,その指導を通してなされる学び直しの価値,教材が本来備える価値を記しました。
本書は,新しい内容を学ぶ拡張場面では,既習を基に考えることでつまずきが現れるという数学学習の本質を前提としています。その中で,全国学力・学習状況調査にみられるつまずきにも目を向けました。そして,各学年で学び直すべき内容は何かを解説したうえで,拡張場面で現れる62の典型的なつまずきとその指導例を紹介しています。
先生方が,既習を基盤に生徒の反応予想をして授業を心から愉しめる,そして,そこに研究の芽を見いだす。それが本書の大きな願いです。
2014年2月 編者を代表して /礒田 正美
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- 明治図書