- はじめに
- Chapter1 子どもの素直さを大事にした資質・能力を育む算数授業づくりの基礎・基本
- 1 算数の授業は問題を解決する授業だけど…
- 1.ある算数授業の導入場面から
- 2.まどろっこしい導入の中にこそ算数の授業の本質がある
- @算数の言葉を実感的に理解する
- A主体的に取り組む態度を育てる
- B全員の「出力」を通して全員参加の意識を育てる
- C子どもに自分の問題意識を乗り越えさせる
- 3.後半の授業の展開から見えてくること
- 2 算数の授業とは何か
- 1.算数の授業って何を教えるの?
- 2.算数で「できる」「わかる」「知っている」はどう違うの?
- 3.算数の「楽しさ」って何?
- 4.問題解決学習って問題を解けばいいの?
- 5.問題解決型授業と問題解決の授業って同じもの?
- Chapter2 資質・能力を育む算数授業を実現する55の方法
- 教材研究の仕方編
- 1 算数の教材研究はなぜ必要なの?
- 2 算数の教材研究はどうやってすればいいの?
- 3 教科書を使って教材研究するときに意識すべきことは?
- 4 教科書を使った教材研究を深める方法は?
- 5 教材研究をする範囲は?
- 教科書の使い方編
- 6 算数の教科書の記述はどのように読み取ればいいの?
- 7 授業中,算数の教科書はいつ使えばいいの?
- 算数の授業づくり編
- [授業開き・学習規律]
- 8 算数の授業開きで大事にするべきことは?
- 9 算数授業の学習規律や形式化はどう考えればいいの?
- 10 子どもが使える学習規律を整えるには?
- 11 算数の学びの邪魔をする学習規律は?
- [全員参加の授業づくり]
- 12 算数授業の言語活動で大事にすべきことは?
- 13 全員参加の授業にならないのはなぜ?
- 14 全員参加の授業を推し進めるためには?
- 15 「できる子ども」だけで授業が進まないようにするには?
- 16 自力解決のときに気をつけることは?
- 17 ペア学習やグループ学習はどんなときに取り入れるの?
- 18 文章問題を正しく読めるようにするためには?
- 19 間違った答えはどのように扱えばいいの?
- [発問・問題提示]
- 20 算数の発問で気をつけることは?
- 21 子どもの興味・関心を引き出す問題提示のコツは?
- 22 条件不足の問題提示のコツは?
- 23 情報過多の問題提示のコツは?
- 24 ゲームやクイズのような活動から始めるときのコツは?
- 25 教材の見せ方の工夫にはどんなものがあるの?
- [板書・ICT]
- 26 黒板に貼るものはどういうもの?
- 27 黒板に書く内容で気をつけることは?
- 28 黒板に書くチョークの色の使い分け方は?
- 29 算数の板書レイアウトの基本型は?
- 30 算数の板書レイアウトの応用編は?
- 31 板書の仕方で気をつけるべき細かいことは?
- 32 算数授業でICTを使う効果は?
- 33 算数授業における具体的なICTの使い方は?
- [ノート・ワークシート]
- 34 算数のワークシートを使うときに気をつけることは?
- [定着]
- 35 計算に関する知識・技能の定着をはかるための方法は?
- 36 図形に関する知識・技能の定着をはかるための方法は?
- 37 数学的な見方・考え方の定着を意識したまとめのあり方は?
- [振り返り・評価]
- 38 「振り返り」とは何をすることなの?
- [授業評価]
- 39 自分が行った授業を自分自身で評価する方法は?
- [学習指導要領との関係]
- 40 算数授業の「問題」と「課題」は何がどう違うの?
- 41 「課題」を設定するときに気をつけることは?
- 42 数学的活動って何?
- 43 数学的に考える資質・能力とは? @知識・技能
- 44 数学的に考える資質・能力とは? A思考力・判断力・表現力等
- 45 数学的に考える資質・能力とは? B学びに向かう力,人間性等
- 46 「深い学び」ってどのようにとらえればいいの?
- [各領域の指導編]
- 47 A「数と計算」領域の指導のポイントは?@
- 48 A「数と計算」領域の指導のポイントは?A
- 49 A「数と計算」領域の指導のポイントは?B
- 50 B「図形」領域の指導のポイントは?@
- 51 B「図形」領域の指導のポイントは?A
- 52 C「測定」領域の指導のポイントは?@
- 53 C「測定」領域の指導のポイントは?A
- 54 C「変化と関係」領域の指導のポイントは?
- 55 D「データの活用」領域の指導のポイントは?
- おわりに
はじめに
新しい学習指導要領が告示されました。算数科では,数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を育成することが目標となっています。そして,その資質・能力として以下のようなことが示されました。
○数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などの理解
○日常の事象を数理的に処理する技能
○数理的に捉え見通しを持ち筋道を立てて考察する力
○統合的・発展的に考察する力
○数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表す力
○目的に応じて柔軟に表す力
○学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度
○算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度
今回告示された学習指導要領を見ると,「数学的活動」「数学的に考える資質・能力」を始めとしたいくつかの新しいキーワードが目につきます。それぞれのキーワードの意味をしっかり解釈し,理解して算数の授業づくりに取り組んでいく必要があります。ただ,これまでの学習指導要領の改訂でもそうでしたが,学校現場は学習指導要領に示された新しいキーワードの解釈とその具体化に右往左往してしまいがちです。目の前にいる現実の子どもの姿抜きで,言葉遊びをしているような算数授業づくりであってよいはずがありません。学習指導要領改訂の時期だからこそ意識しなければならないのは,算数の授業づくりには新しいキーワードに見られるような「流行」の部分もあれば,「不易」の部分もあるということです。つまり,算数の授業をつくるという本質的な営みの中には,学習指導要領が変わっても決してぶれないことがあるということです。
本書では,算数の授業をつくるうえでの「不易」である基礎・基本にあたることを中心に,私の経験を踏まえて整理してみました。特に教職経験の少ない若い先生方にもわかりやすいように,算数の授業をつくるためにどのようなことに気をつける必要があるのかということを具体的な項目を設定して紹介しました。
また,新学習指導要領が告示されたこの時期ですから,これからの時代に求められる算数授業づくりの「流行」にあたることについても私の考えを紹介しました。特に,第1章では,具体的な授業例を通して私が大事にしている算数授業観を示し,画一的で形式的な授業になりがちな算数授業観を振り返っていただきたいと考えました。教師の授業力が成長すれば,算数の授業づくりは必ず成長します。我々教師は,今,自分が行っている算数授業が当たり前と思うのではなく,常に向上させていこうという意識を持ちたいものです。新しい学習指導要領になるからこそ,まだ誰も見たことのない算数授業を生み出してみようと考えてみるのもよいでしょう。
教師が努力した算数授業の先には,必ず学ぶ子どもの笑顔が待っています。本書が子どもの笑顔を生み出す算数授業づくりの一助となれば幸いです。
平成29年5月 筑波大学附属小学校 /山本 良和
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