- はじめに
- /野中 信行
- 序章 理論編 提案!算数科の「味噌汁・ご飯」授業づくり
- 1 日常授業を変える「味噌汁・ご飯」授業
- 1 「手軽で」「飽きない」「栄養価のある」授業を保障しよう
- 2 算数で「味噌汁・ご飯」授業をつくる
- 2 「授業づくり3原則」で授業づくりをする
- 1 シンプルな3原則を常に意識する
- 2 「授業づくり3原則」で1時間の授業時間内でやりきる
- 3 「学力」を向上させる
- 1 操作的定義をする
- 2 目標=授業=評価(テスト)で一体化する
- 3 単元テストは良いのに,どうして学力テストがふるわないのか
- 第1章 準備編 算数科の「味噌汁・ご飯」授業づくり
- 1 算数授業の目標を設定する
- 1 目標を設定する
- 2 教科書を教える
- 3 学習規律を整える
- 4 診断テストをする
- 〇ふりかえりテストA〜E
- 5 1時間の授業のシナリオを提起する
- 6 「ときかたハカセ」を設定する
- 2 授業の準備をする
- 1 指導メモを準備する
- 2 指導メモを作る
- 3 「ときかたハカセ」を作る 「ときかたハカセ」の種類と使い方
- 4 「ときかたハカセ」A型(教科書そのままを使う)の作り方
- 5 「ときかたハカセ」B型(言葉の式+数式)の作り方
- 6 「ときかたハカセ」C型(新しく作成する)の作り方
- 3 授業は分割方式(ユニット法)で行う
- 1 前半のインプット部分の指導
- 2 後半のアウトプット部分の指導
- 4 テスト平均80点〜90点を目指す
- 1 授業を始める前に準備すること
- 2 単元テストの分析
- 3 10分間授業準備法
- 4 テストの見直し法
- 5 低学力児への対応を提起する
- 1 「できる」から「分かる」へ
- 2 授業ではどのような指導をするか
- 3 遅れている子供たちを引き上げる〜単語帳引き抜き法〜
- 第2章 実践編 場面別算数科の「味噌汁・ご飯」授業
- 1 例題指導法
- 1 1年 「ひきざんのしかたをかんがえよう」
- 2 4年 「わり算のしかたを考えよう」
- 3 6年 「比例をくわしく調べよう【比例と反比例】」
- 2 類題・練習問題・ドリル指導法
- 1 2年 「1000より大きい数」
- 2 4年 「わり算のしかたを考えよう」
- 3 5年 「平均とその利用」
- 3 低学力児を引き上げる指導法
- 1 2年 学力向上のための工夫
- 2 4年 「四角形を調べよう」の指導の工夫
- 3 5年 低学力児への指導の工夫
- 4 特別支援学級 子供たちへの指導の工夫
- 第3章 応用編 レベルアップを目指す!算数科の「味噌汁・ご飯」授業
- 1 高学年でも高得点を上げる実践
- ■6年 「速さ」
- 2 授業で図をかかせる
- ■2年 「かけ算」
- 3 復習テストを作る
- ■5年 「平均とその利用」
- 第4章 よく分かる!算数科の「味噌汁・ご飯」授業づくりQ&A
- Q1 算数と数学の違いをどう考えればいいのでしょうか。
- Q2 「ときかたハカセ」はどうしたらうまく作れますか。
- Q3 (業者)テストの成績を上げるにはどうしたらいいですか。
- Q4 低学力児への対処法を教えてください。
- Q5 「教科書を教える」ことにはどのような趣旨がありますか。
- Q6 どうすれば,全員参加の授業になるのでしょうか。
- Q7 10分間程度で,どのようにして教材研究するのでしょうか。
- Q8 「問題解決学習」を行っていないのはなぜですか。
- おわりに
- /小島 康親
はじめに
国語科の「味噌汁・ご飯」授業に引き続いて,算数科の「味噌汁・ご飯」授業を提起する。
算数科の「味噌汁・ご飯」授業は,限られた「時間」の中で,どれほど凝縮した授業ができるかを問いかけている。
★
「味噌汁・ご飯」授業研究会のメンバーの中には,様々な条件を抱えている教師がいる。A先生は,
家庭の事情で,夕方早く帰らなければならない。学校に残って仕事をする時間はない。だから,朝だけ少し早めに学校へ行き,授業の準備をする。
この限られた時間の中で,算数の準備もする。ほんのささやかな時間。
でも,確実に算数の成果をあげる。
例えば,算数2年「新しい計算を考えよう」という単元で,テストの成績は以下の通り。
〈考え方〉48/50点 〈技能〉48/50点 〈知識〉49/50点
どうだろうか。どんな準備をしているのだろうか。
★
教師経験3年目のB先生がいる。
研究会に参加して,すぐに算数の授業を変え始めている。それまでは,「教材研究なし・教科書を読むだけの授業(7割)」「本や同僚の先生からもらったヒント(ネタ)で盛り上がる授業(2割)」「思い出したように問題解決型?(いろいろな考えを発表させる)の授業(1割)」というツギハギだらけの授業をしていたという。
算数の「味噌汁・ご飯」授業を始める。算数の苦手な子供ほど,解ける喜びを素直に感じ取り,算数の授業嫌いが明らかに減ってきた。3人の低学力児も格段に引き上げている。
何をしたら,こういう変化が現れるのだろうか。
★
C先生がいる。
4年生の担任だった。研究会に参加し始めてすぐに算数の単元テスト平均90点以上を連発する。それだけではなく,クラスの低学力児をことごとく中位の成績(60点,70点,80点など)に引き上げていく。ある1人の男の子(今まではずっと0点などをとってきていた)の母親は,「やっと4年生になって,うちの子は出発点に立てました」と担任に語っている。家庭でも,勉強をするように変わったのである。
どんな授業をしたのだろうか。
★
特別な授業をしているのではない。
普通の授業をしている。実にシンプル。
私たちは,教科書を教えている。
限られた時間の中で授業準備をし,ほとんど教科書通りに進めている。
それならば,他の多くの先生たちと同じではないかと思われるであろう。 そう,ほとんど同じように見える。でも,違う。
余計なことはしない。目の前の子供たちが「問題を解けるようになる」ために全力を尽くす。ただそれだけである。
その結果,上の3人の先生のような成果が生まれてくるのである。
★
子供たちに勉強の好き・嫌いアンケートを取れば,「嫌い」だと答える教科で,必ずと言っていいほど算数は上位になる。
それほどに算数は,子供たちにとって嫌われている教科になっている。
現実として,算数嫌いな子供を大量に生み出してしまっているのである。
なぜ,こんなに子供たちは算数を嫌いになるのか?
この問いかけに真正面からぶつかる。
私たち「味噌汁・ご飯」授業研究会は,これらの「現実」から出発している。
★
特別な教材研究や特別な授業を提起していない。
その気にさえなれば,いつでも実現できる実践を提起している。
今まで日本の「授業研究」は,「ごちそう授業」の追究をすることによって成り立ってきた。
「ごちそう授業」とは,多くの時間をかけて教材研究をし,多くの時間をかけて様々な準備をし,精一杯の授業を提起する試み。
この授業は,日本全国で「研究授業」という形で具現化されてきた。
もともとは,私たちが日頃行っている「日常授業」を良くしていこうという試みで始まったはずである。
しかし,多くの時間が経過し,今では年中行事化している。
日頃,やっていない特別な「ごちそう授業」を提示し,全体会で互いに検討して,そして終わり。
先生たちは,明日からまた「ごちそう授業」とは関係がない「日常授業」に戻っていく。
「あれはあれ,これはこれ」という論理で,「研究授業」と「日常授業」は分けられてしまっている。
多くの学校現場で,こういう授業研究が展開されているはずである。
★
こういう授業研究で,何か変わったのか。
子供たちの学力が上がったのか。
先生たちの授業力が上がったのか。
「ほとんど何も変わりません!」という現実があるだけであろう。
そのはずである。
1,2時間の研究授業をどんなに一生懸命がんばっても,1000時間近くの「日常授業」はまったく変わらないのだから。
私たちは,「ごちそう授業」を,「日常授業」にまで広げていかなければならないと主張しているわけではない。
そんな試みを実現できるわけがない。
むしろ,この忙しさの中で何ができるのか,という現実的な提案をしている。
★
現在の学校現場は,関東圏,関西圏の都市部を中心に,深刻な学級崩壊現象に見舞われている。あるいは,学校崩壊にまで陥っているところもある。
普通の教師が,普通の教育ができない。
多くの教師が疲弊し,ぼろぼろになっている。
鬱病になったり,病気になったり,あるいは,辞職を余儀なくされることも数多い。
ここで,大きな「転換点」を迎えていると,私たちは認識する。
★
私たちは,算数の授業を通して,子供たちと1つの「物語」を作ろうとしている。日々消えていくような,ささやかな「物語」。
でも,子供たちに算数に対する「意欲」と「自信」を育てようとする「物語」。
もしかしたら,ある低学力児は,自分の人生を変えるのかもしれない。
この「意欲」と「自信」が,いずれその子供たちを支えていくことがあると,私たちは夢想する。
このように私たち教師は,子供たちの未来に託す仕事をしているのである。
このことを忘れないでおこう。
2017年6月 /野中 信行
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