- はじめに
- 第1章 「対応」の前に先生が考えておきたいこと
- 00 自分が持つイメージを変えてみよう
- 01 9割の先生が知らない、学校と家庭の領分
- 02 子どもと保護者の残酷な真実
- 03 学校内外のリソースのリアル
- 04 アサーティブであることの大切さ
- 第2章 保護者を「理解」する
- 00 お互い歩み寄るということ
- 01 職員室の常識・家庭の常識は違う
- Pattern 1 「平日休む」ってあり?
- Pattern 2 忘れ物は届けてもらうべき?
- 02 保護者にも多様なバリエーション
- Pattern 3 ほとんどサイレントマジョリティ
- Pattern 4 さらに多様な家族のあり方
- Pattern 5 「個別の事情」は無数にある
- 03 家庭の文化≠考える
- 04 学習支援力と子育て力は別
- 05 子どもが不登校になったとき、親は?
- 06 障害がある子の親の気持ち
- 07 保護者から見えている世界とは
- 第3章 保護者「対応」をやめる
- 00 「対応」をやめるとは?
- 01 立ち位置を変え、目的を共有する
- 02 丁寧すぎるほど解説する
- 03 まっすぐ伝える
- 04 わかってもらう
- 05 保護者「対応」をやめる
- 06 家族「支援」の考え方を知る
- 第4章 保護者の心にすっと届くあんしんフレーズ
- 00 自分自身として保護者と向きあう
- 01 「だいじょうぶ」
- 02 「それでいいですよ」
- 03 「一緒にやりましょう」
- 04 「きいてみますね」
- 05 「素敵なひとです」
- 06 「「心配」はしないで」
- 07 「マイナスの経験を大切に」
- 08 「友達はいてもいなくても」
- 09 「いろいろあります」
- 10 「だいじなのは幸せです」
- 11 ことばじゃなくても
- 第5章 こんなときは保護者とこんなコミュニケーションを
- 00 具体的にはどうすればいいの?
- 01 持ち物などの連絡をするとき
- 02 保護者会での事前予防
- 03 個人面談の3ポイント
- 04 保護者との電話の原則
- 05 個別の相談を受けたときは
- 06 友達とのトラブルがあったら
- 07 通知表へのクレームがあったら
- 08 不登校の子の保護者には
- 09 問題行動を伝えるときには
- 10 支援につなげたいときは
- 11 失敗をしてしまったら
- おわりに
- 参考文献・取材協力
- Column
- 1 新しい一歩を踏み出すために
- 2 「大人のための学校」が必要?
- 3 正直に、率直に話します
- 4 どんなときも好意を持ち続ける
- 5 自分で見て、感じたことを大切に
はじめに
●世界を美しくしたいんだ
すみません、ずいぶんブンガク的な小見出しで始めてしまいました。
けれど、「はじめに」を書こうと思って、そもそも私はこの本を書くことによっていったい何がしたいんだと考えていたら、この言葉が、ボンッと頭に降りてきたのです。
いやいや、保護者「対応」の本を書くのに、世界を美しく≠ネんて大仰な、と思われるだろうとわかっています。
それでも、実現したいのはそれなんです。言いたいのはそこなんです。
世の中には、残念ながら美しくない状況がそこかしこにある。けれど、ほんとうは誰も美しい状況の中で気持ちよく笑顔で過ごしたいはず。
それを、まずは学校から始めたいのです。
●ネガティブな会話の後ろ側にあるもの
職員室のネガティブな会話は美しくない。
でも、もちろん保護者の悪口を言いたくなる気持ちは、痛いほどわかります。
愛の反対は無関心、と言います。
先生方が、保護者に思いが伝わらないとき、勝手な解釈で批判されるとき、あるいは身勝手な言動に振り回されるとき、憤って、つい悪態をついてしまうのは、愛があるからだと思うのです。
「そんなものない。あきれているだけ」
そんな声が聞こえてきそうです。
でも、少なくとも「こうあってほしい」という願いがあるから、現実がそうではないことに憤るのではありませんか。「わかってほしい」という思いがあるから、理解されないことを、やるせなく感じるのではありませんか。
●綺麗ごとは美しくない
かといって、とってつけたような綺麗ごとの会話も美しくない。
着飾った言葉で保護者との関係づくりを語られても、偽物の匂いがするんです。
親と教師の関係は、初めて出会う同士なのに、ある意味濃密です。それぞれがそれぞれの思いで、子どもの育ちを考えているからこそ、ときには、すれ違ったりぶつかりあったりしてしまう。
その状況を、そんなに簡単に、さらっと表面的で理想的な言葉で語れるものでしょうか。……立派な$謳カに、非の打ちどころのない言葉でまとめられてしまうと、何も反論できない。だけど、なんか違う。
綺麗な言葉の裏に、言葉にできないもやもやとした思いが隠されてしまっている状況は、決して美しくないように思います。
もしかしたら、あけすけな悪口よりも、もっと美しくないかもしれません。
●むき出しだから、美しい
ネガティブな会話でも、綺麗ごとの会話でもない、新しいやり方を、この本では提案したいと思っています。
それは、裸の心で、むき出しのまま、思った通りのことをあけすけに語りあうというやり方。
等身大の姿をさらけ出すことが、私はいちばん美しいと思うから。
これまでさんざん保護者の心ない言葉で傷ついているのなら、このやり方は怖いでしょう。自分を守るため、表面的に「対応」して済まそうという気持ちになるのも当然です。
だけど、先生に「対応」されていること、多くの保護者はなんとなくわかっています。そして、言葉にできないやるせなさを感じています。この溝は子どもを幸せにしません。
だから、そうじゃないやり方で、新しい関係を。
もし、傷ついたら痛いと言えばいい。伝わらなければ悲しめばいい。
その姿が、きっといちばん美しいです。
2025年1月 /林 真未
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- 明治図書
- 保護者との温かい関係の作り方を学べました。2025/2/840代・小学校教員