- はじめに
- 序章 数学史の視点からの教材研究
- わかりやすい説明をするために
- よい問題を見いだすために
- 数学史の視点から分析する 中学校「数と式」領域の重要教材
- 負の数(1年/正の数・負の数)
- なかなか認められなかった数
- 魔方陣(1年/正の数・負の数)
- 3進法,4進法の活用
- 文字を用いて数量の関係を表すこと(1年/文字と式)
- 文字の使用に至るまでの3つの段階
- 文字式のきまり(1年/文字と式)
- 計算記号の由来と変遷
- 方程式の解き方(1年/方程式)
- 中国経由の「方程」とアラビア経由の「移項」
- 方程式の文章題(1年/方程式)
- 算数的解法と代数的解法
- 比と比例式(1年/方程式)
- 異なる世界を結び付ける比例
- 多項式の加減(2年/式の計算)
- 文字計算と量の線分化
- 文字に文字式を代入する計算(2年/式の計算)
- 「薬師算」とその発展問題
- 整数の性質の説明(2年/式の計算)
- 整数論における文字の使用
- 連立方程式の解き方(2年/連立方程式)
- 加減法,代入法と解の決定
- 連立方程式の文章題(2年/連立方程式)
- 「さっさ立て」とその発展問題
- 未知数が3つ以上の連立方程式(2年/連立方程式)
- 「鵝と鴨と鶏の問題」とその類似問題
- 不定方程式(2年/連立方程式)
- 「百鶏問題」とその変形,類似問題
- 多項式の展開と因数分解(3年/多項式の展開と因数分解)
- 格子かけ算から因数分解へ
- 素数(3年/多項式の展開と因数分解)
- 奥深い探究課題
- 式の計算の文章題(3年/多項式の展開と因数分解)
- 「道幅の面積の問題」とパッポス・ギュルダンの定理
- 近似値の計算(3年/平方根)
- 精密な値を求める合理的な方法
- 無理数であることの説明(3年/平方根)
- 背理法を用いた証明
- 二次方程式の解の公式(3年/二次方程式)
- 分数形を回避して導き出す4倍法
- 二次方程式の文章題(3年/二次方程式)
- 「俵杉算」とその変形問題
はじめに
中学校の数学研究会や講習会などに出席するといつも,先生方皆さんの熱心さが印象に残ります。なんとか生徒たちに数学をわかってもらおう,楽しく数学の授業をしよう,という先生たちの思いのあらわれだと思います。また,公開研究授業なども盛んに行われているようです。
そうした数学研究会や授業研究会では,発問,板書,生徒への対応の仕方などについての議論も行われますが,その教材における導入のあり方,生徒の考え方と教材の関連性,教材を通しての授業の目標,その教材の発展性などについての白熱した議論が多く見受けられます。これは大変望ましい傾向であると思います。なぜなら,数学の授業は小手先の技術で進められるものではなく,しっかりとした教材研究に裏打ちされてこそ本物になると思うからです。
ある単元の目標は同じでも,それに対して構成される教材群は異なることがあります。どのような教材を用いて,どのように展開すれば,すべての生徒を目標にまで到達させることができるかを考えなければなりません。それが教材研究です。そして,教材研究はさまざまな角度からなされます。生徒の心的発達の面から,生徒の生活面から,操作活動のあり方の面から,学習形態の面から,そして数学史的な面から,等々の総合的な考察を経て授業が組み立てられていくわけです。
本書は,そのような種々の側面のうち,数学史的視点から教材を分析し,望ましい教材群の構成,それに基づく授業構成のための糧を提供しようとするものです。数学史的な知見は,そのまま授業に使えるというものばかりではありませんが,教材とそれに基づく授業の背景や意義を教えてくれます。そしてまた,生徒の素朴で何げない疑問に答えてくれることも多いと確信しています。
数学史に関する著書は数多く出版されていますが,中学校数学の単元に沿った形で,中学校数学の教材に即して書かれている本はそれほど多くはないと思います。本書は,中学校3年間の数学の「数と式」に関するすべての単元において,数学史の視点から論究したものです。
なお,本書は【数式編】であり,【図形編】も刊行されますので,この2冊をあわせてご活用いただければ幸いです。
最後になりましたが,本書の執筆の機会を提供してくださった明治図書出版と,編集でお世話をおかけしました矢口郁雄さん他皆様に,厚くお礼申し上げます。
2014年2月 /上垣 渉
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- 明治図書
- 教材研究の参考になりました2023/11/720代・中学校教員
- 授業で使えるネタをいくつか発見できました。2015/11/1550代・中学校勤務
- 授業での話題が増えそうです。2015/9/24教員