- はじめに
- ―教科の授業で,本物のソーシャルスキルが身につく―
- 第1章 授業で育むソーシャルスキル
- /阿部 利彦
- ・子どもたちとソーシャルスキル
- ・ソーシャルスキルを学ぶことの利点
- ・「謝罪の仕方がわからない」のか「謝罪したくない」のか
- ・自然に身につかない,気がつかない子のために
- ・「考え方」の幅を広げるソーシャルスキル指導
- ・いつもは「うそをついてはいけない」と教えているのに
- ・他者視点取得とソーシャルスキル
- ・感情調整とソーシャルスキル
- ・ソーシャルスキルトレーニングの場が楽しい場であること
- ・援助を求めるスキルは究極のスキル
- ・ソーシャルスキル指導の新たな形
- 第2章 授業の困った場面でソーシャルスキルトレーニング!
- 国語 /桂 聖
- 国語授業でソーシャルスキルを育てる
- ・人の気持ちを理解できずに,トラブルになる子
- ・意見の言い方がきつくて,友だちに不快な気持ちを与える子
- ・お願いや要求が言えずに,ひと言だけで済ませる子
- ・理由を言わないので,誤解されやすい子
- ・相手の非を責めて,自分の非を認めない子
- ・自分の説明が友だちにわかってもらえない子
- ・同じ過ちを繰り返してしまう子
- ・自分と友だちの考えが違うことが理解できていない子
- ・ひと言だけで話す子
- ・人の話が聞けない子
- 算数 /盛山 隆雄
- 算数授業でソーシャルスキルを育てる
- ・発表の時に指名されないと,ふてくされる子
- ・わかっていても当ててほしくない,と思う子
- ・相手のことを考えずに,自分だけわかる説明を展開する子
- ・友だちの間違いを指摘し,ばかにする子
- ・自分の考えに固執し,友だちの考えを受け入れない子
- ・答えが合っていればいいと考える子
- ・突然,話し合いの文脈に沿わない話題を出す子
- ・現実的に考えすぎて,算数の問題を理解することができない子
- ・できた後に,振り返り(反省的思考)をしない子
- ・友だちと協力して活動ができない子
- 音楽 /平野 次郎
- 音楽授業でソーシャルスキルを育てる
- ・友だちの表現を聴くことができない子
- ・みんなでそろえて活動できない子
- ・自分の表現ばかりに夢中になってしまう子
- ・あの楽器がよかったのに!と言い張る子
- ・音の名前がわからない子
- ・ある子だけが中心になって活動してしまう場面
- ・友だちと関わりながら表現ができない子
- ・間違いを笑ったり,悪口を言ったりする子
- ・器楽の曲を最後まで集中して演奏することができない子
- ・1人で歌う時になると急に表現が小さくなってしまう子
- 体育 /清水 由
- 体育授業でソーシャルスキルを育てる
- ・長なわ跳びなどのみんなで協力していく運動で,仲間への言葉がけがひどい子
- ・自分だけが運動を楽しみ,他の子が楽しめていないことに気づかない子
- ・勝敗にこだわって負けたグループやチームの気持ちを考えられない子
- ・マット運動や鉄棒運動が苦手で,友だちの前で運動することを嫌がる子
- ・ボール運動で何をしたらよいのかがわからず,動けない子
- ・友だちが運動をできないのを責めたりからかったりする子
- ・他の子の考えていることや思っていることを予想できない子
- ・集合したときに,周りの子とぶつかったり前の子へちょっかいを出してしまう子
- ・集合や移動をするときに,他の子を待たせてしまう子
- ・友だちの運動を見たり応援したりできずに,ふらついたり遊んだりしてしまう子
- 第3章 学習場面でソーシャルスキル・エクササイズ!
- 国語
- ステレオゲーム
- クイズトーク
- 1分間研究発表
- フリートーク
- 音楽
- 『幸せなら手をたたこう』ゲーム
- 『円でリズム』ゲーム
- 拍に合わせて座るゲーム
- リコーダーや鍵盤ハーモニカで『1音リレー』
- 算数
- ポイントゲーム
- おだんごゲーム
- フォースフォー
- 正方形パズルを楽しもう!
- 体育
- 谷渡り(クロスバレイ)
- ひっこぬき
- ネット型協力ゲーム
- 集団なわ跳び『トラベラー』
はじめに
―教科の授業で,本物のソーシャルスキルが身につく―
これまでの学校では,家庭や地域の生活の中で,わりと楽観的に,人間関係を築く技術が身につくものだと考えられてきたようです。
しかし,現在では,子どもたちの中には,人間関係を築くことが苦手な子が増えてきました。そこで「ソーシャルスキル」を丁寧に指導していく必要性が高まり,ソーシャルスキルトレーニング(以下,SST)が,日本全国の学校に広まってきました。
しかし,そのSSTにも課題があります。中でも「トレーニングしたことが生活に活用されないこと」が大きな課題だと言われています。
また,「SSTの授業時間を確保しにくいこと」も課題です。学級活動や道徳で行うことができますが,複数時間の確保は難しい状況です。
では,こうした課題をどのように克服していけば良いのでしょうか。
私たちは「教科の授業で,ソーシャルスキルを指導すればいいのではないか」と考えました。実は,優れた教科の授業では,必ずと言ってよいほど,子ども同士が望ましいかかわり方をしています。授業者は,教科特有の知識や技能を指導すると同時に,望ましい友だちへのかかわり方や学び合いの方法を指導しているのです。
子どもの生活のほとんどは,教科の授業。その時間の中で「生きたソーシャルスキル」を学ぶことができれば,これほど画期的なことはありません。
ここでは,国語,算数,音楽,体育を事例にしていますが,すべての教科・領域の授業でソーシャルスキルの指導は可能でしょう。本書の提案をきっかけに,全国の子どもたちに本物のソーシャルスキルが育つことを願っています。
最後になりましたが,明治図書出版の佐藤智恵さんには丁寧に編集をしていただきました。心よりお礼申し上げます。
著者代表 筑波大学附属小学校 /桂 聖
掲載されている以外の教科での指導についても知りたいと思いました。