- はじめに
- 序章 新学習指導要領と探究・キャリア教育
- 1 新学習指導要領で大切なこと
- 2 探究的な学びと総合的な探究の時間
- 3 キャリア教育
- 4 探究とキャリア教育を核として生徒を育てる
- COLUMN1 高校で実施されている探究の分類
- 第1章 高等学校における探究時代のキャリア教育
- 1 進路指導からキャリア教育へ
- 2 「キャリア教育=イベント」ではない
- 3 キャリア・パスポートを活用して振り返る
- 4 教科でのキャリア教育
- 5 総合的な探究の時間はキャリア教育の絶好の機会
- 6 キャリア教育は次の世代へ
- 7 すべての学びを紡ぎ、未来へつなぐキャリア教育へ
- 株式会社ベネッセコーポレーション /山下 真司
- COLUMN2 筆者自身の取り組みからキャリア教育の歴史を振り返る
- 第2章 探究時代の教科学習デザイン
- 1 探究時代の教科学習のヴィジョン
- 京都大学 /石井 英真
- 2 授業の今と未来
- 3 教科の授業×キャリア教育=生徒が探究する授業
- 4 生徒が探究する授業にするためのちょっとした工夫
- 5 単元レベルでの授業デザイン
- 6 授業改善の取り組みから生まれる未来
- COLUMN3 若狭高校での授業改善の取り組み
- 第3章 探究とキャリア教育・教科学習をつなぐ実践事例
- CASE1 国語 学びを自分や社会とつなぎ、自己効力感を高める
- 福岡県立八女農業高等学校 /平川 裕美子
- CASE2 数学 「わからなさ」に向き合うことが探究・キャリア教育となる
- 文部科学省総合教育政策局地域学習推進課 /吉岡 拓也
- CASE3 英語を道具に、きっかけはいつもの日常から
- 京都府与謝野町教育委員会 /大槻 裕代
- CASE4 社会 古代オリエントに学校を創る ―探究で教育活動に横串を
- 西大和学園中学校・高等学校 /梨子田 喬
- CASE5 理科 探究活動支援及びその変遷 ―理科教員としての取り組み
- 崇城大学総合教育センター /溝上 広樹
- CASE6 特別活動 「キャリア・パスポート」は自己実現の伴走者
- 沖縄県立北中城高等学校 /神谷 百恵
- CASE7 キャリア教育コーディネーターの取り組み ―名古屋市のキャリア教育
- 名古屋市立高等学校キャリアナビゲーター /長谷川 涼・A-sessions代表 /上井 靖
- CASE8 「つくりたい未来に向けて探究し続ける意欲」を育む全国高校生マイプロジェクト
- 認定特定非営利活動法人カタリバ /山田 将平・横山 和毅
- CASE9 児童・教員・保護者全員が探究学習の主体者となる実践
- 立命館小学校 /新澤津 純輝・鷲見 秋彦
- CASE10 大学でのキャリア教育 ―学び続ける教師を目指す人のために
- 京都女子大学 /村井 尚子
- 巻末座談会 探究・キャリア教育のこれまでとこれから
- 執筆者一覧
はじめに
もし、すべての生徒が探究やキャリア教育を通じて自分の興味や目標を見つけ、そのビジョンを未来へつなげることができたらどうなるでしょうか。そんな教育が実現すれば、生徒たちは学びに積極的に参加し、自分の未来に自信をもつことは間違いありません。
こんな夢を抱きつつ、目の前には厳しい現実もあります。新学習指導要領が実施され、探究の重要性が強調されていますが、学校現場では手探りの状態で新しい教育課題に向き合っています。探究が本当に生徒たちの成長につながるのか、どのようにキャリア教育を各教科の授業に組み込めばよいのか、という問いに対する答えも見つかりにくい状況があるように思います。そんな中、私たちは何ができるのでしょうか?
これまで、学びに焦点を当てた『探究的な学びデザイン』、組織に焦点を当てた『探究が進む学校のつくり方』を刊行させていただきました。本書は過去2冊のテーマを含みつつ、「探究」「キャリア教育」「授業改善」というキーワードを基に、教育現場の「今」を見つめ、未来への展望を描くことを目指しています。
次の問いのどれか1つでも関心のある方は、ぜひ本書を手に取ってください。
・なぜ探究が重要なのかを説明できるようになりたい。
・探究とキャリア教育、授業改善がなぜ一緒に語られるのかを知りたい。
・総合的な探究の時間と教科、キャリア教育とのつながりを知りたい。
・振り返りや「キャリア・パスポート」の重要性を理解したい。
・教科する授業、真正な学びの追求について知りたい。
・探究やキャリア教育についての事例を、高校はもちろん、小学校や大学も含めて知りたい。
・教員以外の方がどのように学校教育に関われるのか知りたい。
これからの教育を考えたときに、「探究」と「キャリア教育」は、流行語ではなく、生徒たちが未来を切り拓くための重要な柱です。本書は、先生方はもちろん、教員とは違う形で学校に関わる方にも、こうした問いの答えを探るための道しるべとなることを目指して執筆しました。
序章では、学習指導要領に焦点を当てながら、「探究」と「キャリア教育」がどのように結びついているのかを明らかにし、その意義を解説しています。
第1章では、キャリア教育の「今までとこれから」に焦点を当てています。リクルートで長年キャリアガイダンスの編集長をされていた山下さんにも執筆していただき、キャリア教育の深化を考える内容となっています。
第2章では、「授業」に焦点を当てています。はじめに京都大学の石井英真先生に「探究時代の教科学習のビジョン」を執筆していただきました。それを基に、授業のこれから、探究的な授業づくり、授業改善について執筆しています。学校で生徒が最も多くの時間を費やしているのは授業で、学校は授業から変わります。本章を読むことで、どのようにして、探究的な学びを各教科の授業に組み込むことができるのかがイメージできるようになります。
第3章は事例です。各教科での取り組みに加えて、キャリア・パスポートの取り組み、小学校や大学の取り組み、外部専門職の方による取り組み、全国の高校生を集める取り組みがあります。第3章で、序章から2章までに書かれていることが、どのようにして具体的な実践になるのかを確認していただければと思います。
本書は、高校の先生はもちろん、小・中学校の先生や、大学生、教員ではない形で学校に関わる方も読んでくださることを想定して執筆しています。探究学習とキャリア教育に取り組むすべての教育者にとって、日々の授業や学びの場に新たな視点とインスピレーションをもたらすことを目指しています。第3章の事例執筆者の顔ぶれからもそのことが伝われば幸いです。
気がつけば、現在の学習指導要領が高等学校で始まって3年が終わろうとし、次の学習指導要領作成に向けての動きも始まっています。そんな時期だからこそ、今の実践が未来をつくることは間違いありません。今の教育は過去の多くの方がつくってこられたものですが、これからの教育は私たちが創っていくものです。
本書をお読みいただいた方と一緒に、よりよい未来、よりよい教育が探究できればと思いますし、本書がその一助になれば幸いです。
2024年12月 /酒井 淳平
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- 明治図書