- はじめに
- 第1章 いじめ撲滅!あったか仲間づくり12か月
- 4月
- 1 先生の叱り方
- 2 「いがいが言葉」
- 3 「マイナス言葉」「プラス言葉」
- 5月
- 4 「みんな違って,みんないい」
- 5 人の悪口を言わない
- 6 友だちじまん・クラス認定あだな
- 6月
- 7 いじめとけんかの違い
- 7月
- 8 いじめはどうして悪か
- 9 いじめはどうして許せないのか
- 9月
- 10 他人に厳しく,自分に甘い人
- 11 自分のタイプ
- 10月
- 12 友だちの良いところに注目しよう
- 11月
- 13 トラブルの解決
- 14 いじめる脳
- 12月
- 15 悪口を減らす取り組み
- 16 教師の心構え
- 17 内緒話をやめよう
- 1月
- 18 いじめは役に立つ経験か
- 2月
- 19 本当の自尊心とは
- 20 自分の幸せ,他人の幸せ―天国と地獄―
- 3月
- 21 教室にあふれさせたい言葉,なくしたい言葉
- 22 3つの幸せ
- 23 教育の目的は何か―最後の学級通信―
- いじめ撲滅!あったか仲間づくり体験記
- 第2章 いじめ撲滅!がんばる先生の奮闘記
- 1 「ぼくはいじめられています」からの出発
- 2 いじめ一歩前…子ども同士の関係を深めたい!
- 3 虐待が疑われたケースを学校の外から支援したい!
- 4 守りたかった!リベンジをかけて
- 第3章 発達障害当事者の先生が語るいじめの防ぎ方
- 1 いじめと向き合う
- 2 いじめのきっかけ
- 3 いじめはそこで始まっている
- 4 「痛み」は共有できない
- 5 教室はもともと特別な場所
- 6 ボクの居場所
- 7 学習環境を考える
- 8 教師はいつも見られている
- 9 ネガティブシャワー
- 10 友だちという価値観
- 11 コミュニケーション能力
- 12 ニュアンスという敵
- 13 独特のつまずき
- 14 席替え
- 15 学校という組織
- 16 恩師の存在
- 17 情報の共有化
- 18 臨床心理士という味方と心理検査
- 19 保護者との連携
- 20 特別支援教育の行く末
- 21 特別支援教育士
- 22 価値観
- 23 ボクの生活必需品
- 24 教室を整備する
- 25 理想の教師
- あとがきにかえて…担任への信頼
- コラム
- 1 いじめのスモールステップ
- 2 連絡帳に「おしゃべりサイン」
- 3 いやし隊 海猿隊
はじめに
私が学級担任をしていた時に,何回かいじめがあるクラスを担任したことがあります。また市の適応指導教室で勤務していたこともあります。適応指導教室は主に怠学傾向はない不登校の児童生徒が通う公的な施設ですが,不登校が始まった原因がいじめられた体験だったということも,少なくありませんでした。また現在の職場である大学で出会う発達障害のある学生の多くは,過去にいじめられた経験をしています。
私は以前に『発達障害の子どもとあったかクラスづくり』(明治図書)で「20個の取り組み」を紹介しましたが,そのコンセプトの1つは「授業にくい込まないこと」でした。学校現場では,うかうかしているとすぐに授業が遅れ,保護者からのクレームに悩まされることになります。また学期末に学習を詰め込んだり,テストが続くと,支援の必要な子どもにとってはかなりの負担になります。ですから「20個の取り組み」は,なるべく授業時間を削らないことを配慮して考えました。
つまり「20個の取り組み」は,いわゆる「投げ込み教材」(教科書には載っていない教材や特別のプログラム)ではなく,普段の授業を工夫し,授業の中で取り組めるソーシャルスキルトレーニングを目指しています。
そんな中で私が毎年取り組んでいた「投げ込み教材」が,1つだけあります。それは「いじめ撲滅のための授業や取り組み」(以下いじめの授業)です。私がいじめの授業を大切にしていた理由は,子どもたちが学級で居心地がよく安全に過ごすためには,担任が率先していじめを防がなくてはならないと考えていたからです。すべての子どもがいじめの被害者になる可能性がありますが,発達障害のある子どもは被害者になる可能性が高いです。場合によっては加害者になることもあります。だから,いじめの学習は最優先課題でした。
数年前,担任していた子どもが,大学生になって私を訪ねて来ました。「先生のように,いじめから子どもを守る教師になりたいから」と教員採用試験を受ける相談をしてくれました。でも私は,彼をいじめから守った記憶はありませんでした。いじめから守るどころか,情けないことに私はそのクラスでは子どもたちに振り回されていました。クラスメートに暴力を振るわれ,髪の毛をわしづかみにされた子どもがいました。わしづかみをした,その指を1本ずつ引き離した覚えがあります。でもそれは,彼ではありませんでした。何人かの子どもに振り回され,一人一人の子どもを大切にできなかった後悔だけが私には残っていました。
思い当たることは1つだけでした。それは,「いじめの授業」をしていたことです。私は毎年「いじめの授業」だけは,「投げ込み教材」として取り組んでいました。彼はそのことを覚えていたのかもしれません。私は学級崩壊していたそのクラスで,ボロボロになりながらも「いじめの授業」は,省くことなく取り組んでいました。あの時は何もうまくいかなかったと思い込んでいましたが,「いじめの授業」だけは,子どもたちの心に残っていたのかと,少しビックリしました。質の高い授業は,必ず子どもの心に影響を与えるのです。いくら苦しいクラスでも,真摯に授業に取り組む姿勢が,必ず子どもの心に残ると信じて誠意を込めて授業をすることが大切なのです。
本書ではいじめを防ぐための取り組みの12か月をドキュメント風に紹介,2章では事例を,3章では発達障害当事者の先生にご執筆いただきました。明日からの先生のご実践に役立てていただければ幸いです。
編著者 /松久 眞実
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- 明治図書
- 校内職員にも紹介して、読んでもらいたい2022/6/1350代・小学校管理職
- 内容が多岐にわたり、非常に良かった2015/6/1420代・小学校教員