- まえがき
- T 授業づくりの基礎・基本
- 1 理科授業の基本的な進め方
- 1 授業展開の基本
- 2 導入で子どもに「ハテナ」をもたせよ
- 3 仮説を立てさせる
- 4 観察・実験で確かめさせる
- 5 結果と結論をまとめさせる
- 2 理科授業づくりの手順
- 1 授業づくりの基本手順
- 2 教えたい知識と技能をはっきりさせる
- 3 単元の計画を立てる
- 4 教材を決める
- 5 1時間ごとの授業案を考える
- 3 子どもの熱中度はこれで決まる! 「優れた授業の3要素」
- 1 優れた理科授業の特長
- 4 理科学習の型を使いこなす
- 1 理科学習の型を使い分ける
- 2 理科学習の型を選ぶ
- 5 授業記録と授業反省を生かす
- 1 授業記録のとり方
- 2 授業反省の仕方
- U 授業技術を使いこなす
- 1 授業の導入に動機付けをする方法
- 1 導入のポイント
- 2 「素朴概念」からいうと「おかしい」と感じる現象を見せる
- 3 子どもの意見の食い違いを明らかにする
- 4 子どもの誤概念から疑問を生み出す
- 2 発問を工夫する
- 1 発問はなぜ必要なのか
- 2 発問の良し悪しは子どもが教えてくれる
- 3 知的な発問の共通点
- 4 直接的に尋ねる場合の「理科発問の型」を知る
- 3 板書の仕方
- 1 教師の板書で心がけていること
- 2 板書したほうがよい情報
- 3 4月初期の板書
- 4 子どもに黒板を開放することもある
- 4 実験ノートの書かせ方
- 1 実験ノートの基本型
- 2 最初に実験ノートを書かせる際の指導
- 5 観察ノートの書かせ方
- 1 観察スケッチを何に書かせるか
- 2 観察スケッチをどう書かせるか
- 3 ノートのフォーマットを指定する
- 4 スケッチの仕方を教える
- 5 気付いたことの見つけ方を教える
- 6 ちょっとの工夫で授業が盛り上がる
- 1 繰り返し演示する
- 2 ジャンボ実験装置
- 3 少し変化させて繰り返し実験する
- 4 大げさに提示する
- 5 最後に難問を
- 6 一人一実験を意識する
- 7 特別支援教育に対応しているかどうかのチェックリスト
- 1 特別支援教育を視野に入れた授業のチェックリスト
- 2 教えてから考えさせているか
- 3 一目でわかる工夫がなされているか
- 4 頑張ったことをすぐにほめているか
- 5 1時間の授業で,教えたい内容を一つに絞っているか
- 6 実験や観察の目的をはっきりと示しているか
- 8 モデルを示す際のポイント
- 1 モデル実験をほんのちょっとこだわってみよう
- 2 見えない現象を見えるようにしてやる
- 9 実物を用意してたっぷりと触れさせよう
- 1 たっぷりとした体験を保障しよう
- 2 「大地のつくり」における実践
- 3 おもしろ実験でたっぷりと体験を
- V 「今までにない」理科授業のつくり方
- 1 「新しい理科授業」づくりの原則
- 1 新しい理科授業をつくるうえでの3原則
- 2 あっと驚くネタを用意する
- 3 思考場面を用意せよ
- 2 ネタをどこからとってきてどのように使ったらよいか
- 1 「ネタが勝手に集まるシステム」とは
- 2 授業化を決めてから行うネタ集め
- 3 ネタの使い方とは
- 4 微生物の底知れぬ力を授業する
- 3 授業づくりの手順
- 1 授業づくりの大きな流れ
- 2 資料探し
- 3 資料を読む
- 4 「子どもに教えたい内容」を列挙していく
- 5 1時間の授業の組み立てを考える
- 6 発問・指示・説明をノートにメモしていく
- 7 映像資料や実験を探す
- 4 エピソードを語る理科授業 「生物多様性」
- 1 「生物多様性」を授業する
- 2 6年生における実際の授業
- W 「子どもの学力を伸ばす」授業をつくる
- 1 書く活動を重視する
- 1 どのような「書く活動」を重視するか
- 2 考えを書かせる習慣から始める
- 3 「解釈して書く活動」の設定
- 4 「熟考・評価して書く活動」の設定
- 5 論述ができるために
- 2 言語力を鍛えるノート指導
- 〜「教師の発問・指示」と「表現の型」により思考を促し,考えを言語化させる〜
- 1 言語力が身についた子ども
- 2 どんな指導が言語力を伸ばすか
- 3 子どもの発想が豊かになる板書の工夫例
- 1 授業に子どもの発想を取り入れる
- 2 気付いたことを書かせる
- 3 実験方法を書かせる
- 4 討論の前に考えを絵で書かせる
- 5 実験後の結論を書かせる
- 4 自由試行の導入と年間計画づくり
- 1 自由試行に力点をおいた年間計画
- 2 実験方法が限定されているが,たくさんの物が用意できる自由試行
- 3 物が少なくても,多様な実験方法を試すことができる自由試行
- 4 自由試行で子どもが熱中する理科授業を
- 5 理科における「子どもを伸ばす教師の姿勢」とは何か
- 1 教え子の理系教師像
- 2 教え子の作文とアンケート結果を解釈する
- 6 発言の取り上げ方
- 1 導入段階での疑問の取り上げ方
- 2 課題設定のための仮説の取り上げ方
- 3 討論における発言の取り上げ方
- 4 発言の取り上げ方のタブー
- 7 わかったつもりを防ぐ技術
- 1 「本当の意味でわかる」ために必要な活動とは
- 2 実践事例 5年「振り子の運動」の授業より
- 8 知識・技能の活用力を伸ばす
- 1 活用力を伸ばすには
- X ライブでわかる授業実践モデル
- 1 子どもの思考に沿った学習展開をとる「振り子」の授業
- 1 授業のポイント
- 2 第1時「振り子を使っていろいろと試してみる」
- 3 第2時「気付いたことや疑問を発表させる」
- 4 第3時「子どもの疑問を解決するT」
- 5 第4時「子どもの疑問を解決するU」
- 6 第5時「子どもの疑問を解決するV」
- 7 第6時「さらなる仮説をつくる」
- 8 第7時以降「子どもの仮説を検証する」
- Y 若手教師の悩みに答える
- 1 実験の準備が大変なんです
- 1 「実験の準備が大変なんです」
- 2 「実験の片付けをきちんとしないのです」
- 2 実験中遊んでしまうんです
- 1 即効性のある解決法は「実験のシステム」を変えること
- 2 遊ぶ子がいなくなるための「授業の演出」
- 3 教材はどんなものを採用すればよいのかわからないのです
- 1 教材選択の基本的な方法
- 2 自分で教材を用意する場合
- 4 子どもが間違ったことを発表したときはどうすればよい?
- 5 学級通信に授業の様子をどう書くか
- 1 保護者に喜ばれ実践に役立つよう記録する
- あとがき
まえがき
若手からだけではなく,ベテラン教師からも,理科の授業について質問を受ける。
「実験の準備が大変です。前日,夜遅くまで残って準備をしています」
「実験中,遊ぶ子がいて困ります。何かいい方法はないでしょうか」
出てくる質問は,似ているものが多い。
ある年,教育委員会から理科の研究員として任命されたことがあった。県下の理科主任が一堂に会して,1年間にわたり,理科の授業づくりを研究するというものである。
この研究会の冒頭で,30分ほど,理科の授業づくりについて,情報交換をする機会があった。
ここでも,「理科の授業で困ったこと」が多く出された。
「植物が枯れてしまったので,教科書を読んで授業を終わった」
「実験道具が足りなくて,いつも四人以上の班での実験になります。そうなると遊ぶ子がいて困ってしまいます」
やはり,同じような「困ったこと」が出された。
若手からも,ベテランからも,理科主任からも,似たような「理科授業づくりに関する困ったこと」が出される。
これはいったい何を意味するのだろうか。
端的に結論を示せば,次のようになる。
理科の授業づくりの基本的なノウハウを教わらずに,現場に出ている。
現場に出てからは,授業について研究する機会は少ない。
教師は多忙を極めている。日々の雑務に振り回されて,教材研究の余裕などないという人が圧倒的多数を占めている。
さらに,現場に出てからは,授業について教わる機会も少ないときている。
理科の研修に参加するのは,理科主任だけという学校が圧倒的多数である。
では,教師は,理科の授業づくりのノウハウを,いったい,どこで学ぶべきだったのか。
当然ながら,教師を養成する機関である「大学」でこそ,理科の授業づくりの方法を学ぶべきだったのだ。
ところが,大学では理論は学べても,実際に授業をどうするのかまでは学べない。教育実習で数度の研究授業をするだけで終わりである。そして,授業づくりを教える役割は,附属小教師に一任されているというのが現状だ。
たった数度の研究授業で,授業づくりの方法が学べるだろうか。
理科の教育は危機に瀕している。
経験10年未満の小学校担任の8割以上が,「理科の指導法についての知識・技能」について「低い」または「やや低い」と感じていることが明らかとなった。(平成20年度小学校理科教育実態調査)。
教員養成機関で「授業づくり」を学べないのであれば,どうすればよいのか。
現場に出てから,自分で学ぶしか道はない。
本書は,理科の授業づくりを実際にどうすればよいのかを示したものである。現場は理論を求めてはいない。具体的な方法こそ求めている。
読者諸兄の理科授業づくりの一助となれば,幸甚である。
2011年5月 /大前 暁政
著者は,惜しむこと無く,理科授業のすべてを教えてくれています。
年間計画から,具体的な発問の仕方,ちょっとした工夫など,本当に理論から実際の例まで,
実に詳しいです。
理科の授業はこんなに奥が深かったのかと,自分の無知を痛感しました。
理科の授業の型を著者は6つあげていました。
著者は単元によってこの6つのどの型を使うか決めるとありました。
私はこのいくつの型を使っているかと考えたとき,3つか,いや2つくらいしか意識していない・・・。
これ一つをとってみても,知っているかどうかで,授業がまったく変わっていくと思いました。
こんな具体的なノウハウをもっと早くから教えてもらいたかったです。
教育実習のとき,指導教官から教科書として与えられたらうれしいと思います。