著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
楽しい理科授業の実現に必要な“三つの要素”
岡山市立城東台小学校大前 暁政
2011/6/13 掲載
 今回は大前暁政先生に、新刊『スペシャリスト直伝!理科授業成功の極意』について伺いました。

大前 暁政おおまえ あきまさ

昭和52年生まれ。現在、岡山市立城東台小学校教諭。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞。著書に、『なぜクラスじゅうが理科に夢中なのか 全部見せます小5理科授業』(教育出版)、『必ず成功する!授業づくりスタートダッシュ』(学陽書房)、『NHKおじゃる丸 クイズでおじゃる 目指せ小学校クイズ王』(執筆協力、NHK出版)などがある。

―今回の書籍はプロと呼ばれる先生から極意を伝授する「スペシャリスト直伝!」シリーズの理科編ということで、理科の授業づくりの基礎基本から、板書や発問、ノートづくり、「すぐに使える授業スキル」まで、幅広くご紹介いただいています。 先生は本書の中で、子どもが熱中する「優れた授業の三要素」をあげられていますが、この点について、教えて下さい。

 優れた授業の三要素とは、@ネタ、A授業の組み立て、B授業技術の三つを指します。すばらしい授業とは、「@ネタがよく」、「A授業の展開がよく」、「B授業の進行も優れて」います。
 @のネタでいえば、理科では「物」が必要です。できるだけ実物に触れさせながら、学習を進めていきます。
 このとき、少しでもおもしろそうなネタを用意するのです。モンシロチョウの観察なら、モンシロチョウだけでなく、アゲハチョウや、カイコの幼虫も用意します。これだけで、ずいぶんと子どもの熱中度は違ってきます。

―平成20年度の小学校理科の実態調査で、経験10年未満の小学校担任の8割以上が「理科の指導法についての知識・技能」について、「低い」「やや低い」と感じていることが明らかになりました。この原因と、ではそこから力をつけていくにはどうすればよいでしょうか。

 原因を端的に言えば、「教員養成課程において、授業づくりの方法と、授業技術を習得できていないこと」です。
 「授業づくりの方法」と、「授業技術」の習得は、「研究授業」をすることで磨かれていきます。
 ところが、大学では「研究授業」をしません。私は理科教員養成課程出身ですが、理科の研究授業をしたのは、大学6年間でほんの数回というところです。それも全て附属小で教えていただいたものです。
 ネタについては、大学で学べます。楽しい理科の授業をしていくには、ネタだけでなく、「授業づくりの方法」と「授業技術」の習得も必要なのです。

―先生は本書の中で、学力を伸ばす授業づくりのポイントとして、「書く活動の重視」をあげられています。授業への取り入れ方と、その展開の方法について教えて下さい。

 書くことは考えることです。書く場面をたくさん確保することで、子どもたちの考える力も、書く力も伸びていきます。そのために、例えば、「教師の発問の後に書く時間をとる」、「実験と観察の後に、気付いたことや疑問を書く時間をとる」などの活動を授業の中で入れていくようにしています。書く時間を最低でも五分は確保することが必要です。

―先生は本書の中で、「特別支援教育に対応しているか」についてもチェックリストをそえてあげられています。本書で詳しく触れられていますが、そのポイントについて教えて下さい。

 特別支援を必要とする子に、「自由に実験しなさい」と指示すると、「わからない!」とか、「何でもいいなら遊んでしまおう」などとなってしまいます。これは、発達障がいの特性に合っていない授業の進め方を、教師が選択しているからです。どの子も楽しく感じる授業をしていくには、発達障がいの種類と特性を知り、「発達障がいをもつ子に合った授業の進め方」をしていく必要があります。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 楽しい理科授業をしていくために、理科が専門である必要はありません。理科が苦手な人にも、楽しい理科の授業をすることは可能です。それは、「絵を描くのは苦手だが、絵画指導は上手」という教師がいるのと同じことです。
 大切なのは、「授業づくりの方法」と「授業技術」を知ることです。知った上で、それを使ってみることで、「授業づくりの方法」と「授業技術」が習得されていきます。まず知ることが、出発点となるのです。

(構成:及川)
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