- まえがき
- 第一章 子どもの姿から学んだ極意
- 極意その1 いつでも変わらぬ姿を貫く
- エピソード1 宇宙人のような一年生と
- エピソード2 先生がちがうんだよ
- エピソード3 もし、今日が参観日だったら
- エピソード4 誰が見ていても、誰も見ていなくても
- 極意その2 子どもとの距離感を支配する
- エピソード5 私も、そう呼ばれたかったよ
- エピソード6 木を見て森を見ず
- エピソード7 敢えて呼び捨て、距離を詰める
- エピソード8 子どもの前を歩くだけでは見えないものがある
- 極意その3 現場の常識を疑ってみる
- エピソード9 それくらいの数はできないもの
- エピソード10 えっ、こんなに簡単にできるのか
- エピソード11 それは本当なのかと疑ってみる
- エピソード12 自信を持つことで、子どもは変わる
- 極意その4 突き放すのではなく、看る
- エピソード13 光の入らない部屋
- エピソード14 怖いんじゃなくて厳しいんだよ
- エピソード15 フォローの大切さ
- エピソード16 突き放すのでなく寄り添う
- 第二章 研修から学んだ極意
- 極意その5 書くことが学びのサイクルをつくる
- エピソード17 一歩を踏み出す
- エピソード18 書くために、授業をつくる
- エピソード19 書くことで、言葉を意識する
- エピソード20 書くために、読む!
- 極意その6 異質なものから学ぶ
- エピソード21 受け入れられることが意欲を促す
- エピソード22 学校にプロデューサーを
- エピソード23 一歩踏み出す勇気を持つ
- エピソード24 1+1は、時として3にも4にもなる
- 極意その7 明日の教室と向き合う〜研究会「明日の教室」〜
- エピソード25 真剣に学ぼうとする学生達との出会い
- エピソード26 若者と向き合わねばならない
- エピソード27 「明日の教室」誕生
- エピソード28 つながりが更なるつながりを生み出す
- 第三章 アーティストの言葉から学んだ極意
- 極意その8 今の自分に満足せず、更なる向上を目指す〜穐吉敏子さん〜
- エピソード29 夢のような出会い
- エピソード30 なぜ、迷う必要があるのか
- エピソード31 あなたの教育は間違っていない
- エピソード32 私はもっと上手くなれると思う
- 極意その9 教えるのではなく、引き出す〜砂連尾理さん〜
- エピソード33 小学校最大のステージ!
- エピソード34 戦友。戦っていたのは?
- エピソード35 教えるのではなく、引き出す
- エピソード36 沸き上がるアンコールの声に包まれながら
- 極意その10 子どもの目線で考える〜野村誠さん〜
- エピソード37 度肝を抜かれた、その音楽
- エピソード38 共感する力が子どもの心を捉える
- エピソード39 師弟ではなく、仲間の関係を
- エピソード40 『僕は音楽に人生を捧げている』
- あとがき
まえがき
教師になって三十年。
人並みに楽しいこともあれば、苦しいこともありました。
そんな教師人生の中で、唯一誇れることがあるとするなら、「教師を辞めたいと思ったことは一度もなかった」ということです。
今、教師という仕事は、日々多忙を極めています。
「いじめ問題」「学力問題」に代表されるように、学校現場、教師に対する手厳しい批判、非難も続いています。そのような状況ですから、教師志望の学生などと話していると、
「こんな自分で教師をやっていけるだろうか。」
「子ども達とうまく関係を築いていけるだろうか。」
といった悩みを抱えている学生の多いことに気づかされます。
現に、子ども達とうまく関係を築けずに学級がうまくいかなくなる教師、うまく授業がいかずに四苦八苦している教師が多くいるのも事実なのです。
また、その多忙さから、「辞めたい」を繰り返している教師も、どの学校にもいるほどです。
では、そんな中で、私はなぜ、辞めたいと思うことなく三十年続けてくることができたのでしょう。整理してみると、大きく三種類の出会い、そして学びがありました。
一つ目は、「私が出会った子ども達」です。
子ども達の言葉、サインから、私は教師としてどのように立ち振る舞うべきなのかということを突き付けられたように思います。
二つ目は、「研究会で出会った仲間」です。困った時、行き詰った時、学校の先輩だけでなく、学外の多くの仲間からアドバイスをもらいました。同じ志を持つ仲間を持つことは、成長することには欠かせないことだと思います。
そして、三つ目は、「アーティストとの出会い」です。この出会いが、もう一度自分自身の実践を見直すことになったり、どう生きるべきかということについても考え直させてくれたのです。
いろんな出会いが、私の教師人生を豊かなものにしてくれたのだと思います。
私は、今、学生達に教師という仕事の魅力を語る時、こんな話をすることにしています。
「どんな仕事でも入ってしまい、そこで一生懸命に働けば、やりがいだとか、楽しさを感じることはできると思う。実際、自分もアルバイトという形ではあったけれど、いくつかの職場で働いてみた時、どの仕事も楽しかったよ。けれど、教師という仕事は、楽しいだけでなく感動することができるんだ。必死になって頑張る子ども達の姿、友達を思いやる優しい姿。そして、巣立っていく子ども達の姿に感動し、涙する瞬間がたくさんあるんだ。そんな素晴らしい仕事に携われることを本当に幸せだと思っているよ。だから、恐れずに教師をめざしてほしい。」
多くの教師志望の学生が、楽しく実りある教師人生を過ごしてほしいと思います。
そして、この本がそのために少しでも役に立ってくれることを願っています。
二〇一二年10月 /糸井 登
-
- 明治図書