- はじめに
- 序章 フレームリーディングってなあに?
- 1 これからの読むことの学びとフレームリーディング
- 1 フレームリーディングは読むことの学習過程そのものである
- 2 読むことの学習過程とフレームリーディング
- 2 主体的・対話的で深い学びとフレームリーディング
- 1 フレームリーディングは主体的・対話的な学びを成立させる
- 2 深い学びにつながるフレームリーディング
- 3 活用できる力としてのフレームリーディング
- 1 フレームは表現に活かしてこそ価値がある
- 2 文学的文章のフレームを活かして物語を書く
- 3 説明的文章のフレームを活かして説明文を書く
- 4 フレームリーディングとつけたい力
- 1 問題解決のための思考力を育てる
- 2 多面的・多角的にとらえて構造化する力を育む
- 第1章 フレームリーディングのステップ1
- ―文章全体を丸ごと読み、フレームをとらえる
- 1 フレームリーディングの切り口で授業が変わる
- 1 基本構造と読み取るべきことがら
- (1)物語の基本構造
- (2)物語では何が読み取れればいいのか
- (3)説明文の基本構造
- (4)説明文では何が読み取れればいいのか
- 2 物語には三つの構造がある
- (1)くり返し型の物語
- (2)事件型の物語
- (3)ダブル型の物語
- 3 物語には三つの種類がある
- (1)生活童話
- (2)メルヘン
- (3)ファンタジー
- 4 説明文には四つの構造がある
- (1)説明文は四つのフレームに分類できる
- (2)四つのフレームの構造図
- 5 説明文には四つの種類がある
- (1)れっしゃ型のフレームで書かれる説明文
- (2)あたま型のフレームで書かれる説明文
- (3)おしり型のフレームで書かれる説明文
- (4)サンドイッチ型のフレームで書かれる説明文
- COLUMN フレームリーディングを支える理論と実践
- 2 ステップ1ですべきことは、「数える」こと
- 1 「数える」ことで物語の授業をつくる
- (1)登場人物を数えて物語の基本構造を読む
- (2)登場人物を数えて作品のしかけを見つける
- (3)登場人物を数えて主題に迫る
- (4)出来事を数えて作品の流れをとらえる
- (5)会話を数えて展開を俯瞰する
- (6)数えることで学べる学習用語
- 2 「数える」ことで説明文の授業をつくる
- (1)事例を数えて内容をつかむ
- (2)形式段落を数えて意味段落をつかむ
- (3)形式段落を数えて構造をつかむ
- (4)意味段落を数えて段落の役割をとらえる
- (5)事例を数えて段落の中心文をとらえる
- (6)事例を数えてつなぎの段落をとらえる
- (7)「数える」を使い分けて構造や内容をとらえる
- (8)キーワードを数えて要旨をとらえる
- (9)主語を数えて要旨をとらえる
- 第2章 フレームリーディングのステップ2
- ―必要に応じて詳細に読む
- 1 ステップ2ですべきことは、「選ぶ」こと
- 1 「選ぶ」ことで物語の授業をつくる
- (1)中心人物を選ぶ
- (2)クライマックスを選ぶ
- 2 「選ぶ」ことで説明文の授業をつくる
- (1)「選ぶ」ことで内容を詳しくとらえる
- (2)「選ぶ」ことで段落の役割をとらえる
- (3)「選ぶ」ことで具体と抽象をとらえる
- (4)「選ぶ」ことで筆者の主張をとらえる
- 3 フレームリーディングのステップ1とステップ2のまとめ
- (1)ステップ1では「数える」ことで大まかなフレームをつかむ
- (2)ステップ2では「選ぶ」ことで詳細に読む
- (3)物語で数えるもの
- (4)物語で選ぶもの
- (5)説明文で数えるもの
- (6)説明文で選ぶもの
- 第3章 フレームリーディングのステップ3
- ―詳細な読みを基に、再び全体を見直して読む
- 1 フレームをとらえ直すステップ3の読み
- 1 リフレーミングでとらえる
- 2 リフレーミングのための切り口
- (1)物語のリフレーミング─場面、文、人物の意味をとらえ直す
- (2)物語のリフレーミング─題名をとらえ直す
- (3)説明文のリフレーミング─題名をとらえ直す
- 3 自分の考えをつくり、表現する
- (1)物語─作品から受け止めたことを表現する
- (2)物語─題名と関連させて表現する
- (3)説明文─一番の○○を表現する
- (4)説明文─筆者の考えに賛成か反対かを表現する
- (5)説明文─自分の「納得度」を表現する
- 2 物語のフレームリーディングのまとめ
- 1 「俯瞰」→「焦点化」から、どのように考えを「統合」させるか
- 3 説明文のフレームリーディングのまとめ
- 1 文章をどのように「俯瞰」するか
- 2 「俯瞰」から「焦点化」へ読みを進める
- 3 読みを「統合」させて自分の考えをもつ
- 第4章 フレームリーディングからフレームライティング・フレームシンキングへ
- 1 物語のフレームを活かして物語を書く
- 1 物語の基本のフレームを活かす
- 2 「くり返し」のフレームを活かす
- 3 「起承転結」のフレームを活かす
- 4 ファンタジーのフレームを活かす
- 2 説明文のフレームを活かして説明文を書く
- 1 四つの「型」を活かす
- 2 「問い」と「答え」のフレームを活かす
- 3 「ナンバリング」や「つなぎ言葉」でフレームをつくる
- 3 フレームを活かして思考する─フレームシンキング
- 1 フレームをもつということ
- 2 多様な思考のフレームをもつ
- おわりに
はじめに
フレームリーディングは、文章を丸ごと読む読みの手法です。読みの過程は三つのステップに分かれていて、そのステップを通して深い学びの実現を目指しています。
フレームリーディングを考えたきっかけは、文章を細かく丁寧に読解することの大切さは認めつつ、それだけでは身につけることのできない読みの力があることを実感したからです。それは、物語では、伏線をつなぎ合わせることのできる力であり、説明文では、事例とまとめをつなぎ合わせる力です。どちらも、「つながりを見いだす力」として共通しています。つながりが見えると、読み手は「分かった」と感じます。文章を場面ごと、段落ごとに分けて、どんなに詳しく言葉をとらえても、全体のつながりが見えなければ、本当に分かったことにならないのではないか、そしてその力は、文章を丸ごと読むことで身につけることができるのではないかと考えたのです。
フレームリーディングを実践して、気づいたことが三つあります。
一つ目は、フレームリーディングの読みのプロセスは、学習指導要領の読みの過程と同じであるということです。文部科学省の教育課程部会国語ワーキンググループで話し合われていた読みの過程は、次のようになっています。
構造と内容の把握――精査・解釈――考えの形成
この三つの流れが行きつ戻りつしながら、読みがつくられることが示されました。そして、フレームリーディングの三つのステップは、次の通りです。
俯 瞰(全体を見渡して大まかなフレームをつくる)
│
焦点化(必要に応じて詳しく読む)
│
統 合(あらためてフレームを見直し、考えを表現する)
言葉こそ違いますが、思考の流れは同じなのです。
二つ目は、フレームリーディングは、実はとてもシンプルな切り口によって実践できるということです。物語を読むときも、説明文を読むときも、同じ切り口が使えることも分かってきました。
文章全体を俯瞰するときには、「数える」という切り口が有効です。何かを数えることで、文章の内容や構成の全体像が見えてきて、読み手にその文章のフレームがつくられます。このフレームは大まかなものですが、フレームができることで、疑問が生じたり、今までに自分がもっていたフレームとズレを感じたりします。それが、読みの課題となり、詳しく読んでいこうというエネルギーになります。
その後、読み手が抱いた疑問やズレを解決するために、焦点化して詳しく読むステップに移ります。このときに有効な切り口は「選ぶ」ことです。この切り口によって、内容をより詳しくとらえることができます。
物語も説明文も、「数える」「選ぶ」という、シンプルで、しかもクラスの全員が参加できる切り口で深い学びが実現すると考えています。読むことにおける深い学びは、読み手が問題意識や課題意識をもち、その解決のために本気になって文章を読もうとする姿によって誘われるのです。
三つ目は、フレームリーディングは単なる読みの手法に止まらないということです。このフレームを使うと、文章を書くことができます。読むことと書くことは、表裏一体です。そこにフレームが活かされるのです。さらに、そこでかたちづくられたフレームは、実は思考のフレームでもあるということです。俯瞰─焦点化─統合、あるいは仮説─検証─再構築という思考の流れは、読むことに止まらず、考えることそのものであるといえます。だから、国語科以外の教科でも当然使えます。
このことを考えると、フレームリーディングは、フレームライティングとセットであり、それを包むのはフレームシンキングだといえるでしょう。
本書は、物語(文学)と説明文のフレームリーディングを理論編として整理したものです。本書の考え方が、書くこと、そして考えることへと広がっていくことに期待します。フレームリーディングは、思考力・判断力を育むための大きな可能性を秘めています。
平成二十九年六月 筑波大学附属小学校 /青木 伸生
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