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新学習指導要領の「読むこと」は、次のプロセスになっています。
「内容と構造の把握」―「精査・解釈」―「考えの形成」
そして、フレームリーディングは、次の3つのステップで読んでいきます。
「文章の俯瞰」―「必要に応じて焦点化」―「リフレーミング(統合)」
このように、フレームリーディングの3つのステップは、新学習指導要領に示された読むことのプロセスとほぼ同じになっていると考えています。
まずは文章の全体像をつかみ、問題や課題が見えてきたらその解決のために詳しく読み、最後はもう一度全体をとらえ直すというステップです。「全体」―「部分」―「全体」という流れで読むことが大切であると考えています。
※“フレームリーディングってなに?”という先生は、こちらのインタビューをぜひご覧ください。
本書では、前著の文学/説明文の具体的実践を、理論的に整理しました。読むことで身につけた「フレーム」は、書くことにも活かすことができます。これを「フレームライティング」と名付け、読み書き関連の重要性と、フレームを活かすことのよさを述べています。さらに、フレームリーディングの手法で培った考え方のフレームは、他の教科・領域を学ぶ上でも有効に使えるものだと考えて、「フレームシンキング」として汎用的な力の育成を提案しています。
実は、人は日常の生活の中で様々なフレームをもって生活しているのです。例えば、料理に関するフレームです。それまでの様々な経験から、私たちは効率よく、しかもおいしくて栄養バランスのよい食事を調理して食べています。いつ、どのようなタイミングで、何を調理すると手際よく作れるのかといった、その日の調理の全体像や、効率のよい手順のフレームをもっているからこそ、できるワザです。そのフレームが洗練されていればいるほど「料理の達人」になれるのでしょう。
このような考え方を、文章を読むことに応用(転用?)したのがフレームリーディングです。よい読み手ほど、多様で柔軟性のある、しかも効率のよい読みのフレームをもっていると想定できます。(コラムでは、「物語スキーマ」=物語を読むときの枠組みとして紹介しています。)
フレームリーディングは、読むことをシンプルにとらえようという発想から生まれています。フレームリーディングによって、「だれもが短時間で文章を丸ごと読める」ことを目指しています。でなければ、多様な子ども達のいる教室の授業では使えません。
文章を丸ごと読む切り口が、「数える」で、焦点化に向かう切り口が「選ぶ」なのです。「数える」→「選ぶ」。これがフレームリーディングの基本です。例えば「おおきなかぶ」に出てくる登場人物を数えて、出てきた順番に黒板に並べてみてください。それだけで、この物語のあらすじが見えてきますよ。
文章全体を俯瞰するための切り口である「数える」ことは、読む力の高い低いにかかわらず、全員参加できる活動です。まずは授業で「数える」活動をしてみてください。そこで、クラスの子ども達の答えが一つにならなかったらしめたものです。よい授業をつくり出す一つのヒントが、「ズレ」ることなのです。どうしてみんなの数が違うのか、確かめたくなるところから、次の授業へと進んでいきます。
先生がもっている答えを見つけるのではなく、先生と子ども達で一緒に解釈をつくっていくことのできる授業ができたら、こんなに素敵なことはありません。ぜひ、フレームリーディングを試してみてください。