名著復刻 作文で鍛える

名著復刻 作文で鍛える

作文力を高めれば、すべての言語能力が高められる

作文指導を充実すれば、語彙力、構成力、思考力、言語感覚などのすべての力が鍛えらます。本書では「質より量を」「長文より小品を」「添削はしなくてよい」といった作文指導の極意と実際の作文レッスンの方法を伝授。数多くの教室に作文好きを生んだ伝説の名著を復刻。


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ISBN:
978-4-18-138516-3
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 280頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年12月2日

目次

もくじの詳細表示

復刻版のまえがき
第一部 元気が出る作文指導実践法
T 発想を変える! 刺激的作文指導論
一 作文指導こそが重要なのに
作文指導の重要性―社会の要請、文部省の作文指導重視
二 作文指導はいつも不振だ―面倒だから振るわない―
三 作文は子どもに嫌われているが
四 こうすれば作文が好きになる―刺激的提言七か条―
小作に安んぜよ・作品主義から文章主義ヘ―娯楽として書け・認識主義から興味主義ヘ―精しく読むな・精読主義から粗読主義へ―評語を書くな・評語主義から評定主義ヘ―添削するな・添削主義からべたぼめ主義ヘ―やたら書かせよ・質第一主義から量第一主義へ―丁寧に書かせるな・書写主義から作文主義へ
U 作文力を伸ばす! これが極意だ
いつでも書かせる・多作化―どこでも書かせる・生活化―やたらほめまくる・暗示化―おもしろがらせる・血肉化―用紙を手元に置く・即決化―基礎を教える・堅実化
V 吹きとばせ! 作文コンプレックス
いくらでも書ける「取材」の指導―これならできる「構想」の指導―らくらく書ける「叙述」の指導―ほどほどでよい「推敲」の指導
第二部 元気が出る作文初級レッスン
T 手ほどきばっちり! 初級第一レッスン
先生、あのね―あれ、あれ、はてな―絵ばなし作文―「猫と庄造と二人のおんな」―お話作文
U 新ネタで勝負! 初級第ニレッスン
「なりきり作文」―返信「なりきり作文」―「再生作文」―「再話作文」
V 教師も学ぶ! 作文の見方、考え方
一 作文の見方
例文推挙の弁−例文「グライダー作り」―例文を読んで―作品評価についての私見
二 評語の書き方
評語とは何か―評語の書き方―本文の「内容」についての評語―本文の「形式」についての評語―題名についての評語の書き方
三 添削の仕方
添削とは何か―指導のための添削のあり方
第三部 元気が出る作文中級レッスン
T ぐんぐん書ける! 中級レッスン
一 喜んで書ける、手紙文
指導のポイント―指導のあらまし―文例とそのタイプ別指導法―参考範文例
二 省エネで大きな効果、日直作文
原稿用紙は黒板だい―日直作文の進め方―日直作文の文例
三 誰でも書ける、生活作文
指導の原則―指導の実際
四 いつでも書ける、アイデア作文いろいろ
諸届の実践―作品の解説―学級日誌や学級新聞―学級葉書の実践
第四部 元気が出る作文上級レッスン
T 思いを凝らせ! 上級第一レッスン
一 味わいを深める―「鑑賞文」の指導―
「青瓜」の鑑賞文−「豆の葉っぱ」など
二 明快に主張する―「意見文」の指導―
学習指導案―明快な「意見文」の書かせ方―「意見文」の実例
三 豊かな発想を耕す―「感想文」の指導―
個性を豊かにする感想文―感想文指導の目標―教材文の位置づけ―記述前の指導を重視する―自分の心の本音を書かせる―文例(一)―「欠けているものの発見」のねうち―文例(二)―「わたしを変えた話し合い」のねうち
U 自らを高めよ! 上級第ニレッスン
一 授業の実りを確かめる―「授業作文」の指導―
二 向上を自覚する―「読後作文」の指導―
それは、自己について語る作文である―読書感想文とは少し違う―三年生からできる―四つの指導ポイント―読後作文の事例五篇―読後作文の意義
第五部 元気が出る作文指導の基礎教養
T ことばに強くなれ!―作文における「言語事項」の指導―
一 表現指導における「言語事項」の指導とは
表現指導の中で言語事項を指導するのはむずかしい―表現領域では、言語事項の定着、応用を図るのがよい
二 表現指導における「言語事項」指導・その基本的留意点
言語による人格の形成をめざして指導する―作文力、表現力の向上をめざして指導する―既習言語事項の定着をめざして指導する
三 表現指導における「言語事項」指導・その具体的留意点
正しい言語感覚を育てる―辞書を活用する習慣をつける―生きた資料の集積を図る―推敲を過信してはいけない―「言語事項」にこだわらない―作文と「言語事項」の併合指導を進める
U 「伝え合う力」の鍛え方
一 本義、真義をとらえる
本質をとらえる大切さ―学習指導要領の『解説書』を買おう―「伝え合う力」の本質は何か
二 伝わる体験の厚みを
教師の「伝える力」が弱い―実感がなければ伝わらない―伝わる体験の厚みを持とう
三 「伝え合う力」を支えるもの
中学生の汲み取り当番―ある先生の教訓―人と心とことばの隙間―「伝え合う力」を支えるもの
四 短い文をつなぐ
伝え合いの前提ルール―学生の話し方の悪い傾向―わかりません、と言わせない
五 短く切る。短く言う。
この発言の意味は?―切らないからわからない―伝え合うには短く言うべし
六 非対面の伝え合い
折り鶴を添えて―直筆のことばを添えて―非対面の伝達の重み
七 論文作成のポイント
「論文」の本質を踏まえる―必要な「手続き」を踏む―チャンスを生かす積極性を―論文は「分身」、己の証―批判的精神を持つこと
八 紙の活字と画面の活字
「伝え合い」の難しさ―「教室ドットコム」への反響―紙活字に代わる画面活字
九 保護者との「伝え合い」
一般社会への教師の非協力―「伝えられること」には不慣れ―「伝え合う」ことの具現
一〇 道順の伝え方にも小さなコツ
よくない教え方―上手な教え方のポイント―上手な道の尋ね方
一一 電話による伝え合いのコツ
今、よろしいですか―少しお待ち下さい―相談ではなく連絡を
一二 非言語コミュニケーション
目は口ほどに物を言い―ことばにふさわしいしぐさ―言語人格の教育
復刻版のあとがき

復刻版のまえがき

 世界的に、しかも昔も今も「読み、書き、算盤」の三つが「基礎学力」の内容として共通理解されています。「読、書、算」とも、「3Rs」とも言われますが、中味は同じです。読めて、書けて、計算ができる、という三つが全ての学力の大本になることは、時空を超えた真理とも言えるでしょう。この三つの中の二つまでが「国語科」が担うものですから、国語学力が重視されるのもまた当然のことです。私は、その国語科教育の実践的研究を生涯の仕事としてきたことをとても幸せだと思い、また、誇りともしてきました。八十路を越えたというのに、今でもあちらこちらの学校や先生方との勉強会に仲間入りをし、実際に教室で授業をすることも年に一〇回は下りません。これもまた幸せであり、有難いことと心から感謝しています。

 さて、この本は『名著復刻 作文で鍛える』という書名です。先にも書いたように、私は今でも国語教育の現場に出向いて授業を見たり、私が授業をしたりしていますが、そのほとんどが「読むこと」の領域です。読解指導や鑑賞指導が大部分であって、作文を実践研究に取り上げている学校とは滅多に出合いません。この事実を見ただけでも「作文指導の不振」は相変わらずだなと思います。残念ですが、この現実は認めなくてはならないでしょう。

 そんな状況ですから、作文指導についての教育書もあまり広くは読まれません。つまり、あまり売れないのです。しかし、私が書いた作文の本はそのジンクスを破ってかなり広く読まれました。かなり売れたのです。この本の原著は『作文で鍛える』という書名で昭和六三年に新書判の上・下巻が同時に刊行されたものです。刊行四年内に六刷を重ねていますから、作文指導の本としては極めて異例の普及だったことが分かります。その後装いを改め増補改訂版として平成一七年に再刊され、これも好評のまま読み継がれてきましたが、この度、三度めの改装をし、『名著復刻』シリーズの一冊に加えて戴くことになりました。まことに有難く、嬉しく、光栄の至りに存じております。

 ざっと三十年余りも前に、それまでの私の教室で実践してきた作文指導のあれこれを整理し、体系づけたものですが、三十年余りの時を経てもなお十分に今の教室実践に役立つ授業論、指導法である、と編集部から認められて復刻の栄に浴することができました。

 本書の内容は、コンクールに入賞するような作文を生み出すものではありません。そういう特別の秀作を生むことは考えず、義務教育の間に「少なくともこのくらいのことは身につけておきたい」という「作文の基礎、基本」をどうしたら保障できるかを実践可能の中で述べたものです。「実践可能の中で」というのは、「超多忙の中でも」という意味です。私は新卒以来三八年間、小学校現場だけで過ごしてきました。ですから、現場の忙しさは十分に理解しているつもりです。その忙しさを抜きにして尤もらしい理屈を述べてもそれはまさに画餅に等しく現場の役には立ちません。私の著書は全て「実践を潜らせて理論を導く」という立場を貫いています。やったこと、できたことしか書いてありません。そのために、「こんなことを言っていいのか」「こんなことまで書いていいのか」と思われるようなこと等も書いています。

 私は、実践者であることに誇りを持っています。実践者だからできる。言える。言わねばならぬ。そういう私自身の「本音、実感、我がハート」に徹し、それを貫いてこれまで生きてきました。

 だから、と言って「その場限りの」「間に合わせやハウツー」に陥ることは、私の最も忌むところです。私は常に物事の「根本、本質、原点」を問うことを自らの戒めとしています。小手先の技術、ハウツー、思いつき、借り物は私の常に警戒するところです。時を経、空間を異にしても決して色褪せることのない本物の教え方、導き方、学び方を私は大切にしてきましたし、今もそのように努めています。

 このような生き方の中で生まれた私の著作が、三年程前から「名著復刻」のシリーズに加えられるようになりました。率直に言って光栄です。嬉しいです。最初はすでに故人となりましたが有田和正先生の本が二点、私の本が二点、計四点が刊行され、いずれも今の教室にも十分に生きる提言だということで好評を博し、版を重ねています。お陰様で、私が若い頃に書いた本の中から、「名著復刻」のシリーズに、これまでに六点が選定され、刊行されました。「根本、本質、原点」を問いつつ実践してきた私の考えが今も色褪せることなく役立てて戴けることが実証されたとも言えましょう。また、その内容が全て「本音、実感、我がハート」に忠実であり、虚飾やはったりや嘘がないと読者の方から評価されてきたのだとも思います。

 いささか、自分の思いを顕示しすぎたかもしれません。失礼がありましたら、どうぞお許しください。

 ところで、作文指導について三度目の登板となった本書は、なんと二八〇ページにもなりました。今の教育書のスタイルからは随分かけ離れた大冊です。軽い本ではありません。重く、とっつきにくい外観です。そういう本書を手にとってくださった先生は、もうそのことだけでも一級の先生です。私は、そういう一級の、情熱的な先生とばかり付き合って教師人生を楽しんできました。そして、今でも楽しんでいます。先生との新たな出合いに感謝致します。

 作文力は、国語学力の総決算だ、とずっと私は言い続けてきました。大学の卒業論文、修士論文、博士論文なども言うなれば全てが「作文力」です。作文でも、論文でも、その人の語彙力、取材力、構成力、判断力、思考力などなどの一切が反映され、評価されます。作文力を確かに身につけてやることは、その子の人生の充実に大きく貢献することを私は確信しています。

 先生の作文指導の充実に、小著がいささかなりとも役立つことができるならば、著者としてこれに過ぎる喜びはありません。どうぞ、良い教師人生をお築き下さい。


   /野口芳宏 合掌

著者紹介

野口 芳宏(のぐち よしひろ)著書を検索»

1958年千葉大学教育学部(国語科専攻)卒業,公立小教諭。

千葉県の小学校教諭,教頭,校長,北海道教育大学教授(国語教育),同大学,麗澤大学各講師,植草学園大学教授を歴任。

現在植草学園大学名誉教授,同フェロー。

〈所属学会等〉

日本教育技術学会(理事・名誉会長),日本言語技術教育学会(理事・副会長),日本教育再生機構(代表委員),(公財)モラロジー研究所(教育者講師),鍛える国語教室研究会,授業道場野口塾(各主宰)

〈専門分野〉

国語教育,道徳教育,家庭教育,幼児教育

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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