- はじめに
- 第1章 学びにくさのある子どもへの学習支援のポイント
- 01 気づこう,子どもの苦手さとその理由
- 02 苦手さのある子どもへの国語の学習支援のポイント
- 03 学びにくさのある子どもへの算数の学習支援のポイント
- 第2章 学びにくさのある子どもへの学習支援アイデア
- 学習の基礎
- 01 体幹調整で姿勢・書き・集中をよくするために つま先かかと歩き
- 02 体幹調整で姿勢・書き・集中をよくするために ケンケンパ・クモの巣くぐり
- 03 体幹調整で姿勢・書き・集中をよくするために ランダム読み・数字タッチ・目の体操
- 04 正しい書きを習得するために 正しい発音
- 05 聞こえ方を理解するために 聴覚認知レベルアップ作戦
- 06 話す難しさを和らげるために 話すことショートステップ
- 07 社会性の基本を身につけるために がまんもだいじ・おしずかに
- 08 指導の効果を上げるために 教室環境と時間設定の構造化
- 09 子どもに安心を与えるために 行動理解と適切な対応
- 10 子どもに安心を与えるために 学習ルールの指導
- 国語
- 11 書くことの弱さを改善するために 体性感覚を生かして,なぞり書き
- 12 ひらがな習得のために あいうえお表音読
- 13 ひらがな習得のために 読み練習のパワーポイント教材
- 14 特殊音節を習得させるために 特殊音節を感じる動作化・視覚化
- 15 のばす音の習得のために 常時掲示で常に意識!
- 16 ひらがなとカタカナを一緒に覚えるために めくるとひらがなが出てくるカタカナ表
- 17 ひらがなやカタカナを覚えるために ひらがな・カタカナ表を使って書く活動
- 18 漢字をパーツで覚えるために タングラムトレーニング
- 19 視覚認知の弱さを補うために 漢字のパーツ覚え
- 20 視覚認知の弱さを補うために 漢字の間違えやすいポイント覚え
- 21 書くことにストレスを感じやすい子どものために 反復練習しない覚え方
- 22 漢字テストに自信をつけるために バラバラヒントありテスト
- 23 知っている漢字,読める漢字を増やすために 漢字ランダム読み
- 24 知った熟語を書いて覚えるために ヒントあり/ヒントなし漢字書き取り練習
- 25 漢字を黙読で意味読みする子どものために 正しい読みとは何か?
- 26 ワーキングメモリの弱さを支えるために 漢字の少しずつ&繰り返し練習
- 27 流暢に読むために マルチメディアデイジー教科書の使用
- 28 流暢に読むために 鉛筆でなぞる,書き写す
- 29 流暢に読むために スリット利用や指押さえ支援
- 30 言葉の決まりを理解するために これあれそれゲーム
- 31 主語・修飾語・述語を理解するために 誰が何をどうしたゲーム
- 32 言葉の決まりを理解するために 助詞指導
- 33 音韻認識を育てるために 聞き取りトレーニング
- 34 語彙力を育てるために 言葉みつけ,言葉つなぎ,言葉のまとまり
- 35 語彙力を育てるために 名文の書き写し&暗唱
- 36 語彙力を育てるために 家族で会話・ニュースで会話
- 算数
- 37 数量感覚を育てるために おはじき・タイルトレーニング
- 38 数量感覚を育てるために 2とび,5とび,10とびで100まで数え
- 39 数量感覚を育てるために 位取りジャンプ
- 40 数量感覚を育てるために 九九ケンケン
- 41 数量感覚を育てるために 位取り表掲示
- 42 数量感覚を意識しながら計算手順を理解するために 数かぞえ
- 43 数の呼び方のいろいろを知るために 数カードゲーム
- 44 繰り上がり足し算,繰り下がり引き算の習得のために 10はいくつといくつ?
- 45 10はいくつといくつを感じ取るために 数を表す指サイン
- 46 速度の学習につなげるために アナログ時計
- 47 線を引くことの技術習得のために 1年生からの「ものさし」指導
- 48 計算速度を上げるために 思考を視覚化した矢印計算
- 49 ワーキングメモリの弱い子どものために 筆算でも矢印計算
- 50 九九習得のために ひらがな書き九九
- 51 九九習得のために かけ算の決まり
- 52 算数言葉の習得のために 意外と難しい算数言葉の音読
- 53 算数の論理思考を支援するために かけ算筆算☆あの手この手
- 54 算数の論理思考を支援するために わり算筆算☆あの手この手
- 55 算数の論理思考を支援するために 10倍,10分の1は位取り表でイメージ
- 56 算数の論理思考を支援するために 算数用語の掲示
- 57 算数の論理思考を支援するために 図形の面積,体積の求め方掲示
- 58 算数の論理思考を支援するために 分数の通分手順の掲示
- 59 算数の論理思考を支援するために 線分図,数直線の利用
- 60 算数の論理思考を支援するために 助詞の意識化
- 61 ワーキングメモリの弱さのために 掲示を手がかりにしたテスト支援
- 62 算数の理解を進めるために 学習の系統性への理解
- おわりに
はじめに
学校では,一人一人個性のある,また特性の違った子どもたちが過ごしています。最近は,新型コロナウイルス感染症の影響で,社会生活を制限されたり,マスク生活で十分に会話ができなかったりといった生活を越え,発達に影響があったとの研究が発表されました。さらに,全国的に通級指導教室が増える傾向にあるようです。初めて通級指導教室を担当される方も多いと耳にします。そのような状況の中で,指導する立場として,悩んだり迷ったりする場面が多くあるのではないでしょうか。
筆者は,若い先生方と会話していて,
「これでよかったのですね。安心しました」
「一人で考えていたら,悩むばかりで…お話をすることができてよかったです」
とお返事をいただくことがよくあります。今回,『学びにくさのある子★応援 学習支援 BOOK』を執筆させていただくことになり,先生方の悩みや不安に,少しでもお役に立てたらと考えています。
筆者は,現在,通級指導教室担当ですので,そこでの取り組みの紹介が中心となります。中には,通常の学級担任時,特別支援学級担任時に行っていた取り組みもあります。そのため,これらの取り組みは,通級指導教室ばかりでなく通常の学級や特別支援学級でも参考になる内容になります。
効果的な指導を行うためには,子どもを見取るためのアセスメントが欠かせません。さらに,必要に応じて寄り添ったり,支援したりするほか,子ども自身を成長させ,自立に導かなければならないのです。学習指導要領に照らし合わせながら,関わる子どもに何を身につけさせるのかを考え,教材準備をします。そして,常に評価を重ね,よりよい対応,よりよい指導を続けていくことになります。その対応,指導のアイデアを具体的にお示ししてまいります。
なお,子どもの見取りは幅広いです。筆者は,「まず身体から」の視点を大切にし,運動面の基の力,さらに認知機能(学習の基の力)や社会性の基の力についても,アセスメントし,実態把握をして指導をします。今回は,それらの土台の力の上にある,学習そのものへの支援について,をテーマとしています。指導には,アセスメントや,それに基づく実態把握,そして「基の力」の育成も欠かせないことをここで確認させていただいた上で,今回の学習支援のための指導のアイデアをお伝えしてまいります。
また,本書の執筆にあたって,弱みや苦手さという視点で書かせていただきました。子どもの強みを生かす指導は,とても大切です。一方で,弱みや苦手さを知って力をつけることは,その子どもの自尊感情を向上させ,将来の自立につなげるために大切な指導になります。今回,弱みや苦手さに視点を置いたのは,子どもの自立に向けて指導する一助となれば,との思いからです。どうぞご理解をよろしくお願いいたします。
上述しましたが,子どもたちは一人一人違います。できるだけたくさんの取り組みを紹介させていただきますので,参考にしていただき,さらに関わる子どもたちに合わせてアレンジし,ご活用ください。
本書が,先生方の参考となり,安心につながるものになれば幸いです。
著者 /井阪 幸恵
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- 明治図書