- はじめに
- 本書の構成と使い方
- Prologue ウェルビーイングな学校環境づくりを目指して
- 教師ゆえの思い込み対応の失敗談
- 多彩な子ども達との関わりからの学び
- 教師の洞察力が問われるとき
- Chapter1 ウェルビーイングなクラスをつくる5つのヒント
- 1 ウェルビーイングなクラスって,どんなクラス?
- 2 子どものサイン,気づいてる?
- 3 子どもをほめるとき,叱るとき,どうしてる?
- 4 子どもと本音トーク,出来てる?
- 5 アセスメントに基づいた子ども面接,ちゃんと出来てる?
- Chapter2 クラス集団対応の悩みを解決する5つのアプローチ
- 1 グループワークトレーニング
- 学級担任として何をすべきか分からない
- Case1 新学期,学級担任として何をしていいのか分からない
- Case2 新学期が始まり,クラスの子ども達が落ち着かない
- Case3 特定のグループの子以外と話そうとしない子がいる
- 2 ソーシャルスキルトレーニング
- 他者とのトラブルが絶えない
- Case1 他者をからかったりちょっかいを出す子がいる
- Case2 教師の話が聞けない子がいる
- Case3 言葉使いの悪い子が多い
- Case4 自分の意見をはっきり言うのが苦手な子がいる
- Case5 自分の主張ばかりする子がいる
- 3 ピア・サポート
- 子ども同士が仲良く出来ない
- Case1 子ども同士のコミュニケーションがぎこちない
- Case2 子ども同士のトラブルが解決しない
- Case3 クラスメイトになかなか手を貸そうとしない子がいる
- Case4 困ったときに声をかけられるのをひたすら待つ子がいる
- 4 コーチング
- 規律正しいクラスに出来ない
- Case1 意欲的なクラスにする方法が分からない
- Case2 クラスの問題解決力が低い
- Case3 将来の夢が持てず,クラスの中で浮いている子がいる
- 5 ナッジ
- クラスの環境が良くない・子どもの自発性が低い
- Case1 机の周りや床にゴミが落ちていても気づかない子が多い
- Case2 整理整頓が出来ない子が多い
- Case3 当番や掃除をさぼる子が多い
- Chapter3 個別対応のための4つのアプローチ
- 1 ブリーフセラピー
- 教師自身や子ども自身の悩みを解決出来ない
- Case1 不登校傾向にある子どもに関する悩み,課題をどのように把握し解決したらいいのか分からない
- Case2 不登校の子どもの保護者対応に苦手感がある
- Case3 過去の失敗ばかり引きずり,前に進めない子がいる
- 2 来談者中心療法
- 子ども対応や保護者対応が出来ない
- Case1 子どもの悩みをどのようにして聴いたらいいのか分からない
- Case2 子どもについて保護者から相談されたとき,うまく対応が出来ない
- Case3 自分がヤングケアラーだと気づいていない子どもへの対応が分からない
- 3 論理療法・認知行動療法
- 思い込みが強く問題行動が多くて困る
- Case1 勝手な思い込みをしてすぐに怒ったり落ち込んだりする子がいる
- Case2 平気でウソをつき反省してもすぐにまたウソをつく子がいる
- Case3 教師の勝手な思い込みで,後輩に指導しようとする先輩教師がいる
- 4 マインドフルネス・セルフコンパッション
- 迷惑をかけられている周りの子どもへの対応が分からない
- Case1 問題行動をする子どもがいるとき,その隣や周りの子どもの気持ちを楽にする方法が分からない
- Case2 困ったら固まってしまう子がいる
- Case3 リストカットなど,自傷行為をしてしまう子がいる
- 【付録】
- 1 教師自身の振り返りチェック項目
- 2 からだとこころのお天気チェックシート
- 3 子どもの交友関係チェックシート
- おわりに
- 参考文献
Preface
子ども達のために頑張っておられる先生方へ
先生方,本書を手に取っていただいてありがとうございます! 本書は,私の教師としての悩みながらの経験が,少しでも先生方のお役に立ち,それが子ども達のためになればと思い書き下ろしました。また教育心理の専門家である2人の先生方に理論からアプローチしてもらっておりますので,ある意味学級経営の専門書でもあります。
今の時代,もはや教師は,子どもに知識を教えるだけの存在ではありません。「主体的・対話的で深い学びの実現」や「子どものウェルビーイングを向上させる」責務があります。それは教師にとって,とても難しく,ややもすると,先走ったり決めつけになったりしてしまう傾向にあります。先生方は,日々,多様な子ども達との関わりの中で,悩みながら個別のノウハウを必要としています。しかし,それだけに終始してはいけないと思うのです。
悩むって悪いこと?
答えは「いいえ」です。「悩むこと」は必要なことで,決して悪いことではありません。「粘り強い姿勢」だと思います。なぜなら,自分自身が直面している問題から「逃げずに立ち向かっている」状態だからです。しかし,いかに立ち向かおうとしても,その方法が分からず,ただやみくもに煩悶しているだけでは,一向に解決には向かいません。そんなときこそ,本書が先生方の解決に向かうためのヒントになればと思います。
子ども達にとって学校って何?
つまるところ,学校って,子ども達にとって,楽しく居心地の良い場所であることが大切で,心身共に健康でいられる場所でなければならないと思います。そのために,私達教師は,出来る限りの環境づくりをする必要があると思います。WHOの憲章では「健康とは,完全な肉体的,精神的及び社会的福祉の状態であり,単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とされています。これは,私達が健康に対してイメージし易い「体と心」についてのみだけではなく,社会的側面においても良好な状態でないと健康とは呼べないという意味を含んでいるのです。先生方は,身体的にも問題がなく,精神的にも落ち着いており,職場での豊かな人間関係が築けているでしょうか。子ども達にも同じことがいえます。
目の前にいる子ども達は,「身体的健康」「精神的健康」そして「社会的健康」の調和がとれた状態で日々過ごせているでしょうか。特に学校は「社会的健康」に寄与する場所です。
最近,「不登校は問題行動ではない」として,不登校になったら別のところへ紹介する事例が多く見られます。しかし,私達は実際に子ども達自身の声を正確に聴けているでしょうか? 「学校に行きたくないから行かない」(積極的不登校)子どもはともかく,「学校に行きたいけど行けない」(消極的不登校)子どもには,最大限の手をさしのべなければならないと考えます。先日も熱心に子どもと手紙のやりとりをし,最初は教師から出すだけの手紙が,やがて子どもから「○×」の返信になり,そのうち文章になり「明日は,学校に行ける気がする」と返してくれたと喜んでいる先生を応援したところです。
本書が,すべての子ども達とその子ども達のために日々頑張っておられる先生の,ウェルビーイングを実現する一助となることを願っています。
2025年1月 /岡田 倫代
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- 明治図書
- 学級担任としての具体的なアプローチを学ぶことができました。2025/4/740代・小学校教員