音楽科教育はなぜ存在しなければならないのか
「良い音楽科教育」を構想するための目的論

音楽科教育はなぜ存在しなければならないのか「良い音楽科教育」を構想するための目的論

BEST300

様々な思想家の論から「良い音楽科教育」に迫る

義務教育の中でなぜ音楽を学ぶのか。教師自身が自分の言葉で「音楽科教育の存在意義」について論じることができなければならない。何を目標に音楽科教育をするのか。「良い音楽科教育」とは一体何か。音楽科教育の目的論について、真剣に議論した一冊。


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ISBN:
978-4-18-159226-4
ジャンル:
音楽
刊行:
対象:
小・中・高
仕様:
四六判 288頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年12月4日

CONTENTS

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まえがき
序論
「良い音楽科教育」とはなにか
音楽科教育における目標論、内容論、方法論
音楽科教育における「良さ」の判断─目的論の必要性
目的論的議論のための視点@ 音楽科教育に求められる公共性
目的論的議論のための視点A 音楽の特殊性に根ざした音楽科教育固有の価値
補助的視点@ 中心的な親学問の不在
補助的視点A 学習指導要領の創造的解釈
本書の構成
第一章 音楽への記述的接近
1 出来事としての音楽─C・ スモールの音楽観
音楽のモノとコト
音楽への参加可能性の拡張
2 徒弟制度としての音楽教育─D・J・エリオットの音楽教育論
エリオットの音楽観
ホリエモンと鮨職人養成─伝統的徒弟制度の諸相
音楽的技術の文脈依存性と認知的徒弟制度
3 音楽と「銀行型教育」─P・フレイレの教育哲学
「銀行型教育」とはなにか
師匠と弟子の非対称性
4 教育と保存の脱構築─R・E・アルサップのポスト構造主義的思想
作品保管庫としての音楽教育
音楽の非論理的性質と「作者の死」
徒弟制度の脱構築
5 美の恣意性─F・ソシュールの記号論
シニフィアンとシニフィエの恣意的なつながり
「良さや美しさ」は音響に内在しない
音楽科教育と記号論
6 音楽に対する記述的接近の公教育的限界
第二章 音楽への規範的接近
1 教科教育と学問領域の規範性─G・ビースタの測定主義批判
音楽科教育と親学問としての音楽
「存在─当為問題」と測定主義
説明責任(accountability)と応答責任(responsibility)
2 理念としてのサウンドスケープ─R・マリー・シェーファーの公共的教育観
音楽科教育における過去の目的論
シェーファーのサウンドスケープ構想
音楽教育としてのサウンドスケープ・デザイン
サウンド・エデュケーションの規範性
3 教育課程の根本原理─マンハッタンビル音楽カリキュラムプログラム
スプートニク・ショックにより生まれた即興演奏のカリキュラム
MMCPの音楽観─変化の動性
音楽における「慣例的概念」と「本来的概念」
音楽創作のオープネス─権威としての「作品」の解体
音楽科教育のコンプライアンス
4 音と音楽の違いを決める権利の所在
第三章 音楽科教育の目的論に関する試論
1 ここまでの総括
音楽への記述的接近とその限界
音楽への規範的接近とその展望
2 公教育の存在意義─苫野の教育論
苫野の〈自由〉論
〈自由〉及び〈自由の相互承認〉を実質化する音楽的〈教養=力能〉とはなにか
3 音楽科教育の目的論─音楽科教育はなぜ存在しなければならないのか
音楽科教育はなぜ存在しなければならないのか─試論
資本主義社会における他律的音楽観の内面化
音楽科的〈教養=力能〉としての非他律的態度
非他律的態度に基づく音楽科教育の目的論的検討
メタ音楽(Meta-Music)による〈自由〉及び〈自由の相互承認〉の実質化
第四章 メタ音楽(Meta-Music)としての集団即興演奏
1 サウンドペインティング研究で得られた知見
筆者と集団即興演奏との出会い
指揮付き集団即興演奏としてのサウンドペインティング
サウンドペインティング研究の概要─参与観察、半構造化グループインタビュー、SCAT
サウンドペインティングにおける三つの「難しさ」と「失敗不在の原則」
2 《GMIC》の発案と授業での実践可能性
音楽科の授業に最適化されたメタ音楽の条件とはなにか
《GMIC》の実践方法解説
集団即興演奏のローカリティ
3 Meta-Music as Bricolage
終章
「良い音楽科教育」とはなにか
あとがき

まえがき

 本書は、そのタイトルどおり「音楽科教育の存在意義」について論じようとするものである。想定される主たる読者層は現役の教師や教員養成課程の大学生、あるいは音楽教育学を専攻する大学院生たち、ということになるのだろう。一方、筆者としては、ロックバンドのファンやクラシック演奏家、あるいは学校の音楽の授業が嫌いだった音楽愛好家等、必ずしも教科教育に積極的関心の無い方々にも本書をおすすめしたい。なぜなら、「公教育というパラダイムから音楽の在り方を問う」という知的体験そのものが、音楽教育学者が独占するにはもったいないほどに興味深い創造的営為だからだ。本書が参照したスモール、エリオット、フレイレ、アルサップ、ソシュール、シェーファー、MMCP、苫野は、言うまでもなく教科教育に限定されない重要な思想を携えている。序論から順に通読することをおすすめするが、興味をもった思想家の節から読み始めるのもよいだろう。音楽という極めて不思議な現象の実態に迫るうえで、音楽科教育という視点は意外にも有益だ。本書を通じてそのことが読者に伝われば、音楽教育学者としてこれ以上嬉しいことはない。


  二〇二四年七月   /長谷川 諒

著者紹介

長谷川 諒(はせがわ りょう)著書を検索»

博士(教育学)、音楽教育学者。広島大学で博士号を取得後、神戸大学、関西大学、新見公立大学等複数の大学で非常勤講師として教員養成に携わりながら、研究会での講演や即興演奏ワークショップの講師として活動している。活動の概要は SNS や YouTube チャンネル「音楽教育学者の思考」で随時発信中。2021年度より日本音楽即興学会の理事長を務めている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 改めて音楽教育のあり方を考えるきっかけとなりました。現行の学習指導要領と照らし合わせながら、子どもたちと楽しい音楽の授業をつくっていきたいと思います。即興の音楽づくりの授業に挑戦してみたいと思います。
      2024/8/2550代 小学校管理職
    • 現場で語られがちな方法論ではなく、教科の目的をそもそもから考えるという本は著者としても非常に勇気がいることだと思うが、現場の子ども(特に学力が低い層)は英語も理科も「なんでやるの?」と呟いている。このような本が、明日使えるハウツー本よりもはるかに実用的だと感じる。
      2024/8/730代・小学校教員
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