- はじめに
- Chapter1 アクティブラーニングによる授業デザインと21世紀型教育
- 1 アクティブラーニングの意味
- 1 アクティブラーニングの解釈
- 2 21世紀型教育をめざそう
- 2 アクティブラーニングの前提
- 1 「知識基盤社会」の「知識」とは
- 2 内面が「アクティブ」であることの意味
- 3 「フリンジ」とアクティブラーニング
- 4 構成的アプローチについて
- Column おすすめの1冊
- Chapter2 能動的で自律的な学習者育成法
- 1 「能動的」学習者の育成法
- 1 活動と荀子
- Column 「学習指導における聴視覚的方法」を読む
- 2 活動とデューイ
- 2 「自律」的学習者育成法
- 1 「自分の学習を見つめる目」と「メタ認知」
- 2 自己調整学習
- Column 無限後退の脱出路
- 3 自尊感情を高める「ALふきだし法」
- Column ムズカシイってなに?
- Chapter3 「ALふきだし法」によるアクティブラーニングの授業デザイン
- 1 「ふきだし法」と「ALふきだし法」
- 1 アクティブ「ふきだしノート」デザイン
- 2 ポートフォリオとしてのアクティブ「ふきだしノート」
- 3 ユニバーサルデザインとしての「ふきだし法」
- 2 アクティブラーニングの授業デザイン
- 1 アクティブ「ふきだしノート」をつくる
- 2 アクティブ板書デザイン
- 3 アクティブ対話とその支援
- Chapter4 導入・展開・まとめの場面での「ALふきだし法」
- 1 導入場面の「ALふきだし法」
- 1 課題把握・「問いの発生」と「ふきだし法」
- 2 「めあて」をアクティブにする
- 2 展開・自力解決場面の「ALふきだし法」
- 1 書くことにこだわる
- 2 対話的実践でメタ認知形成にこだわる
- Column 発達の最近接領域とは
- 3 展開・集団解決場面の「ALふきだし法」
- 1 ディープアクティブラーニングをめざす
- 2 ピア・ラーニングのコツ
- 4 まとめと振り返り場面の「ALふきだし法」
- 1 学びの連続性
- 2 子どものメタ認知と教師のメタ認知の関係
- Column 子どもはいつも教師の想像を超える
- Chapter5 評価と「ALふきだし法」
- 1 真正の評価を求めて
- 1 アセスメントとエバリュエーション
- 2 アセスメントの重要性
- 3 授業総体のアセスメントとしてのALノート記述評価
- 4 評価活動の目的について
- 5 自己概念の再体制化
- 2 ポートフォリオアセスメント
- Column 子どもが「ALふきだし法」を評価するとき
- 付録 「ALふきだし法」Q&A
- 「ALふきだし法」がうまくいく最初のStep4
- 付録 自己意識化と認知の階層性の問題について
- 1 客体としての「ふきだし」
- 2 鏡像段階と自己意識の階層性について
- 3 自己意識の階層性と非措定的(非定立的)意識
- おわりに
- 引用及び参考文献
はじめに
「ふきだし法」と「ALふきだし法」はどう違うのでしょう。
子どもの「内面性」と「思考過程」に着目し,生かし,育てる指導法の本質は不変です。しかし,本書は「主体的・対話的で深い学び」を実現する方法として注目されているアクティブラーニングの観点から更にブラッシュアップを図り,再提案することにしました。
具体的な新たな提案は「めあてのアクティブ協約化」「アクティブ板書」「まとめと振り返りのアクティブ化」など,どこまでも子どもの内面性に一層こだわる指導法を追究しました。
従来の「ふきだし法」には,「めあて」に関する記述がありません。これには意味があって,筆者は授業の冒頭で「めあて」を子どもに示す指導法については実は懐疑的だったからです。
子どもに必要な道具を教師が先に渡して「ここを掘って埋まっているものを見つけなさい」とする授業ではなく,必要な道具も子どもに見つけさせ,みんなで一緒に土を掘りかえしていくと,きらっと光るものにたどり着き,歓喜に満ちた笑顔とともに掘り起こしていく授業。その子どもたちに対して「それが実は先生が探してほしかった宝物だよ」と告げるスタイルが,回り道でも価値のある学習だと思っていたからでした。
しかし,「ふきだし法」による実践研究を続ける中で,子どもたちの「スタートふきだし」の中に,キラキラ光る宝のカケラが存在することの意味を再認識し,そのことを教師と子どもが協約化する過程を大切にしつつ,一方で「問の発生」にこだわる活動のよさを更に推進するため,「アクティブめあて」を提案しようという考えに思い至りました。
それと,もう一つ悩んだことがあります。「ふきだし法」の「法」の字をなくそうかと考えたことです。「主体的自律協働学習」が要請する授業デザインは,言うまでもなく○○方式とか○○型とかそんな定型・ワンパターンの指導法ではありません。
「ふきだし法」を創案してからすでに四半世紀以上が経過しました。「ふきだし法」という懐かしい響きは,捨てがたいのですが,「法」というネーミングに,若い先生方はもしかしたらハウツー本やマニュアル本と理解してしまわないかという懸念が一方でありました。
「ふきだし法」を前著では,@ノート指導,A板書の仕方,B指導と評価の一体化,C教材分析,D学級経営法 の5つの観点からトータルに子どもを育てていく「指導システム」と説明しています。この根本は変わっておらず,「ALふきだし法」の定義として,新しくそのコンセプトを言い換えるのならば,「ふきだしというツールを活用したアクティブラーニングデザイン」ということになります。愛称として古典的な「法」を残していますが,その意味は,あくまでも子どもの内面に即応した自在な授業デザインなのです。
さて,ディープアクティブラーニングやいわゆる「主体的・対話的で深い学び」の具現化は,言葉ほど簡単なものではないと思っています。そのことの算数科での実現には,これまでの数学教育学や教育方法学,認知心理学や,教育工学といったありとあらゆる学問の知見,叡智が総合的に動員,融合され始めてその端緒が見えてくるような深遠な教育の悲願であります。
表面のみを滑ることなく,子どもの思考の本質を見つめる哲学が必要であるとも思い,少々脱線は覚悟で,様々な観点からのアプローチを試みました。そのため,やや理屈っぽくなったり,試行が飛躍的であったり,難解な部分も残してしまった反省もあります。どうか読者の皆さんは,そのあたりをご賢察によって補っていただきながらも,この新しい「ふきだし法」の真髄にふれていただき,それぞれの更なる工夫の中で,独自の「ALふきだし法実践」を展開していただければこれにまさる喜びはありません。
2017年3月 著者 /亀岡 正睦
これまでの著作と併せて読むことで理解が深まった。
今後の実践にぜひ生かしたい。