- はじめに
- 第一章 いじめ指導の心得―徹底して被害生徒を守る
- 「いじめ」という言葉にとらわれない
- 職員の複数指導体制の構築が第一歩である
- いじめ指導は、一度きりの指導で終わらない現実を知る
- @なぜ、いじめ指導は難しいのか
- A被害生徒を守る
- いじめられている生徒を徹底して守る気概をもつ
- いじめは犯罪行為という認識をもつ
- 警察連携をためらわない
- @なぜ、警察連携が難しいのか
- A警察連携の必要性
- B集団心理について
- 第二章 いじめの予防―生徒と教師集団を育てる方法
- 正義の通る生徒集団をつくる
- @中間的集団を大切にする
- A落ち着いた、揺らがない学校をつくるための考え方
- 「中間的集団」と「正義派の集団」を育てる
- @「中間的集団」と「正義派の集団」を大切にする理由
- A全職員が生徒指導を行う意識をもつ
- B職員の変化
- 「暴力禁止」を徹底する校内体制づくりを図る
- @「暴力禁止」徹底のための教師の共通理解
- A規範意識向上の授業
- B安心して仕事ができる環境づくり
- C職員体制の構築
- やさしさと厳しさを両立する
- @生徒への接し方
- A具体的な行動の仕方
- 教職員の人権研修を推進する
- @忘れられない同僚の言葉
- A人権感覚を高めるためには
- B教師の人権感覚といじめ問題
- 人権チェックリストを活用した校内人権研修会を行う
- @校内人権研修会について
- A効果的な研修会の持ち方
- 授業で規範意識を向上させる
- @たばこ万引きで逮捕、納得いかない
- A授業のきっかけ、非常識な保護者の存在
- B授業の実際
- C生徒へのアンケート結果や生徒の感想から
- D指導の留意点
- E生徒の感想
- Fまとめ
- ロールプレイ研修で聴く力をつける
- @傾聴訓練やロールプレイ研修の必要性
- Aロールプレイ研修の実際
- Bファシリテーター(進行係)への指導の留意点
- C教師がロールプレイ研修を行うことの効果
- D参加者の感想
- Eまとめ
- 第三章 いじめ対応―実例でみる対応の仕方
- 保護者と良い関係を築くための4か条
- @保護者と良い関係を築くために心がけること
- A子どもに直して欲しいことがあるときの保護者への伝え方
- 生徒指導担当とスクールカウンセラーの連携
- @生徒指導専任教諭の歴史
- A専任教諭の活動内容
- B設置上の留意点
- C生徒指導専任教諭のメリット
- Dスクールカウンセラーとの連携
- E動いて信頼を得る
- 問題発生時の教師の対応
- @教師の複数対応
- A被害生徒・保護者への対応
- B加害生徒への指導
- C加害生徒の保護者への連絡
- D被害生徒・保護者への確認
- E警察との連携を考えるケース
- 具体的な警察との連携の仕方
- @警察との連携
- A警察の連携について
- B暴力には毅然とした対応
- C問題が発生した場合
- D被害届を考えるケースについて
- E被害者、被害者の保護者を支える人の存在の重要さ
- 指導の限界を見極める
- @指導の限界とは何か
- A指導の限界を見極める
- B暴行を受けた生徒の事例
- C振り返り
- Dまとめ
- 被害生徒の心理について
- @からかわれている生徒の事例
- A考察
- Bまとめ
- 加害生徒の心理について
- @ダブルロール論をよりどころとした指導方法について
- A元被害生徒が加害生徒になった事例
- B考察
- Cまとめ
- 加害生徒の集団心理について
- @からかいから暴力にまで発展した事例
- A集団化した生徒の心理状態
- おわりに
はじめに
日本で初めていじめ対策に特化した法律「いじめ防止対策推進法」が2013年(平成25年)に制定されました。しかし、残念なことですが、いじめやいじめが原因と思われる自殺報道は後を絶ちません。
児童生徒の自殺の背景にいじめがあったのではないかと報道されるテレビや新聞、ネットを見るたびに、心が痛むのは私だけではないと思います。
ところが、いじめ問題がメディアでこれだけ取り上げられているにもかかわらず、具体的ないじめや生徒指導についての書籍は少ないのが実感です。
「いじめをやめなさい」と言っても、いじめは簡単に止まりません。逆にさらにエスカレートすることもあります。私は、実際にいじめを指導した人でないと、いじめを解決することの難しさは理解できないと思っています。それは、被害に遭った人、指導してきた先生たちと話して感じたことです。
最初から、いじめ指導が得意だという先生はそれほど多くはないと思います。真剣に取り組めば取り組むほど、戸惑い、迷うことが多いからです。児童生徒、保護者から情報が入り、指導が終わったと思った問題でも、まだ、いじめが止まっていなかったことや、加害生徒がまったく反省していないことを知ると、では、どのような指導をすれば良かったのかとまた悩みます。
いじめや生徒指導について、どう考えればいいのかと悩んでいる先生、悩んだり迷ったりしているが多忙で本を読む時間もなかなか取れない先生、自分の指導方法が本当に正しかったのかと悩んでいる先生、これが現場の実態ではないでしょうか?
そのような先生方に、私の拙い経験が少しでも役に立てればという想いで本書を執筆しました。
私は、平成8年から2校にわたり通算13年間、「生徒指導専任教諭」として勤務している間に、教師の指導だけでは問題行動が止まらないケースを数え切れないほど体験してきました。そして、その被害を受けた生徒、保護者、教師の相談も受けてきました。
その中で、警察や家庭裁判所と連携してきたケースや、実践してきた指導方法が、学校現場で困っている先生に少しでも何かのヒントになれば、そしてそれがいじめや暴力を受けて辛い思いをしている人を救うことにつながれば、と考えるようになりました。それが本書を執筆する第一の目的です。
ここに示された実践は、一緒に働いた小学校・中学校の先生方、スクールカウンセラー、神奈川県警察の警察官、教え子など多くの人たちからのアドバイスをもとに実践してきたものを文章にしたものです。
十分伝えきれない箇所もあると思いますが、今更ながら、本当に多くの人たちの支えがあったことを再確認することができました。
なお、本書の事例は、私が実際に対応したケースをヒントに再構成した架空のケースであることをお断りしておきます。
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- 明治図書