- まえがき
- 第1章 生徒主体の国語授業の5つのポイント
- 1 生徒が身に付ける資質・能力を明確にした授業
- 2 生徒の実態に対応し信頼感に支えられた授業
- 3 生徒の学習意欲を引き出す学習課題を意識させ続ける授業
- 4 生徒の資質・能力を高められる言語活動を取り入れた授業
- 5 生徒の学習状況に合わせて教師とのコミュニケーションが図られる授業
- 第2章 生徒主体の国語授業づくり
- 1 優れた授業の特徴
- 2 教師のマインドセット
- 3 実社会との関わり
- 4 年間指導計画の作成
- 5 単元計画の作成
- 6 学習目標の設定
- 7 学習課題の設定
- 8 情報の全体共有の工夫
- 9 定期考査の作成
- 10 学習指導案の作成
- 11 観点別学習状況の評価
- 12 授業における語りのデザイン
- 13 大学入試等への対策
- 14 組織的な授業改善の取組紹介1
- 15 組織的な授業改善の取組紹介2
- 第3章 生徒主体の領域別授業づくり
- 話すこと・聞くこと
- 1 「話題の設定」の指導と評価
- 2 「情報の収集」の指導と評価
- 3 「内容の検討」の指導と評価
- 4 「構成の検討」の指導と評価
- 5 「構造と内容の把握」「精査・解釈」(聞くこと)の指導と評価
- 6 「考えの形成」の指導と評価
- 7 「表現」の指導と評価
- 8 「話合いの進め方の検討」(話し合うこと)の指導と評価
- 9 「共有」の指導と評価
- 10 「言語活動例」の活用
- 書くこと
- 11 「題材の設定」の指導と評価
- 12 「情報の収集」の指導と評価
- 13 「内容の検討」の指導と評価
- 14 「構成の検討」の指導と評価
- 15 「考えの形成」の指導と評価
- 16 「記述」の指導と評価
- 17 「推敲」の指導と評価
- 18 「共有」の指導と評価
- 19 「言語活動例」の活用
- 読むこと
- 20 「構造と内容の把握」の指導と評価(内容の把握)
- 21 「構造と内容の把握」の指導と評価(構成や展開,表現の仕方などの把握)
- 22 「精査・解釈」の指導と評価(テキスト内の精査・解釈)
- 23 「精査・解釈」の指導と評価(テキスト外と関連させる精査・解釈)
- 24 「考えの形成,共有」の指導と評価(文章を読んだ上での考えの形成)
- 25 「考えの形成,共有」の指導と評価(探究的な学びの要素)
- 26 「言語活動例」の活用
- 第4章 生徒主体の科目別授業づくり
- 現代の国語
- 1 「現代の国語」のネーミングと生徒の未来
- 2 重視されるコミュニケーションに関する資質・能力
- 3 情報の精査とこれまでの評論指導の課題
- 言語文化
- 4 「古典嫌い」の生徒を減らすための指導
- 5 共通必履修科目には,どちらにも「現代文」がある?
- 論理国語
- 6 不毛な「論理 vs 文学」論争
- 7 「論理国語」において「文章を読む」とは
- 8 高等学校国語科で求められるライティング指導
- 文学国語
- 9 なぜ今「解釈の多様性」なのか
- 10 教師に敬遠されがちな創作指導の充実を
- 国語表現
- 11 学習指導要領上,○○向けの科目などない
- 12 共感を前提としたコミュニケーション
- 古典探究
- 13 「古典A」とも「古典B」とも違う「古典探究」
- 14 「読むこと」の指導事項を「深掘り」する
- 第5章 生徒主体の授業を豊かにする5つの視点
- 1 新聞,学校図書館や公共図書館の活用
- 2 地域の人材や施設等の活用
- 3 ICT の活用
- 4 国語を学習する意義を自然と実感できる教室に
- 5 これからの国語科教育を見据えて
まえがき
早いもので,高等学校の新教育課程も3年目を迎えました。
令和7年に入ると,新教育課程を踏まえた初の大学入学共通テストが実施される予定ですし,いわゆる総合型選抜を導入する大学も拡充の方向にあり,高校現場はまさに「予測困難で複雑化する状況」への対応を迫られているように思えます。
また,年度末には,学習評価の結果をどう取りまとめればよいか,苦労された教師も多かったのではないでしょうか。遅れていた高等学校への観点別学習状況の評価もようやく認知され,試行錯誤が進んでいるように感じられます。さらに,いわゆる探究学習も徐々に浸透し始め,国語科に加えて,総合的な探究の時間を担当されている方も多いと考えられます。
こうした状況において,「主体的・対話的で深い学び」「主体的に学習に取り組む態度」といったキーワードをもち出すまでもなく,国語科の授業づくりにおいて大変重要なのは,生徒の「主体性」をいかに引き出し,言葉の資質・能力の育成に結び付けていくか,ということです。
筆者の認識では,一方的な教師主導の伝達型授業はかなり少なくなってきており,教室で話し合う生徒の姿が数多く見られるようになってきました。しかし,本当に生徒が,その活動を「やる意義がある」「ぜひやってみたい」と思って行っているかは分かりません。活動的になってはいても,広い意味では,教師がレールを厳しく敷いていることに変わりがない授業もいまだ数多く見られます。そこには,これまでの授業に対する執着とともに,新学習指導要領や求められる授業改善の在り方に対する理解の不十分さがあると考えられます。「主体的・対話的で深い学び」など,大きなキーワードは知っていても,学習指導要領の目標や内容等は理解できていないという教師もいるでしょう。
そこで,本書では,単に「学習指導要領に基づいた授業づくり」について解説するのではなく,生徒が主体性を発揮しながら学習に取り組むことができるような授業づくりを「生徒主体の授業づくり」と呼び,筆者が提案する授業づくりについて,授業全般から各領域,各科目などに至るまで,各項をコンパクトに読んでいただけるように構成しました。
しかし,本書は授業づくりのノウハウ本ではありません。あくまでも一人一人の先生方が目の前の生徒のために自らの授業をよりよくしようとお考えになった際に参考となればと,筆者の望む授業イメージやその考え方を平易な言葉でまとめたものであり,授業改善の主役は一人一人の国語科教師です。
したがって,年齢や経験,立場を問わず,授業改善に興味のある先生方にぜひお読みいただければありがたく存じますが,できれば,「学習指導要領についてあまり理解できていない」「授業改善と言われるけれど,どのような授業が求められているか,よく分からない」という思いをお持ちの先生に読んでいただき,授業改善の具体に役立てていただければ幸いです。
なお,本書の成立には,多くの方によるお力添えをいただきました。特に,本書内の事例の提供等にご協力いただきました,茨城県立土浦第三高等学校校長の渡邉克也様,教頭の川上弘様,国語科教諭の橘内敏江様,齋藤和世様,富岡雅行様,市川真人様,並びに,茨城県教育委員会指導主事の鈴木康弘様には心から感謝申し上げます(所属はいずれも2023年度のもの)。
2024年6月 /大滝 一登
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- 明治図書