- まえがき
- 1章 新任教頭のあなたへ
- 01 管理職の世界へようこそ!
- 02 目指す教頭像
- 03 教頭の責任
- 04 教頭と教育委員会
- 05 これが1年間の実務だ!
- 2章 日常的な実務
- 教頭の事務
- 01 調査・報告
- 無限ループ!? 調査・報告文書作成のコツ
- 02 学級通信
- 担任の思いが伝わる学級通信にする
- 03 通知表
- 通知表のチェックと“所見観”
- 04 出張・休暇の管理
- 休暇をとることも教頭の仕事の1つ
- 05 学校日誌・学校沿革誌
- 歴史を紡ぐ責任と自覚をもつ
- 教頭の雑務
- 01 電話対応
- 電話対応で決まる“学校のイメージ”
- 02 校内巡視
- 校内巡視で「見えないもの」を見る
- 03 一斉メール
- たかが事務連絡,されど事務連絡
- 04 来校者対応
- 来校者へのおもてなし
- 05 生きもの対応
- 教頭の夏,生きものの夏
- 06 苦情対応
- 真摯に対応,チームで対応
- 3章 組織づくりの実務
- 01 校長との連携
- 校長に学び,校長を理解し,校長を助ける
- 02 職員室経営1
- 職員の組織理解―3つの視点から見た職員室経営
- 03 職員室経営2
- 教頭の職員理解―“理”と“情”の職員室経営
- 04 支援員(サポートスタッフ)
- 担任と支援員,それぞれの立場に立って配慮と調整をする
- 05 人材育成
- 「受動的な学び」から「能動的な学び」へ
- 06 職員室通信
- 3つのルールでゆる〜い職員室通信を
- 4章 学校行事の実務
- 01 入学式・卒業式
- 地域と学校をつなぐ教頭の実務
- 02 授業参観
- 授業参観で3つのチャンスを生かす
- 03 宿泊行事
- 勤務時間にかかわる実務を確実に!
- 04 避難訓練
- 当日だけじゃない! 防火管理者の実務
- 05 運動会
- 臨機応変に対応! PTA・地域と連携した一大イベント
- 5章 危機管理の実務
- 01 自然災害
- いつでも対応できる「心構え」と「備え」を忘れずに!
- 02 感染症
- 敵はウイルスや細菌だけじゃない!
- 03 食物アレルギー
- 担任任せにせず,組織で対応!
- 04 児童虐待
- 関係機関と連携して,子どもの安全確保を最優先!
- 05 いじめ
- 担任時代の経験を生かして“教頭として”の対応を!
- 06 体罰
- 未然防止が一番……しかし発生したら対応を迅速に!
- あとがき
まえがき
教頭の現実
一般的に,「教頭は,きつい」「教頭の仕事は,大変だ」……と,いわれています。
いったい,何がそんなに「きつい」「大変」なのでしょうか。
令和3年度に全国の副校長・教頭約2万名へ行った調査において,「負担(疲労やストレス)に感じる職務」の上位3項目は以下のとおりです。
第1位 苦情対応(72.8%)
第2位 各種調査依頼等への対応(72.7%)
第3位 感染症等による不測の事態への対応(68.4%)
「全国公立学校教頭会の調査―令和3年度―」
すでに教頭職の経験がある方にとっては,納得の3項目なのではないでしょうか。
たしかに,苦情の電話は保護者や地域から突然かかってくるし,各種調査依頼は(多少精選されたり簡略化されたりする傾向もありますが)教頭の実務の中ではまだまだ多くの時間が割かれており,遅くまで学校に残ったり休日出勤をしたりする一因になっています。
また,コロナ禍により,新たに選択肢として挙げられた「感染症等による不測の事態への対応」は,いきなりの第3位です。
非常事態宣言やまん延防止等重点措置期間等を受けて次々にくる通知への対応,分散・時差登校や部活動の制限,日々の校舎内の消毒等々,新型コロナウイルス感染症への対応に全国の副校長・教頭が大変苦しめられていることが表れています。
これが,今の教頭の現実です。
学校の現実
このようなことを書いていると,次年度から教頭になることが決まっている人は,
「どうしよう,教頭になんてならなきゃよかった」
と思っているかもしれません。
しかし,です。
教頭職は,本当に「ならなきゃよかった」と思われるような職なのでしょうか?
いいえ,そんなことはありません。
トラブルを抱えて困っている担任を助けたり,PTAや地域住民との連携を充実させて学校行事を成功させたりするなど,教頭の活躍の場は多いのです。
学校の営みの多くは,実は教頭のおかげで成り立っている
と言っても過言ではありません。
子どもたちや担任の活躍の裏には,教頭の存在がある―まさに,縁の下の力持ち。子どもたちや地域のことをしっかりと把握しているからこそ,校長の方針の下,学校が動くことができます。
それもまた,学校の現実なのです。
教頭だからこその創意工夫
とはいえ,だからこそ教頭に多くの実務が集中してしまっているともいえます。
すると,「教頭職は『きつい』『大変だ』」というネガティブワードが頭をかけ巡ってしまいます。
そうなると,同じ実務をしていても負担感や疲労感が増してしまいます。
職員室でぶつぶつと愚痴が口をついて出てしまいます。
職員が話しかけようとすると,仏頂面で「これ以上,俺に仕事をもってくるな」というオーラを出してしまいます。
あなたが担任だったら,そんな教頭先生や職員室は嫌ですよね。
では,どうすればよいのでしょうか。
「仕事に動かされる」のではなく,教頭として「仕事を動かして」いくのです。
考えてもみてください。教頭は,学校のナンバー2です。
やりようによっては,なくせるものはなくし,減らせるものは減らすことができます。教頭だからこそ,
教頭自身の仕事を,創意工夫をしてやりやすいようにつくりかえることもできるはずです。
「例年通り」「前任者と同じく」仕事を行うのではなく,教頭だからこそ,自分が仕事をしやすいようにしていくのです。
教頭職を楽しむ
とはいえ,どんな実務があるのかを知らなければ,創意工夫のしようがありません。新任教頭はもちろん,教頭の在職中は目の前の実務をこなすのに精一杯です。
今,この瞬間も教頭職の実務が見通せず,不安な方やあまりの激務に悩んでいる方がいます。
真っ暗闇の道を歩いている間は,手探りでその場しのぎの毎日でしょう。
そんなあなたに,少しでも教頭の実務の見通しをもてるようにしたり,コツやヒントを伝えたりすることが本書の目的です。
ただし,私はスーパー教頭ではないので,本書を読むことで教頭の仕事が劇的に楽になるような「神の一手」が書いてあるわけではありません。
また,文部科学省のホームページに書いてある流行の専門用語を並べて,「教頭とはこうあるべきだ!」という,できもしない理想像を書いたものでもありません。
マニュアルと銘打っていますが,私自身の経験や実践も紹介しているので,ご自分の学校に合わせて活用してください。
見通しがもてるからこそ,工夫や改善の余地が生まれます。
「きつい」「大変」というイメージが先行している教頭職ですが,実は「おもしろい」「やりがいがある」職でもあるのです。
本書が,「教頭職を楽しむ」ための一助となれば幸甚です。
/辻川 和彦
1年間を通して起きやすい危機とその管理マニュアル‥を順位などにして本にしてもらえても興味深いです。
クレーム対応の上手な対応の仕方、言葉選び(リフレーミング)的な本もあったら興味深いです。