- まえがき
- 第1章 1人残らずひいきする教師が学級を育てる
- 信頼感で子どもとつながる学級づくり 理論編
- 1 学級づくり方法論バブル
- 2 学級集団育成の道筋
- 3 学級崩壊の可能性はすべての学級に
- 4 機能する学級
- 5 協働的問題解決能力の基盤
- 「信頼感で子どもとつながる学級づくり〜協働を引き出す教師のリーダーシップ〜」の使い方
- ※第2章の実践編は,下記の項目を中心にして,各執筆者が,それぞれの主張を展開しています。
- @子どもとつながる考え方
- ▲子どもと信頼関係をつくる上で大事にしている基本的な考え方,ポイントなどについてまとめました。
- A学級づくりにおいて,子どもとつながり,協働を引き出す具体的な取り組み
- ▲子どもと信頼関係をつくり,成長をうながす具体的な実践を,はじめて取り組む方にも追試できるよう,わかりやすく解説しました。
- ▲成功させるコツ,また失敗しそうなところと失敗してしまった際のリカバリーの方法についても,ポイントをまとめています。
- 第2章 信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ
- 信頼感で子どもとつながる学級づくり 理論編
- 1 「子どもがかかわらざるを得ない」をシステム化する
- 1 「子どもがかかわらざるを得ない」をシステム化する
- (1) 若い時の失敗
- (2) 子どもの方からかかわらざるを得ないシステムをつくる
- 2 この場面で子どもの方からかかわらざるを得ないシステムをつくる
- (1) 朝
- (2) 授業中
- (3) 休み時間
- (4) 給食・掃除
- (5) 帰り
- 2 「子ども立場」で考えてみよう
- 1 子どもに話していることを実践し,「子ども立場」を理解する
- 2 「ちゃんと」を共有する
- (1) 体感する
- (2) 自分たちで考えてみる
- (3) ゲーム化してみる
- 3 子どもの世界に飛び込んでみる
- 3 子どもとのよい関係づくり〜バランスのよい柔らかな上下関係を築こう〜
- 1 子どもとの「よい関係」
- 2 よい関係づくりの考え方
- (1) 尊重してつながる
- (2) 心の欲求(ニーズ)を満たしてつながる
- (3) 大人ポジションでつながる
- (4) 強みを生かしてバランスよくつながる
- 3 よい関係づくりの方法@ 日記で尊重しながら心の欲求を満たしてつながる
- (1) 書く内容と量
- (2) 紙上の勇気づけ赤ペンコメント
- (3) 成功のコツと気を付けたいポイント
- 4 よい関係づくりの方法A 「レベチャレ」(黒板○つけ法)で大人ポジションでつながる
- (1) 「レベチャレ」とは
- (2) 導入
- (3) ターゲット行動と「○」の条件,クリアの条件
- (4) 成功のコツと気を付けたいポイント
- 5 「トラチャン」でいこう
- 4 交換ノートで安心感ある学級づくり〜伝えたい5つのメッセージ〜
- 1 安心感の基礎は担任とのつながり
- (1) つながりは日常の積み重ねでつくる
- (2) 子どもが心を開くとき
- 2 交換ノートでつながる
- (1) 理解しようとする〜あなたのこと知りたいな〜
- (2) 認める〜あなたのよいところを見てるよ〜
- (3) 相談に乗る〜一緒に解決の方法を考えよう〜
- (4) 感謝する〜あなたが大切〜
- (5) 約束を守る〜あなたを絶対裏切らない〜
- 3 つながりだした子どもたち
- (1) 見ているだけでいい
- (2) 教室が安心できる場に
- 5 主体変容 率先垂範〜つらかった一年から〜
- 1 自分を変える,自分からする
- (1) 教師としての芯
- (2) 子どもとつながるための3つの柱
- 2 出会いから巣立ちまで〜子どもとつながる具体的な実践〜
- (1) 出会いを演出する
- (2) 居心地の良い環境をつくる
- (3) 子どもに委ねる
- 6 子どもとつながる「勇気づけ」
- 1 子どもを元気づけ,子どもとつながる「勇気づけ」
- (1) 教師と子どもがつながるということ
- (2) 「勇気づけ」って何?
- 2 やってみよう「勇気づけ」
- (1) 「勇気づけ」のために必要な3つの視点
- (2) 毎日の中でできる「勇気づけ」あれこれ
- 3 「勇気づけ」を成功させるためのコツ
- (1) 「勇気くじき」のパターンを知る
- (2) 「ほめる」こととの違いを自覚する
- 7 1人1人をつなげる教師の在り方〜よりよく「変わる勇気」を与える関係づくり〜
- 1 子どもとつながる考え方の下地にあるもの
- (1) 子ども時代の思い出
- (2) 刺激的なシゲキ先生
- (3) クラスをつなげたワクワク感のある目標
- (4) シゲキ先生が残してくれたもの
- 2 子どもとつながる具体的な実践
- (1) 全員に平等に「出番」を与えるくじ引き指名
- (2) 特技発表会〜1人1分大会〜
- (3) 相互評価で「ほめる気持ちよさ」「ほめられる気持ちよさ」を
- (4) 学級の結束から学年のまとまりにつなげる学級対抗集会
- 3 教師が子どもとつながり,子ども同士をつなぐ教室に
- 8 必ず笑顔で接しよう!〜目指せ,子どもたちへの「専手必笑」〜
- 1 私のようなサイズでは……
- 2 正対せずに,いなす
- 3 期待している反応を覆す
- 4 子どもの話を直接,間接的に聞く
- 5 トラブル解決には,コミック会話
- 6 子どもの評価を直接,間接的に伝える
- 7 得意分野で子どもとつながる
- 8 グレー解決もある子どもの世界
- 9 全力を伝えるための,学級通信と学校ホームページ
- 10 教師力を上げてくれる宝
- 11 「ふうん,そうくるかあ。」で,「専手必笑」
- 12 「先生は,怒っていない」を脱力感で伝える
- 13 不適切な行動のきっかけを変える
- 9 「子どものできるところ探し」と「子どもに頼る」ことで教師と子どもの間に築く良好な人間関係
- 1 教師と子どもが人間関係を築くためにする3つのポイント
- (1) 子どもの「できるところ」探しをする
- (2) 子どもに頼る
- (3) 教師の「良いところ」を意図的に見せる
- 2 実践事例で考える教師と子どもの良好な人間関係の築き方
- (1) エピソード@「できるところ探し」でやる気にさせる!
- 〜元気いっぱいやんちゃタイプ・トシヒサくんの場合〜
- (2) エピソードA「子どもに頼る」ことで信頼関係を築く!
- 〜しっかり者はつらつタイプ・アヤコさんの場合〜
- (3) エピソードB教師の魅力でつながる!
- 〜本ばかり読んでいるおとなしいタイプ・マチコさんの場合〜
- 3 教師と子どもが良好な人間関係を築くためには?
- 10 「信頼」の一点突破で子どもとつながる!
- 1 私の苦いエピソード…
- 2 キーワードは,教師への「信頼」!
- 3 「信頼」のためのアプローチ
- (1) 日頃のコミュニケーション
- (2) トラブルや問題行動への対処の仕方
- (3) 教師の在り方・人間性
- 4 「信頼」によって「安心感」が生まれ,よりよい学級づくりへ
- あとがき
まえがき
「よい授業をすればよい学級ができる」と長らく言われてきました。私が小学校の教師として採用された平成元年頃は,先輩方からそう指導されてきました。恐らく私と同世代あたりの先生方は,同様の指導を受けてきたと思われます。
しかし,それまでのそうした常識が通用しなくなったことを世間に知らしめたのが,いわゆる「学級崩壊」という現象です。「よい授業をすれば……」のテーゼが成り立つのは,子どもたちが授業という土俵に乗ってくれた時です。複数が立ち歩き,私語をし,最初から寝そべり,学習用具を一切出さない,大声で関係のない話をする,教室から出て行く……という状況では,授業しようにもそれができません。よい授業かどうかを問う前に授業そのものができない状況です。
学級崩壊というと小学校特有の現象かと思われがちですが,中学校ではこれが授業崩壊として現れます。ある教科,ある教師の授業になると授業が成り立たなくなる現象です。それにもかかわらず,今も「よい授業をすれば……」の指導は,あちこちの現場でなされています。
学級崩壊も授業崩壊も,そこには共通の原理が見られます。それは,
教師の指導力の解体
です。学級や授業を成り立たせるには,言うまでもなく教師の指導力が必要です。
しかし,だからといって教師の指導力を強制力や圧力のような力技に求めるのは,危険なことです。強制力の強い教師に出会うと子どもたちは,言うことを「聞いたふり」をします。表面上,学級では穏やかな日々が流れます。しかし,子どもたちの中では,破壊的なことが起こっています。それは,
やる気の消失
です。子どもたちの成長のエネルギー源は,言うまでもなく,やる気であり意欲です。意欲があるから挑戦し,それが成長となるのです。
学級を育てることができる教師は,子どもたち1人1人のみずみずしい意欲を育てています。それができる教師は,学級をまとめていますが,それを目的として学級づくりをしているわけではありません。彼らの目的は,個の育成です。そして,最も重要なことは,その指導力の源泉を,強制力や圧力ではなく,子どもたちとの信頼関係に求めていることです。それも
子どもたち1人1人との個別の信頼関係
なのです。子どもたちをまとまりとして見るのではなく,1人1人と向き合うことによって高い凝集力のある学級をつくっているのです。
本書では,小学校編,中学校編でそれぞれ10人の執筆者が,子どもたちとの個別の信頼関係づくりについて,どう考え,具体的にどのように実践するかを述べています。各地でセミナーを開催したり,指導的立場になっていたりする実力あるメンバーの主張は,具体的で説得力があります。
力のある教師は,実践も素晴らしいですが,注目すべきはその考え方です。うまくいく考え方でうまくいく方法を選択しているからこそ,成果をあげることができるのです。また,さらに大事なことは,彼らが完成された教師ではなく,今まさに成長著しいその過程の真っ只中にいるということです。
名人や達人の主張や実践は確かに素晴らしいです。しかし,誰にでもできるわけではないから,彼らは名人や達人になっているわけです。本書の執筆者は,そうした名人や達人,また,学術的研究から学び,それを目の前の子どもたちが適用できるように試行錯誤しながら実践を生み出しています。
力をつける時に本当に大切なのは,その試行錯誤のプロセスではないでしょうか。知ったことを,目の前の子どもたちに還元できた時に初めて,プロの教師の学びが成立するのです。
/赤坂 真二
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- 明治図書
- 若い先生へ贈呈した。学級の様々なエピソードが端的に掲載されていること。成功例だけでなく,失敗例もあり,若い先生も勇気づけられるから。2018/10/940代・小学校管理職
- 学級経営の大切さと子どもに向き合うための心構えを学びました。私たちは何度でもいつでも学び続ける必要があると感じています。2017/1/130代・小学校管理職
- 良かったです。2016/6/2520代・小学校教員