- まえがき
- 1章 スマホ時代の子どもたちに育てたいソーシャルスキルとは
- 1 ソーシャルスキルとは? なぜソーシャルスキルが必要か
- 2 現代の中学生・高校生に必要なソーシャルスキル 子どもの心に寄り添って
- 3 ソーシャルスキルをどのように学習するか ソーシャルスキル・トレーニング(SST)の実践に向けて
- 4 簡単にできる学校への導入 年間カリキュラムと授業のポイント
- 5 ソーシャルスキルの向上と学校危機の予防
- 6 プログラムの効果を持続させるために 生活の中に息づくようにするために
- 2章 これだけは,徹底したいターゲットスキル
- 1 あいさつのスキル 人の心と心をつなぐ架け橋に
- 2 自己紹介のスキル 初対面でも仲よくなれるきっかけを
- 3 コミュニケーションのスキル:話すスキル 伝えよう,心から
- 4 コミュニケーションのスキル:聴くスキル 相手に関心をもって
- 5 感情を理解するスキル 複雑な感情に気づく
- 6 感情をコントロールするスキル 怒りの下にある気持ちとは
- 7 あたたかい言葉をかけるスキル 自分がうれしいことをしてみたら
- 8 質問するスキル ちょっとした勇気が大きな学びに
- 9 やさしく頼むスキル 助けを借りたい時もある
- 10 謝るスキル まごころを伝えるために
- 11 上手に断るスキル 相手を傷つけない意思表示とは
- 12 立ち止まって考えるスキル ケアレスミスを防ぐには
- 13 SNSによるコミュニケーションスキル 仲よしでいるために
- 14 自尊心を高めるスキル イケてる自分を発見できる
- 15 異性と上手にかかわるスキル 違うからこそ互いに思いやる
- 16 計画を実行するスキル 目的を達成するために
- 17 問題解決のスキル いろいろな問題に落ち着いて対応するために
- 18 ストレスに対応するスキル 自分の心と身体の関係とは
まえがき
「ソーシャルスキル」という言葉は,トレーニングで獲得することができるという前向きな考えを打ち出しています。社会的な“能力”,向社会的な“性格”といった表現を用いてもよいかもしれませんが,いずれも固定されたイメージがあります。しかし,このソーシャルスキルという言葉を用いると,努力次第でぐんと伸びていくようなステップアップを想像することが可能になります。そして,対人関係を築き円滑に維持し,社会に適応していくための知恵や術,コツといった具体的なターゲットとして捉えることができるようになります。
子どもの発達をさかのぼってみると,幼児期に子どもがトイレに1人で行けるようになるのも,小学生になってお風呂に1人で入れるようになるのも,親や周囲の人たちが一生懸命生活習慣のスキルを教え込むから可能になるのです。「ここがお風呂場だよ。まずかけ湯をしよう。シャンプーを手に取って,こうやって……」というように,手塩にかけて教えることによって,できるようにしたのです。つまり,「説明(インストラクション)」して,「モデリング(手本を見せて)」を活用し,毎日「リハーサル(練習)」し,「上手だね」とフィードバックし,おばあちゃんの家に行ってもできるよね(チャレンジ)と,別の場面でもできるように促して,こうしたスキルを獲得させてきたのです。
ところが,思春期や青年期になると,親や周囲の人は細やかにかかわることをやめ,放任しがちです。そのため,友達関係や学校でのトラブルや葛藤に,どのように向きあい解決したらいいかという生きるためのソーシャルスキルを子どもたちは学べなくなっています。学校も問題を予防することに時間をかけず,出てきた問題の対応に追われてしまいがちです。
この本は,中高生を対象に,学校生活に必要な,生きる力の土台となるソーシャルスキルをターゲットにし,子どもたちが意欲的に学べる授業を提案しています。特に,昨今の問題行動を引き起こす背景で取りあげられるスマホやネットに対応するスキルの他,怒りなどの「感情」をマネジメントできるようなスキルも含めています。
この本の刊行にあたり,茅野現様には大変お世話になりました。あたたかく穏やかな指針をいただいたことに感謝致します。各章の執筆は,ソーシャルスキル・トレーニングの導入に尽力してくださり,子どもたちの気持ちに寄り添う支援に情熱的に取り組んでいただいている先生方にお願い致しました。素敵な実践を提案していただき深謝致します。
多くの先生方が子どもたちのソーシャルスキルを磨くために,この本を活用してくださることを切に願っております。
/渡辺 弥生・原田 恵理子
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