- はじめに
- 1章 「考え,議論する道徳」に変える発問&板書
- 01 考え,議論する道徳のスタート ―完全実施に向けて―
- 02 発問を変えると授業が変わる!
- 03 板書を変えると授業が変わる!
- 2章 「考え,議論する道徳」に変える発問&板書の鉄則45
- 01 発問と質問の違いを意識する
- 02 道徳授業の「問題」とは何かを理解する
- 03 1時間のゴールを見据えて発問をつくる
- 04 大きな問いで授業を構想する
- 05 開かれた発問をつくる
- 06 知的好奇心を刺激する発問をつくる
- 07 子どもが考え出す窓口を与える発問をつくる
- 08 一般常識をひっくり返す発問をつくる
- 09 教師提案型の発問をつくる
- 10 児童主体型の発問を生かす
- 11 児童主導型の発問を生かす
- 12 「問い」を醸成させる
- 13 多面的・多角的な思考を促す発問@構造的思考を意識する
- 14 多面的・多角的な思考を促す発問A予定調和をひっくり返す
- 15 多面的・多角的な思考を促す発問B知ったかぶりをしない
- 16 多面的・多角的な思考を促す発問C板書と連動させる
- 17 多面的・多角的な思考を促す発問D「もし」を問う
- 18 すべては「問い返し」で決まる
- 19 問い返しのスキルアップ@引き出しを増やす
- 20 問い返しのスキルアップA適切なタイミングを見計らう
- 21 問い返しのスキルアップB交流分析を生かす
- 22 問い返しのスキルアップC効果的な声かけをする
- 23 問い返しのスキルアップD究極の問い返しを行う
- 24 自分自身とのかかわりを考える問いをする
- 25 自己評価能力を高める発問をする
- 26 今後を展望する発問をする
- 27 授業後も考え続ける発問をする
- 28 要注意発問に留意する
- 29 最終的な「問い」に進化させる
- 30 板書の意識転換をする
- 31 板書に必要な条件を考える
- 32 子どもたちの思考のサポート板として活用する
- 33 黒板を子どもたちに明け渡す
- 34 構造的な板書をつくる
- 35 板書の図式化を行う
- 36 ノートと連動させる
- 37 板書の「シメ」を考える
- 38 評価につながる板書の見取りをする
- 39 1年生の定番教材で発問と板書を構想する
- 40 2年生の定番教材で発問と板書を構想する
- 41 3年生の定番教材で発問と板書を構想する
- 42 4年生の定番教材で発問と板書を構想する
- 43 5年生の定番教材の発問と板書を構想する
- 44 6年生の定番教材の発問と板書を構想する
- 45 道徳の評価を考える
はじめに
昨年度,『考え,議論する道徳に変える指導の鉄則50』という拙著を執筆してから,多くの反響をいただきました。
私はここ十年来,授業の軸足を子どもたちに据え,テーマに向かって子どもたちと真剣に向き合い,深く考え議論する授業スタイルで実践研究を続けてきました。そこからみえてきた成果を,全国の先生方と共有できたのであれば,それは望外の喜びです。ありがとうございました。
ただ,前著は道徳授業を変えるための要素を全体的に網羅したので,語り尽くせないところもありました。やはり,もう一歩踏み込んでいきたいという思いはありました。読者の皆様からも,さらに詳しく知りたいというニーズを感じました。そのタイミングで,担当の茅野様から「続編を」との提案をいただき,『発問』と『板書』の工夫・改善に特化した内容で書かせていただくことになったのです。
なんといっても「特別の教科 道徳」の授業をいかに実りあるものにするかという観点で言えば,この二つが一番直結する要素であると考えます。そして正にその二つこそが,私の最も意識して変えようとしているものなのです。
また,「発問」には「問い返し」が,「板書」には「道徳ノート」が不可欠の連動要素であるため,その2点についても適宜盛り込みながら,実際の授業場面を想定しながら論を展開することにしました。
本書の提案するスタイルは,「テーマ発問型」とか「深く考え議論する道徳授業スタイル」とか言われます。私は「道徳の壁(K)を扉(T)に変えてオープンする(O)」という意味で「KTO型」と呼ばせていただいております。このスタイルにチャレンジするときのステップは,次の二つです。
@まずは,発問と板書を変えてやってみる。
A子どもたちの反応を受けて,改善し,次の授業に生かす。
まずはやってみないことにはそのよさも課題もみえてきません。恐らく,海図を持たずに航海に望むような心境でしょう。けれど,そうやって初めて見えてくるもの,聞こえてくるものがあるでしょう。潮の流れ,雲の動き,風の向き,遠い山並み,太陽の位置・角度,船の調子,船員の様子等々。それらを常に把握しながら,適切な進路を選びます。そのときに必要なのは,事前に記された航行ルートだけでは不充分です。
指導案も同じではないでしょうか。もちろん,指導の方向性を把握し,教師が指導性を発揮せねばならないときは機を逃さず手を加えることは大事です。けれど,あらかじめ考えたルートだけでは子どもたちはついてこないでしょう。こういうアプローチもある,こっちの方から攻めていったらどうなるだろう,といった幅があると,授業にも余裕が生まれます。そこから授業は動き始めます。実際,「板書を変えただけで子どもたちの反応が変わりました」という方もいらっしゃいます。「このスタイルの板書は,授業中に何が起きたかを一目で知ることができますね」という感想を言ってくださった先生もいます。
そのように,授業改革のはじめの一歩を踏み出すためには,まずやってみることが大切です。はじめから子どもはこういうもの,授業はこうあるべきものと壁をつくっていたら,扉は開きません。
そしてその「成果」(うまくいかなくてもそれを糧にできればそれは成果です)を次に生かしましょう。ちょっとしんどいですが,授業記録をとり,振り返ることで,授業中気づかなかったことに気づき,流れて忘れ去ってしまったかもしれない宝物を意識化し,次の授業に向けて技化することができるかもしれません。
「特別の教科 道徳」本格実施に当たって,怖じ気づく必要もないし,一大決心もいりません。これでなければいけないというスタイルがあるわけではないのです。
大切なのは「はじめの一歩」を踏み出すこと。
ようこそ,新しい道徳の世界へ!
/加藤 宣行
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