- まえがき
- 第1章 何が大変? 高学年女子の性質と背景
- 1 高学年女子の何が大変なのか
- 2 女子への妄想を捨てる
- 3 「女子にも攻撃性はある」という前提に立つ
- 4 高学年女子は一人になりたがらない
- 5 高学年女子は目立ちたがらない
- 6 高学年女子はおしゃべり
- 7 高学年女子は本音を言わない
- 8 高学年女子は思春期真っ只中
- 9 高学年女子は過保護にされている
- 10 高学年女子はネットでつながる
- 〇高学年女子理解の必読書
- 第2章 高学年女子と信頼関係を結ぶ
- 1 女子指導が苦手という教師は多い
- 2 高学年女子には嫌われてはいけない
- 3 高学年女子との約束は守らなくてはいけない
- 4 高学年女子はとにかく聞いてほしい
- 5 高学年女子は依怙贔屓が大嫌い
- 6 高学年女子は依怙贔屓がお好き
- 7 高学年女子はブレなさに安心する
- 8 高学年女子とは適切な距離をとる
- 9 高学年女子と大人として付き合う
- 〇高学年女子に読ませたい本
- 第3章 高学年女子をタイプ別に理解する
- 1 女子の全体的な傾向を分析する
- 2 自立性と協調性で分類する
- 3 チェックリストを使う
- 4 女子を4タイプで見る
- 5 いるか女子とは敬意をもって付き合う
- 6 ひつじ女子とは心を鬼にして付き合う
- 7 おおかみ女子とは対等に付き合う
- 8 くじゃく女子とは根気よく付き合う
- 9 混合タイプを知る
- 10 平均的バランス集団は問題がないのが問題と心得る
- 11 大人しいクラスは着ぐるみだらけと心得る
- 12 たった3人でも問題多発と心得る
- 13 学級崩壊の可能性大と心得る
- 〇幸せになるために生まれてきた
- 第4章 高学年女子の問題行動に対応する
- 1 基本は笑顔で譲らない
- 2 愛があるから指導が通る
- 3 周囲から浮いている子にベクトルを向ける
- 4 暴言・暴力が目立つ子にベクトルを向ける
- 5 「めんどくさい」と言う子にベクトルを向ける
- 6 身だしなみに無頓着な子にベクトルを向ける
- 7 派手な持ち物が目立つ子にベクトルを向ける
- 8 手紙,メモを回す子にベクトルを向ける
- 9 内緒話をする子にベクトルを向ける
- 10 告げ口をする子にベクトルを向ける
- 11 わがまま,自己チューに仕切る子にベクトルを向ける
- 12 仲間外しをする子にベクトルを向ける
- 13 仲間外れにされる子にベクトルを向ける
- 14 人に合わせてばかりの子にベクトルを向ける
- 15 グループが凝り固まる問題に向き合う
- 16 グループで対立する問題に向き合う
- 〇部屋割り指導の前に伝えること
- 第5章 高学年女子の悩みに向き合う
- 1 人間関係の問題を,恋愛問題に置き換える
- 2 いつも仲良しの子と一緒じゃなきゃイヤ
- 3 仲良しの子が別の子にとられちゃう
- 4 どうして私じゃダメなの?
- 5 私のことは大事じゃないの?
- 6 言いたいことが言えないの…
- 7 もう元には戻れないの?
- 8 恋愛に「嘘も方便」なんてない
- 〇距離のとり方に悩む
- 第6章 高学年女子の保護者とつながる
- 1 女子に対する母親と父親の違いを押さえる
- 2 兄弟構成によっても母親は違う
- 3 性別,年齢によっても母親は変わる
- 4 トラブル発生で母親は変わる
- あとがき
まえがき
「高学年女子」という言葉があることでわかるように,高学年女子は,私たち教師にとってちょっと特別な存在です。「高学年男子」という言葉だってもちろんありますが,高学年女子とは明らかに意味合いが異なります。それは,多くの教師が高学年女子指導が男子よりも数段難しいと感じ,一歩間違えれば修復しづらいデリケートな問題であると認識しているからです。
女性教師の方が女子指導に長けていると一般的にはいわれています。かつて自分が経験してきたから,同性だから女子の心理が想像できる(わかる)などというのが,大きな理由でしょう。実際,男性教師が女子に翻弄されているのを尻目に,女性教師が女子と親和的にかかわっている姿を目にした方はたくさんいるはずです。しかし,すべての女性教師がそうであるかというと,決してそうではありません。同性ゆえに女子とぶつかり合い,険悪な関係を築いてしまうケースもあります。また,男性教諭であっても,女子を掌の上で転がすように上手に指導する先生もいます。こうした現象に鑑みるに,教師の性別だけが女子指導の鍵を握っているわけではないということが言えると思います。これは,「女子」という特性に合った指導をすることが肝要であることを示唆していると考えます。
しかしながら,「男女平等」「男女に人間としての差はない」「男女で指導法を分けるのは差別ではないか」といったご主張もあるでしょう。あるいは,「女子をひとくくりに指導するのはいかがなものか」というお考えをおもちの方もいるでしょう。すべてをひとくくりに見ては個を見落とすというご主張も,十分理解し共感もいたします。しかし,男女は本当に「同じ」なのでしょうか。同じ人間ではあるけれど,それぞれの特性とか傾向とかといったものは存在しないのでしょうか。
近年,脳科学の研究により,脳の違いが男女の考え方や感性の差を生んでいることが解明されつつあるようです。その詳細については脳科学の専門家にお譲りしますが,男女差は脳の違いだけで生まれているのではないと考えます。男女の気質や特性は,社会という枠組みの中で後天的につくられているのではないかということに,私は注目しました。
男子は男子として,女子は女子として社会の枠組みの中で生きています(LGBTなどの課題を含むことを承知しながら)。「男は男らしく」「女性はしとやかに」的な社会通念が,現代においてもなくなってはいません。「そうあらねばならぬ」という無言の圧力の中で,「女子は女子らしく」振る舞うのが正しいと,知らず知らずのうちに学習しています。女子は「あるべき女子像」の中で生きようとしますが,実際の女子の姿と乖離が生じます。この乖離が,高学年女子の多くの問題を引き起こすのではないかと私は考えているのです。
社会で後天的につくられた「女子的気質」に目を向け,学校という社会で生きる高学年女子を捉え直すこと。その上で,女子とどうかかわり指導するかを考えること。この2つが本書の大きな提案です。また,女子を4タイプに分類し,特性を分析した上でのかかわり方も提示しました。本書が高学年女子との良好な関係性を築く一助となることを期待します。
/宇野 弘恵
コメント一覧へ