- はじめに
- 序章 自己調整とは
- 自己調整を理念の中心に据える
- 1 世界を救い、自らを幸福にする力
- 2 Adelaide Aldinga Payinthi Collegeの挑戦
- 3 日本における自己調整の位置づけ
- 4 本書における自己調整学習の捉え
- 5 自己調整スキルを高める学習方法の提案
- 第1章 「見通す」フェーズ
- 課題を基に問いを見いだし、学習目標を明らかにする
- 1 目標を設定するプロセス
- 2 計画を立案するプロセス
- 第2章 「実行する」フェーズ
- 目標、計画を基に学習活動を進め、課題を解決したり、目標を達成したりするために学習を確認/調節する
- 1 課題・目標を確認/調節するプロセス
- 2 方法・方略を確認/調節するプロセス
- 3 時間配分を確認/調節するプロセス
- 第3章 「振り返る」フェーズ
- 自らの学習を振り返り、次に活かす
- 1 評価するプロセス
- 2 帰属するプロセス
- 3 適用するプロセス
- 第4章 自己調整学習のための教材と学習モデル
- 1 子どもたちが学習を調整するための学習計画表『レギュレイトフォーム』
- 2 「振り返る」フェーズから「見通す」フェーズに向かうSelf-reflectionモデルの開発
- 終章 自己調整学習の重要性
- 1 主体的に調整しようとする子どもたち
- 2 自己調整が与えるもの
- 参考・引用文献
はじめに
本書では、学校現場における「自己調整学習」について、私自身の実践や研究から得た知見を基に述べています。
私は、現在大学で教鞭をとりながら、自己調整学習の授業実践を続けています。このように、自己調整学習が重要であるという考えに至ったのは、小学校での教育実践と、教育センターや大学院での研究活動の影響によるものです。
図1は、「自己調整学習が重要である」という考えに至った私の教師経験と、信念について整理したピラミッドチャートです。このチャートは、奈良県の教員で教員の授業力量形成を専門に研究されている後藤壮史氏が、私にインタビューを行い整理した図です。
(図省略)
この図を基に、私の過去を少し遡ってみます。
まず、私は新任の学校で、情報教育に出会いました。その学校では、学校の研究としてICT活用を進め、子どもたちの情報活用能力を育成することを大切にしていました。そして、次に、同和教育を核に、20年間、国語科を中心に言語能力を育成することを大切にしてきた学校に赴任しました。これらの2つの学校の経験から、私は、子どもたちの能力を高めることの大切さを学びました。
その後、私は教育センターの研究員として情報教育推進について研究をすることになりました。私は、研究員という立場を活かし、小学校のすべての教科を情報活用能力という視点から再整理し、情報活用能力を育成するための教材を完成させました。このような経験から、子どもたちの能力を形成するためにどのような手立てが必要であるのかということを深く考えることができました。2年後、教育センターでの経験を基に、再度、学校現場に戻り、子どもたちの情報活用能力を育成するための教材を授業や家庭での自主学習で活用するとともに、子どもたちが自ら学ぶ授業を目指し、シンキングツールやルーブリックを授業に導入したり、それらの考え方を教育センターで作成した教材に盛り込んだりして、授業を充実させていきました。
このように授業実践を進めている最中、私は国立大学の附属小学校に赴任することになりました。私はその学校で、子どもが1人1台のタブレットPCを活用して学ぶ授業を推進する役割を得ました。このような立場で授業におけるICT活用を模索したことで、私は、「単元を通して授業を考える必要がある」ということに気づいたのです。このことに気づいた後の私の授業は変わりました。単元導入時に、単元の見通しを子どもたちと共有し、できるだけ子どもたちが主体的に学ぶことができるように心がけるようになりました。また、新しい単元に入る前に、単元すべての教材研究をするようにもなりました。このような授業スタイルを追究するようになり、子どもたちが見通しを明確にもち、自らの学習を振り返って、次の学習につなげていくにはどのようにすればよいのだろうと悩むようになりました。この悩みを解消するきっかけとなったのが、自己調整学習との出会いです。
本書では、このような教師経験の中で到達した自己調整学習を、学校の授業においてどのように実現していくのかについて、私の実践及び研究での経験を基に、したためていきたいと思います。
2023年2月 /木村 明憲
コメント一覧へ