- まえがき
- T 新社会科の特色と実践課題
- ―目標・内容・方法の観点から―
- 1 社会科の役割とは何か
- 1 「社会に開かれた教育課程」と社会科の役割
- 2 教科目標に見る社会科の役割
- 3 社会参画する力の基礎を養うために
- 2 内容や教材に関わる社会科固有の課題
- 1 中学年の学習の範囲と対象を明確化
- 2 学習内容を「3つの視点」で区分
- 3 教育課題に対応した学習の内容及び教材
- (1) グローバル化への対応
- (2) 政治に対する関心を高めること
- (3) 防災教育の重視
- (4) 少子高齢化への対応
- (5) 社会の情報化への対応
- (6) 伝統・文化に関する指導の充実
- (7) 領土教育
- (8) そのほかの課題
- 3 社会科の指導方法改善のポイント
- 1 「資質・能力」育成の重視
- (1) 「資質・能力」とは何か
- (2) 「資質・能力」育成に関わる実践課題
- (3) 学力の基本要素との関連と評価の課題
- 2 「見方・考え方」を働かせた授業づくり
- (1) 「見方・考え方」とは何か
- (2) 「知識の構造図」の作成と活用
- 3 「主体的・対話的で深い学び」の実現
- (1) なぜ「主体的・対話的で深い学び」なのか
- (2) 主体的な学びとしての問題解決的な学習の充実
- (3) 対話的(協働的)な学びとは
- (4) 深い学びをつくるポイント
- 4 「カリキュラム・マネジメント」の推進
- (1) 教科横断的な指導
- (2) 評価の機能を生かした指導計画
- (3) 地域資源の有効活用
- U 社会科「新内容・新教材」指導アイデア
- ―社会科研究者からの提案―
- 3年
- 1 「市の様子」に重点を置いた指導アイデア
- 2 「市の移り変わり」の指導アイデア
- 4年
- 1 地域の「自然災害」を取り上げた指導アイデア
- 2 県内の「伝統と文化」を取り上げた指導アイデア
- 3 県内の「国際交流に取り組んでいる地域」の指導アイデア
- 5年
- 1 わが国の「領土」に関する指導アイデア
- 2 「運輸・貿易」の新しい指導アイデア
- 3 販売業を事例にした「情報を生かす産業」の指導アイデア
- 4 運輸業を事例にした「情報を生かす産業」の指導アイデア
- 6年
- 1 「政治」先習の趣旨と指導アイデア
- 2 「日本国憲法」の小学校らしい指導アイデア
- 3 グローバルな視点を位置づけた歴史学習アイデア
- 4 「歴史を学ぶ意味」を考える歴史学習アイデア
- 執筆者一覧
まえがき
平成29年3月に新学習指導要領が告示された。その後,『解説』の内容が公表された。新学習指導要領は平成32年度(2020年度)から完全実施されるが,それまでに実施される移行期間から,一部または全てを新学習指導要領にもとづいて実施できるように示されている。学校現場では新学習指導要領の趣旨を理解するとともに,それらにもとづく授業イメージを構想し,授業の質向上を図ることが求められている。
新学習指導要領には次のような大きな特色がある。その1つは,教育内容の示され方である。教科目標や学年目標が,知識や技能,思考力,判断力,表現力,学びに向かう力や人間性など,資質・能力のいわゆる「3つの柱」にもとづいて構成されている。人間性に関しては,社会科において地域社会に対する誇りと愛情,地域社会の一員としての自覚,わが国の国土と歴史に対する愛情など心情に関わる事項を養うことが示されている。
各学年の内容は,身につける知識や技能に関する事項と思考力,判断力,表現力に関する事項が示された。前者は,理解させる内容と,調査したり資料で調べたり,まとめたりする活動が示されている。後者には,着目して,捉え,考え,表現するなどの語尾がみられる。今回の学習指導要領では,知識や技能を習得させることにとどまらず,思考力,判断力,表現力など問題解決に必要な能力をはぐくむことがこれまで以上に求められている。
その2つは,総則に教科共通の課題が示されたことである,具体的には,社会に開かれた教育課程の編成の実施,見方・考え方を働かせた授業づくり,主体的・対話的で深い学びの実現,カリキュラム・マネジメントの推進といった授業課題が求められている。これからの社会科の授業づくりに当たっては,こうした課題にも向き合い,それぞれ具現化を図る必要がある。
そしていま1つは,さまざまな現代的な教育課題に対応して内容や教材が改められ,それらの取り扱い方が新たに示されたことである。一層重視されている教育課題には,例えば,伝統や文化に関する教育,自然災害から身を守る防災教育,政治に対する関心を高める教育,情報化,少子高齢化,グローバル化など社会の変化に対応する教育などがある。これらの教育課題に関連する新しい内容や教材,取り扱い方が示された。
このように見てくると,社会科は他の教科と比べて,大きく変わったことに気がつく。年間授業時数はこれまでと同じである。限られた時間のなかで,新しい考え方にもとづいた社会科の授業をどのように展開し,社会科の役割をどのように果たしたらよいのか。本書『小学校社会科「新内容・新教材」指導アイデア』はこうした問題意識のもとにとりまとめたものである。
本書では,今回の改訂で見られる各学年の象徴的な指導場面を重点的に選定し,新内容や新教材をどうとらえ,どのように授業化したらよいのか。教材をいかに開発・活用したらよいのか。授業において「見方・考え方」をいかに働かせるのか。「主体的・対話的で深い学び」をどう実現させるのかなどの課題に対して,基本的な考え方や指導に当たってのアイデアを論述している。
執筆いただいた先生方は,長年各地域で社会科研究をリードされている研究者である。何よりも社会科の教育現場を熟知し,学校との結びつきを大切にしながら実践研究を深めている。各執筆者には,これまでの研究成果を踏まえつつ,独自の見解と視点からこれからの社会科授業の方向性と展望を示していただいた。
本書が各学校,各地域で活用され,わが国の社会科授業の一層の充実と活性化が図られることを切に願っている。
終わりに,大変ご多用な中を本書の執筆に快くご協力をいただいた各執筆者に対して,この場を借りて心から感謝の意を表したい。
平成30年2月 編著者 /北 俊夫
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- 明治図書
- 新学習指導要領にも基づく授業づくりを考える際に教材の見方が広がります。2018/8/2950代・教委
- 新しい内容で分かりやすい!2018/7/7アツシ
- 新教材を使っての具体的な単元構成が参考になった。また、「見方・考え方」をどう働かせるかなど、新学習指導要領の趣旨をどう落とし込むかがよく分かった。2018/4/840代・教委
- わかりやすい2018/4/850代・小学校管理職