- はじめに
- 本書の使い方&留意点
- 理論編
- 1 字は読めなくても絵はわかる? 日本語指導教室で生まれた絵枠トレーニング
- エピソード1 予想外の効果に気づかせてくれたAさん
- エピソード2 自分でも読めて不思議そうだったBさん
- エピソード3 絵枠の名前より先に字を覚えてしまったCさん
- エピソード4 秘めた力をもっていたDさん
- 2 読みと書きのトレーニング
- トレーニングを始める前に
- 読みのトレーニング
- 1 絵枠カードをつくる
- 2 読みのトレーニングをする
- 3 結果を記録する
- 書きのトレーニング
- 1 絵枠プリントの段階性
- 2 視写
- 単語の読み書き
- 濁音・半濁音、拗音、促音、長音の読み
- 短文の読み
- 濁音・半濁音表/拗音表
- 音読トレーニング―トントン読みでスラスラ読みを目指す
- カード&プリント編
- 読みのトレーニングカード
- 五十音絵枠カード ひらがな編/カタカナ編
- 単語カード ひらがな編/カタカナ編
- 短文カード
- 書きのトレーニングプリント
- ひらがな
- ・STEP1 形や筆運びが似ているひらがな
- しつくへ:一筆で書ける 曲がる形が似たもの
- こいり :二線の長さや幅の違いに注意
- てそろる:共通の筆運びをもつもの 違いに注意
- さきちら:共通な部分をもつもの 違いに注意
- うえんひ:曲がりの違いや線画の方向に注意
- かや :斜め線の向きに注意
- とを :共通の部分をもつもの 違いに注意
- れわね :一画目は同じだが二画目の曲がりや終筆に特徴をもつもの
- けにはほ:縦画から始まるもの けの長さに注意
- まよたな:共通の部分をもつもの 違いに注意
- すむ :丸めた後の線画の方向に注意
- おみ :みの斜め線を意識して
- のあめぬ:大きな曲線を描くように
- せもふゆ:それぞれ個性的な形
- ・STEP2 五十音順プリント(あ行〜ん)
- ・STEP3 なぞり用プリント(ローマ字なし・ローマ字付き)
- 視写用プリント(ローマ字なし手本・ローマ字付き手本・絵枠・マス)
- ・TRY! 力試し用単語プリント
- カタカナ
- ・STEP1 形や筆運びが似ているカタカナ
- ヘノリニ:似たひらがなからイメージしやすいもの 違いに注意
- カヤキモ:似たひらがなからイメージしやすいもの 違いに注意
- シツソン:ひらがなから正しい書き順や形をイメージさせたいもの
- クタワウ:共通の部分をもつもの 違いを意識して
- レルハホ:似た部分をもつもの 違いを意識して
- フラスヌ:似た部分をもつもの 違いを意識して
- コロユヨ:似た筆運びをもつもの 違いに注意
- アマム :形が似たもの 違いに注意
- オサナ :横画から始まるもの
- メ :ナとの違い(書き順や斜め線)を意識して
- イネヒセ:似た部分をもつもの 形の違いに注意
- ケチテ :似た筆運びをもつもの 形の違いに注意
- エヲ :平行な二線の長さやヲの書き順に注意
- トミ :斜め線をしっかり意識して
- ・STEP2 五十音順プリント(ア行〜ン)
- ・STEP3 なぞり用プリント(ローマ字なし・ローマ字付き)
- 視写用プリント(ローマ字なし手本・ローマ字付き手本・絵枠)
- ・TRY! 力試し用単語プリント
- おわりに
はじめに
さあ、楽しく読み書きを覚えましょう
はじめまして。
小学校教員歴25年、うち特別支援学級担任6年。退職後、非常勤講師として外国籍児童が通級する日本語指導教室に5年間勤めました。本書で紹介する「絵枠トレーニング」は、この非常勤講師時代に、ひらがな・カタカナを覚えることに苦手さを抱え、心細い思いをしている子どもたちのために考え、実践し、効果を実感できたものです。『特別支援教育の実践情報』誌(明治図書)への投稿をきっかけにこのたび機会をいただき、一人でも多くの子どもたちや指導者の方のお役に立つことができればと、つたない手書きの絵と文字ながら紹介させていただきます。
絵枠トレーニングとは、読めない(文字と音韻が一致しない)子のために、「あ」なら「あめ」、「い」なら「いえ」というように、それぞれが頭文字につく言葉の絵枠の中に文字を書くことによって、周りの大人に聞かなくても、自分で読みを導き出すことができ、その活動を繰り返すことによって、絵がなくても読めるようになる、というものです。
また、書きについても、ノートのような□マスに書くより、絵枠の方が読みを認識しながら書くことができ、最終的には絵枠ごと文字を映像記憶してしまうという、子どもの力に驚かされることになります。
そしてもうひとつの特徴は「楽しい」ということです。子どもは絵が大好きです。言葉が通じない外国からの転入生も、絵を見せるとパッと表情が明るくなります。絵をヒントに読み書きの学習ができる安心感の中で、できる喜びを味わうことができるのです。また指導者にとっても子どもの「できた」場面に立ち会えることは、とてもワクワクした楽しい時間になることでしょう。
もちろん絵枠の効果はその子の実態によりますが、もし、ひらがな・カタカナの覚えの遅れが気になる子や外国籍児童の文字指導の教材をお探しでしたら試してみてはいかがでしょうか。絵枠トレーニングは、「トイレトレーニング」や「お箸トレーニング」のように日常的な動作が当たり前にできるようになるために大切な、子どもの日々の積み重ねを楽しく応援する教材です。
本書の絵枠トレーニングで学ぶことができるのは、ひらがな・カタカナの清音までです。でも読み書きはそこがゴールではありません。清音を覚えるのに時間がかかった子は、得てして音読の習得にも時間がかかりがちであると経験上感じています。そこで本書では発展として、単語、短文、教科書とスモールステップを踏んだ、音読の基礎トレーニングについての実践まで触れてみました。他にもたくさんの方法があるかと思いますが、参考にしていただければ幸いです。
/西野 桂子
-
- 明治図書
- 語彙力を増やす意味でも使用できるのが良かった。2023/10/530代・小学校教員
- 日本語指導で生まれた教材ということですが、日本語指導担当しているものとしてありがたいです。日本語指導では、子どもの学習用の本が少なかったので、うれしいです。2021/12/630代・小学校教員