- まえがき
- 第1章 人材を育成するための心の構え
- 【箴言1】 「1」しかできないなら,「1.1」できるように
- 【箴言2】 逆上がりは1回目が最も難しい…
- 【箴言3】 全ての職員を“最大限”成長させる
- 【箴言4】 自分がやって100点<部下に任せて70点
- 【箴言5】 昨日は「5」で褒め,今日は「6」で褒める
- 【箴言6】 褒める力量に大差なし・叱る力量に大差あり
- 【箴言7】 「護送船団方式」と「フラッグシップ方式」
- 【箴言8】 「鉛筆の芯を太くする育成」と「尖らせる育成」
- 【箴言9】 最後の1人の育成>それまでの99人の育成
- 【箴言10】 人材育成は「指導と評価の一体化」で
- 第2章 校長自身の「日々の構え」を戒める
- 【箴言11】 校長は自分を客観視する分身が必要
- 【箴言12】 校長はいつも上機嫌でいること
- 【箴言13】 校長の顔は常に職員から見られている
- 【箴言14】 校長には“決めゼリフ”が必須
- 【箴言15】 校長は大きなものさしでものを言う
- 【箴言16】 校長は“徳川家康”,先陣を切らない
- 【箴言17】 校長は単価の安い仕事をしてはならない
- 【箴言18】 ミスを叱らず,作戦会議を始める
- 【箴言19】 外向けに「静」でいるために頭の中は「動」
- 【箴言20】 校長は顔を出すのが仕事
- 第3章 校長自身の「学校経営力」を高める
- 【箴言21】 校長の仕事は99%がマネージメント
- 【箴言22】 方針はトップダウン,具体はボトムアップ
- 【箴言23】 平時はボトムアップ,有事はトップダウン
- 【箴言24】 常に最悪を想定する
- 【箴言25】 勝利の方程式ではなく,勝負の方程式を
- 【箴言26】 短打でつなぐ職員+長打力のある職員
- 【箴言27】 エース(主砲)を育てる
- 【箴言28】 「安定」をとるか「冒険」をとるか…
- 【箴言29】 四役が同じ考えなら学校が動き出す
- 【箴言30】 仏作って魂入れる
- 第4章 職員の「接遇・法令遵守力」を高める
- 【箴言31】 頭からつま先まで見られている意識を
- 【箴言32】 電話を受ける職員は「学校の顔」
- 【箴言33】 電話をかける職員は「学校の顔」
- 【箴言34】 クレームに対応する職員は「学校の顔」
- 【箴言35】 謝罪とクッション言葉は危機管理になる
- 【箴言36】 不当要求に対応する職員は「学校の顔」
- 【箴言37】 99個◎でも1個×なら致命的な世界
- 【箴言38】 部下を守るためには,厳しさも含まれる
- 【箴言39】 最悪の事態を想起させる
- 【箴言40】 「傾向と対策」ではありませんよ…
- 第5章 教師の「仕事術」を育てる
- 【箴言41】 仕事の早さ=処理の速さ<とりかかりの早さ
- 【箴言42】 仕事で最も重要なのはマネジメント
- 【箴言43】 一回蓋を開けて中身を見る
- 【箴言44】 仕事を細分化し,内容と計画を可視化する
- 【箴言45】 まずは「着手」と手帳に記す
- 【箴言46】 他力本願を避ける
- 【箴言47】 状況によって計画を継続・修正する
- 【箴言48】 仕事量=100点を取る<ミスを取り戻す
- 【箴言49】 自分を信じるか,信じないか…
- 【箴言50】 アウトプットが良質なインプットを導く
- 第6章 次世代リーダーの「組織運営力」を高める
- 【箴言51】 リーダーが余ると,次のことができる
- 【箴言52】 学年主任一人の100点<学年平均80点
- 【箴言53】 組織的対応とはいかなるものかを共有する
- 【箴言54】 8割を教務主任,2割を教頭で指導する
- 【箴言55】 指導するのは教頭,褒めるのは校長
- 【箴言56】 校長は“監督”であり代打は利かない
- 【箴言57】 D・C・Aまでできれば教頭としては一流
- 【箴言58】 教頭一人×20人前<20人×一人前の仕事
- 【箴言59】 校長を補佐する=大いなる提案者となること
- 【箴言60】 校長と教頭で絵(Z軸)を描く
- 引用・参考資料
- あとがき
まえがき
冒頭から私事で大変恐縮なのですが,2014年からの長きにわたる教育行政(米子市教育委員会事務局)勤務を経て,2024年春,実に11年ぶりに米子市立小学校に返り咲くことができました。立場が「教諭」から「校長」へと大きく変わりはしましたが,ようやく念願であった学校現場へと戻ることができたわけです。
さて,2024年3月31日に,その旨を数年ぶりのFacebookにて報告したところ,全国の多くの先生方から,大変ありがたいメッセージをたくさん頂戴しました。その内容もさることながら,「10年間,発信もコメントもほとんどしない私なんかのことを,よくぞみなさん覚えていてくださった」と,いたく感動していると,コメント欄の最下部に控えめに書かれた,次のメッセージに目が留まりました。
「ご栄転おめでとうございます。もう10年になるのですね。また是非お力添えを,どうぞよろしくお願いいたします!」
その送り主こそ,明治図書出版編集者であり,まさに10年前,私のような片田舎の凡人教師の拙い実践が日の目を見ることになった最大の功労者たる及川誠氏その人でした。
「及川さん,ありがとうございます。お待たせいたしましたが,これは11年ぶりのご依頼ですか(笑)。…辣腕編集者のもとで,また書かせていた だけるなら望外の幸甚ですよ」
と,多少色めき立って返信してはみたものの,その刹那,背中に冷や汗が流れるのを感じました。
10年前に出版された処女作,『スペシャリスト直伝! 小学校 クラスづくりの核になる学級通信の極意』(2014)に端を発して,『(同)実物資料編』(2016),『スペシャリスト直伝! 子どもの心に必ず届く言葉がけの極意』(2015)を世に送り出した時と比べ,当時の「教諭」と現在の「校長」という立場の違いもさることながら,当時の「教諭」と10年間の「教育行政職」という相容れない立場の違い,さらに決定的な「(実践の)現場から離れた年数」の違い…など,致命的に境遇が変わってしまった私が,今更何を書けるというのか…。ICTはじめ,日進月歩の授業技術について私のような「浦島太郎」が著したって現場のニーズに応えるべくもない…。かといって,よもや10年間の教育行政経験で得た知見を詳らかにするわけにもならない…。
その一方で,10年ぶりの私の論攷に対して期待をかけてくださる及川氏への感謝の思いを形にしたい,この10年間で得た知見を,公開に耐えうる範囲で全国の先生方へお届けすることで,混沌とする現在の教育界に僅かばかりでも貢献したい,…そう考えているうちに,「そうだ。あくまでも,校長という身の丈に合わない要職を仰せつかった自分への戒めとして,そして,自分自身の今後の成長のために書くことを第一義としつつ,同じような課題意識を持つ先生方への提案という形であれば,私のような者が上梓する道理も立つのではないか」という思いに行き着きました。幸か不幸か,この10年という歳月は,決して学校現場にいただけでは見えない世界や,得られなかったであろう知見を得るには十分な時間でした。何より,私が生涯の師と仰ぐ,米子市教育委員会・浦林実教育長にお仕えする中で,本書のテーマである「人材育成」については,6年間の管理職経験(指導係長1年,学校教育課長4年,教育委員会事務局次長1年)の中で徹底的に叩き込まれ,大変多くの学びを得ました。こうした経験や学びを書籍という形でアウトプットできるのは,教育界広しと言えどそれほど多くはないだろう…,ならばしっかりとした内容でお伝えしていこう。そんな思いに後押しされる形で,重たい筆をとる決意をした次第です。
さて,本書は6つの章で構成しました。前述のとおり,私の拙い管理職経験で得たことの中で,是非ともご紹介したい心の構え・考え方などについて,教育界のみならず,各界の著名人や先達の思想・金言を丁寧に引用しつつ,誠に僭越ながら,「人材育成術」(「箴言」)として,各章10項目,合計60項目提示していきたいと思います。
まず1章において,「人材を育成するための心の構え」として,人材育成に向かうリーダーの心の構えについて管見を述べた後,続く2〜3章において,校長自身の「日々の構え」や「学校経営力」について,まさに自分自身への戒めとして,大切と思われることを列記したいと思います。その上で,4章以降において,「接遇・法令遵守力」,「仕事術」,「組織運営力」などをテーマに,若い教師や(教頭を含む)次世代リーダーを入口として,全ての教職員を育成する上での勘所について提案していきたいと思います。
実はこれらの他にも,例えば「授業力」であるとか,「生徒指導力」であるとか,「校務遂行能力」であるとか,学校の教職員が身に付けるべき内容は多岐にわたります。本来であれば,そうした内容に係る人材育成術についてもご提案したいのですが,紙幅の都合で別の機会に譲ることとします。どうかご容赦願います。
なお,本書においては,人材を育成する行為者を,著者自身の立場である「校長」としつつも,校長職以外の指導的立場にある先生方(教頭,教務主任,学年主任,○○主任,○○リーダーなど)に読んでいただいても堪えうる内容を想定していることから,「リーダー」「管理職」「上司」といった用語を並列的に扱うこととします。したがって,読者のみなさんとは異なる立場の用語であったとしても,必要に応じて,ご自身の立場に読み替えていただければ幸いです。
団塊の世代の大量退職や,「ブラック」の一言で教職を忌避する社会全体の風潮がある中,教育現場における人材育成はもはや待ったなしの状況にあります。そんな今だからこそ,私たちは,単に人材を確保することに留まらず,貴重な人材(=財)一人ひとりが伸びて輝くように育てていかなければなりません。本書は,そのような観点から,ついつい陥りがちな人材育成の落とし穴を反面教師として取り上げつつ,あるべき人材育成の勘所を,カテゴライズして提示しようという試みなのです。
本書が,志ある全国の先生方のお役に少しでも立ち,日本全国の多くの先生方,ひいては子どもたちの笑顔に寄与することができるならば,それは望外の喜びです。
/西村 健吾
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- 明治図書