- はじめに
- 第1章 令和の日本型教育が目指す子供の学びの姿
- 「個別最適な学び」を創る主体は誰か
- 「協働的な学び」の根底にあるもの
- 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体化に向けて
- 第2章 「個別最適な学び」「協働的な学び」と「主体的・対話的で深い学び」
- 「主体的な学び」につながる「個別最適な学び」
- 1 子供の行為を励ます他者の存在
- 2 特別支援教育からみた「個別最適な学び」の実現の可能性
- 「対話的な学び」と重なり合う「協働的な学び」
- 1 子供の言葉がつながるということ
- 2 交流を促進する教育のデジタル化
- 「個別最適な学び」と「協働的な学び」が向かう先は「深い学び」
- 1 再考「深い学び」
- 2 国語科が目指す「深い学び」と「個別最適な学び」「協働的な学び」
- 第3章 「個別最適な学び」「協働的な学び」の文脈を創る
- 学びの文脈を創るとは
- 学びの文脈を可視化し見える化する“Learning・Mountain”
- 「個別最適な学び」「協働的な学び」の文脈を創る7つの視点
- 第4章 「個別最適な学び」「協働的な学び」の文脈を創る実践プラン
- 学級づくり
- 事例1 みんながリーダーでフォロワー
- 事例2 「ハグルマ」としてかみ合う学級づくり
- 授業づくり
- 事例3 道徳:“なりたい自分”へと向かう探究への導き
- 事例4 体育:協働的な学びによる個人差への対応
- ワンポイント情報 学習評価は“高跳び”のイメージ
- 事例5 外国語:ルーブリックをクラスからマイ(自分)へ
- 学校づくり
- 事例6 「学びの山登り」によるカリキュラム・マネジメント
- 事例7 学力向上を図る学校力・組織力
- 事例8 メタ認知を働かせた学びの調整
- 事例9 Learning・Mountainで学びのプランニング
- 引用・参考文献
- おわりに
はじめに
令和3年1月の中教審答申(以下,R3答申という。)において,令和の日本型学校教育の構築を目指す方向が示された。この中で,子供の学びの姿として「個別最適な学び」,「協働的な学び」の実現を図るために,学習活動の充実の方向性を改めて捉え直し,これまで培われてきた工夫とともにICTの新たな可能性を指導に生かすことで,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた更なる授業改善の必要性を指摘している。教育に携わる者には,現在から未来にわたって必要となる資質・能力を見据えながら,新しい時代を切り拓く子供たちを育成していく責務がある。
本書の主意は,こうした時代の潮流の中,超スマート社会(AIやロボットなどの技術を取り入れて社会的課題を解決すること)の到来に対応するGIGAスクール構想の実現の方途について語るものではない。むしろ,時代が変わっても大切にすべき教育の不易の側面に配慮しながら,今,そしてこれからの授業を「個別最適な学び」と「協働的な学び」の視点から問い直すことに主眼がある。そして,これら二つの学びの一体化が,「主体的・対話的で深い学び」の実現にどのように関連付くのかを整理する狙いがある。
本来,学校教育をつかさどる教師には教えたいことがある。それらを上から下へと流し込むように教えることもできるが,子供自身が学びたいことに変えていこうと指導法を創意工夫し続けている。それは常に試行錯誤の連続である。「『個別最適な学び』『協働的な学び』」の主語は,子供。教師が何を教えたのか,授業で何を成し得たのかより,子供が何を学んだのか,学習を通して何を成し得たのかが重視されるべきである。教師は,主語ではない。
書名の「学びの文脈」とは,「教師が教えたいことを,子供が学びたいことに変えること」という理念を根底に据えている。「学び」とは,その目的や動機,意図,取り巻く他者,空間や時間,状況や条件等の要素が複雑に絡み合いながら展開する営みである。それらを「文脈(コンテクスト)」と呼ぶこととする。時代の大きなうねりの中で教師自身が文脈を意識しながら子供と共に学びを創ることが今後一層求められる。「学びの文脈」を創ることに意を用いることは,これからも変化を重ねていく令和の日本型学校教育に対応する礎となる。R3答申のタイトルの冒頭にある,「全ての子供たちの可能性を引き出す」ために,教師が教えたいことを明確にすることは当然として,子供の視座に立って学びをデザインすることの重要性を説く。
第1章では,令和の日本型教育における「子供の学び」の姿を読み解く。本書では,義務教育段階の子供をめぐる学びに焦点化した内容とする。「個別最適な学び」と「協働的な学び」が打ち出された背景を探るとともに,未来にわたって見失ってはならない基本的な考え方を整理する。
第2章では,「個別最適な学び」「協働的な学び」と「主体的・対話的で深い学び」とを関連付けて検討する。教師が個別最適な状況を創り出し,それを提供するだけでなく,多様な子供の側に立って「個別最適な学び」と「協働的な学び」を支える重要な観点に注目し,それらの実現へアプローチする。
第3章の,「『個別最適な学び』『協働的な学び』の文脈を創る」とは,一体どうすることか,何がポイントとなるかを示す。子供と共有する学びのプラン「Learning・Mountain」(単元の構想図)の活用を提唱し,7つの視点による「個別最適な学び」「協働的な学び」の文脈を創る授業づくりの方向を示す。
第4章では,「『個別最適な学び』『協働的な学び』の文脈を創る実践プラン」として,筆者が関わる全国の学校や地域の中から確かな成果を収めている学級・授業・学校づくりとして秀逸な事例(計9本)を紹介する。これらのほか,ダウンロード用の事例(計9本)も用意しているので,併せて参考にしてほしい。
本書がR3答申を踏まえた今後の学校教育の充実と改善に少しでもお役に立てば幸甚である。「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた,「『個別最適な学び』『協働的な学び』の文脈を創る」学級・授業・学校づくりに寄与したい。
2022年6月 /樺山 敏郎
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内容 | ファイル名 | サイズ | |
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実物資料一式 | worksheet.zip | 8,401KB |
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- 明治図書
- 樺山先生の講演を拝聴し、この書籍を読みました。二学期にさっそくLearningMountain実践してみようと思います。2024/8/26りんご
- 樺山先生の講演を聞くにあたって購入しました。理解が深まりました。2024/3/11中堅教諭
- このようなテーマは、関心があるので、どんどん出版して頂きたいです。2023/8/2640代 教育関係機関勤務
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- 今日的なテーマで大変参考になる。2022/8/460代・嘱託指導主事