- まえがき
- 第1章 子どもの心を開く教師になるために
- 1 子どもは「心を開く」ものなのか
- 2 心は推し量るしかないもの
- 3 「心を開く」とは受け止め方のこと
- 4 「心を開いた」と思えるとき
- 5 心を開いてもらうにはまず自分から
- 6 心を開いてもいいなと思える存在になる
- 7 そのとき、あなたはどう「聞く」のか
- 8 聞いて、話して、結びつきを深める
- 第2章 子どもの心を開く「聞き方」の技術
- 基礎・基本
- 1 子どもが心を開くための条件
- 2 心を開きにくい子もいるということ
- 3 子どもが思わず話したくなる状況設定
- 4 子どもが話し出したらまずすること
- 場をつくる技術
- 5 万能薬となる「笑顔」
- 6 自然と言葉を生み出す「安心・安全なクラス」
- 7 話してもいいんだと思える「教師の振る舞い」
- 8 子どもが思わずアクションを起こす「つぶやき・独り言」
- 9 気持ちを和らげる「ホワイトボード」
- 10 友達同士のおしゃべりに参加する「語り場・しゃべり場」
- 11 気づきを生む「席の交換」
- 12 今の自分に気づいてもらえる「人生グラフ」
- 13 その子の背景に語りかける「兄弟の話」
- 14 子どもの今を語り出す「日々のつぶやき集め」
- 15 話のきっかけを生む「構成的グループエンカウンター」
- 言葉を引き出す技術
- 16 その子だけの心の風景を知る「工作」
- 17 話を引き出す「コミック会話」
- 18 思わず言葉が出てくる「軽運動」
- 19 他者の言葉を借りて考える「ロールプレイ」
- 20 操作の過程で言葉がこぼれる「ブロック工作・箱庭」
- 21 子どもの達成感を言葉に変える「ビー玉集め」
- 22 話せない子どもの心を補う「付箋紙」
- 23 言葉ではない言葉を生み出す「気持ちの数値化」
- 24 次の話が生まれる「マンダラート」
- 25 言葉のキャッチボールが生まれる「アナログゲーム」
- 26 会話にうるおいをもたらす「好きなもの・ことの話」
- 27 次の言葉を紡ぐ「文章完成法」
- 28 聞いているよと伝える「アイコンタクト」
- 29 会話のテンポをつくる「オウム返し」
- 第3章 ケース別でよくわかる教師の「聞き方」
- ケース1 家ではよく話すのに、学校では話さない子
- ケース2 いつも職員室の入り口で待っている子
- ケース3 吃音の子/特定の音が言いづらい子
- ケース4 自分のことばかり話し、周囲から疎んじられがちな子
- ケース5 気持ちが見えにくい、伝わりにくい子
- ケース6 発想が豊かで自由奔放な子
- ケース7 主張が過ぎる子
- ケース8 泣きながら登校してくる子
- ケース9 かんしゃくを起こす子/すぐに爆発する子
- ケース10 長期の休みから久しぶりに登校した子
- ケース11 表情があまり変わらない子
- ケース12 みんなの活動に関わりにくい子
- ケース13 いつも家族の世話の話をする子
- ケース14 何を考えているのかがわからない子
- ケース15 みんなのいる教室に入れない子
- ケース16 「朝ご飯を食べていない」と言う子
- ケース17 忘れ物がとても多い子
- ケース18 授業で自分の意見をなかなか言えない子
- あとがき
- 参考文献
まえがき
「先生」というものを自分なりに続けてきた中で、いつも不思議に感じていたことがあります。
それは、授業内容も特に変わったところはないし、新しい手立て、際立った手立てをとっているようにも見えないけれど、なぜか子どもも、そして先生自身も、生き生きとしていて、楽しそうなクラスが存在するということです。そんなクラスをちょっぴり羨ましいなと思っていた私は、実際に、そのようなクラスの様子を見せてもらったこともあります。しかし、そのようなクラスをつくるポイントは、当時の私にはあまりよくわかりませんでした。
ただ、「聞く」というテーマの本を執筆するにあたり、改めて考えてみたことがあります。なるほど、私たちは新しい技術、新しい方法を求めます。今もまさに教育の場は、大きな変革の中にあります。そのためどうしても、「先生」である自分が何をするか、何を話すかという「アウトプット」に注目しがちです。
もちろん私もそうでした。ですが、それなりに年代を経た今、クラスの経営について随分と自信がもてるようになった自分と、以前の自分とは何が違うのだろうと自問しました。
行き着いたのは、以前の自分よりも「聞く」ということに重きを置いているということでした。あまり急がないで、その子たちの話に耳を傾け、しっかりと聞けているのではないかということなのです。
その気づきについて、改めて、自分のこれまでの実践と合わせて文章にしてみました。この「聞く」という教育技術に、教職としての早い段階で気がつくことができれば、もっといろいろな取り組みができたのかもしれません。しかし反対に、それなりに年代を経なければ、理解しづらい領域でもあるのかもしれません。
ですが、この「聞く」というポイントの大切さを、これから教職を始められる方々、そして今まさに「学校生活の中での教育的支援・心理的支援」を懸命に進められている方々には、ぜひ知っておいていただきたいと思い、今回筆をとった次第です。
学校、そして教室という「フィールド」を共にする者として、少しでも何かお役に立てれば光栄です。
二〇二三年五月 /渡邊 満昭
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- 明治図書