- はじめに
- 第1章 クラスのアセスメントとユニバーサルデザイン
- 1 クラスの子どもたちをアセスメントする―友達関係
- 2 クラスの子どもたちをアセスメントする―学習状況
- 3 状況に応じてクラスをユニバーサルデザインする
- 第2章 気になるあの子とユニバーサルデザインのクラスづくり・授業づくり
- クラスづくり
- [低学年]1 使ったものを元に戻すことや身の回りの整頓ができない子のいるクラスで行う環境整備
- [低学年]2 気に入らないことがあると激高する子のいるクラスでのほめ方・しかり方
- [低学年]3 友達がどう思うかをいつも気にして,自分から行動ができない子のいるクラスで自尊感情を高める工夫
- [中学年]4 「やってもしょうがない」と言う子のいるクラスでみんながやる気になるほめ方
- [中学年]5 友達をいじめる子のいるクラスでの仲間づくり
- [中学年]6 激しく教室を歩き回る子のいるクラスでの仲間づくり
- [中学年]7 担任との関係がこじれてしまった子のいるクラスで落ちついた生活を送る工夫
- [高学年]8 暴言や言葉遣いが悪い子のいるクラスでの言語環境づくり
- [高学年]9 友達との約束や,学校のきまりが守れない子のいるクラスで行う日常生活場面の工夫
- [高学年]10 友達の注意を受け入れられない子のいるクラスで行うコミュニケーション指導
- [高学年]11 いじめられた経験がある子のいるクラスでの仲間づくり
- [高学年]12 王様のように振る舞い友達から怖がられている子のいるクラスでの仲間づくり
- 授業づくり
- [低学年]1 全体の指示に従えない子のいるクラスで行う一緒に活動できる指示
- [低学年]2 思ったことをすぐ口に出してしまう子のいるクラスでの授業の進め方
- [低学年]3 勉強が嫌いな子の多いクラスでの授業づくり
- [低学年]4 個別支援の必要な子のいるクラスでの授業の進め方
- [低学年]5 聞くことが苦手な子のいるクラスで行う発言・発表の工夫
- [中学年]6 学力差の大きいクラスでどの子も参加意識を得ることができる授業の流れ
- [中学年]7 学力差の大きいクラスで学力を補填するための宿題の出し方
- [中学年]8 指示がないと学習が進められない子のいるクラスでの授業の見通しのもたせ方
- [中学年]9 読み取る力や書く力が不足している子のいるクラスでの教材の工夫
- [高学年]10 授業中の基本的習慣が身についていない子のいるクラスの授業ルール
- [高学年]11 粘り強く取り組むことを嫌う子のいるクラスでの集中・継続できる授業
- [高学年]12 板書を写すことができない子のいるクラスでの板書
- [高学年]13 自分の考えが伝えられない子のいるクラスで行う意見を引きだす工夫
- [高学年]14 自分のやり方でしか取り組めない子のいるクラスで行う指示
- [高学年]15 グループ学習に参加できない子のいるクラスでのペア・グループ学習
- 参考文献・参考教材
- 執筆者紹介
はじめに
■気になるAさんを巻き込むクラスの力
私が通常の学級で1年生の担任をしていた時のことです。
学期途中に,併設されていた特別支援学級からダウン症のAさんが転入してくることになりました。特別支援学級から通常の学級へという,当時はあまりない転籍でした。Aさんの安全は確保できるだろうか?クラスの子どもたちとコミュニケーションはとれるだろうか?生活や学習の特別な支援がクラスの中で行えるだろうか?等々不安もありました。
私はAさんの担任でもありクラス30人の担任ですが,当初はとにかく気になるAさんのための毎日でした。しかしクラスの子どもたちの力は私を上回りました。それは,Aさんと一緒に遊びたくて,クラスの子がAさんの言葉を聞き取ろうとし,「先生!Aさんも入れる1組ルールでやろう。」とAさんを巻き込み,Aさんもクラスの子どもたちも,ともに成長していく姿でした。もちろん,葛藤もあります。いろいろな不満も出てきます。簡単にいかないことも多いのですが,それをないがしろにせず向き合っていくプロセスはAさんを巻き込むクラスづくりにつながりました。子どもたちはクラスで一日の多くを過ごします。このクラスが,気になるAさんにも,クラスの子にも有意義な場になるためには,Aさんにはどうしたらいいか。クラスではどうしたらいいか,Aさんはどう思い,クラスの子はどう思っているかを考えた学級経営が必要です。これが長い間温めてきた『気になるあの子もみんなも輝く!クラスと授業のユニバーサルデザイン』発刊のきっかけです。
■あなたのクラスのユニバーサルデザインに
「ユニバーサルデザイン」は聞いたことがない,という人がいないほど教育現場でも浸透してきました。しかし,ユニバーサルデザインの「みんなにやりやすく・わかりやすく」することは学習内容そのものの質を下げたり,安易な方法に流れたりして,子どもたちから考えたり試行錯誤したりする経験を奪うことではありません。また形式だけまねすることでもありません。
学校訪問をしてみると,学校中どのクラスも同じ教室環境になっていることがあります。もちろん,それが最適であることもあるでしょう。しかし「それはうちのクラスの子に合っているかな」と考えていただきたいのです。
ユニバーサルデザインの授業やクラスづくりは,「この子たちにわかりやすく過ごしやすい」ことを志向するのですから,クラスを構成する一人一人が違えば隣のクラスと違ってくることもあるのです。そしてそれは担任の的確な子ども理解の上にこそ成り立ちます。ぜひクラスの子どもたちに合ったユニバーサルデザインを実践してください。
■この本は
本書は『気になるあの子もみんなも輝く!クラスと授業のユニバーサルデザイン』ですから,Aさんとクラスを常に視野に入れています。Aさんの様子とともに,今クラスはどういう状況か,Aさんはクラスの中でどういう存在なのかも把握します。やりにくさのあるAさんですが,困っていることはAさんだけでなくクラスにもあるかもしれません。Aさんのやりにくさへの対応にはクラスの協力も大切です。さまざまな視点から分析し対応につなげる様子も参考にしていただければと思います。Aさんもクラスの子どもたちも,わかりやすい授業,楽しく過ごしやすいクラスに近づけば,それはまさしくインクルーシブ教育の時代の学級経営です。
2018年4月 編著者 /漆澤 恭子
-
- 明治図書
- 子どものタイプ別に、そのクラスの様子も含めた分析と対応が書いてあるので、わかりやすかったです。2019/3/2340代・小学校教員