- はじめに
- 第1章 不器用な子どもたちの手の感覚と運動を育む
- はじめに
- 発達的視点を持ち土台からの支援
- 器用さを育むための要素
- 遊びの企画力を意識した指導で柔軟性のある力を育もう
- 程よい挑戦のために工夫をしよう
- Category
- 第2章 手の感覚と運動を育む遊び
- 1 感覚チャージ遊び――手は大切な探索器官。様々な感触に慣れ親しむ
- 遊びのポイント
- 苦手さチェック
- (1) スライム遊び
- (2) 泡遊び
- (3) 豆・マカロニ・ビーズ遊び
- (4) フィンガーペイント
- (5) 室内砂遊び
- (6) お湯ぶくろ
- 2 カラダ土台遊び――手の安定性・固定性を育む
- 遊びのポイント
- 苦手さチェック
- (7) 握りしめ遊び
- (8) 四つ這い・手押し車
- (9) 組み合わせブロック
- (10) 壁にデザイン
- (11) ハンマートイ
- (12) 鉄砲遊び
- (13) 新聞まるめ
- (14) キッチングッズ
- (15) 押し相撲
- (16) ブロアー
- (17) 重たい物運び
- (18) つぶし遊び
- 3 手のこなし遊び――指先・道具を自在に使いこなす力を育む
- 遊びのポイント
- 苦手さチェック
- (19) この指こぶた
- (20) 穴開け・握りつぶし
- (21) 5指おはじき
- (22) 指の手遊び
- (23) 手のまね遊び
- (24) 指歩き
- (25) 手袋人形
- (26) サイコロまわし
- (27) CDまわし
- (28) 魚の醤油さし
- (29) 洗濯バサミ
- (30) トング
- (31) コイン
- (32) 財布遊び
- (33) ペンの玩具
- (34) ピン・ビーズ
- (35) 大工さん
- 4 慎重遊び――感度のよい感覚と力加減を身につける
- 遊びのポイント
- 苦手さチェック
- (36) 感触探し
- (37) ブラックボックス
- (38) 紐の道
- (39) 目隠しダーツ
- (40) ビー玉カーリング
- (41) 目をつぶって型はめパズル
- (42) ねんど遊び
- (43) シールマッチング
- (44) スピログラフ定規
- (45) 目隠しボックス
- (46) 紙風船・風船玉
- (47) スプーン遊び
- 5 まとめ・つなぎ遊び――両手の協調と動作の連続性を育む
- 遊びのポイント
- 苦手さチェック
- (48) 手遊び
- (49) ボール転がし
- (50) 包丁遊び
- (51) フープまわし
- (52) ビー玉迷路,洗面器ボールまわし
- (53) 両手グルグル書き,点打ち
- (54) 紐通し,チーズの穴
- (55) コップピラミッド
- (56) 順番にコップ重ね
- (57) 両手で持ち上げ
- (58) チョキ・グー・パー
- (59) お手玉
- (60) リズムのまねっこ(楽器遊び)
- (61) ビー玉キャッチ
- (62) 竹とんぼ
- (63) あやとり
- (64) 指編み
- (65) ぶんぶんごま
- (66) 風船ヨーヨー
- 第3章 不器用な子どもたちへの指導の実際
- 手の感覚と土台を育む
- (1) 自分の手がわかりにくい子
- (2) 違いがわかりにくい子
- (3) 力加減がわかりにくい子
- (4) 腕や手首の安定性が未熟な子
- (5) 両手動作が苦手な子
- (6) 順序立てた予測動作が苦手な子
- 全身の感覚と土台を育む
- (7) 姿勢の悪い子
- (8) 転びやすい子
- (9) 身のこなしが悪い子
- (10) 手足の協調が苦手な子
- (11) 順序立てた予測動作が苦手な子
- (12) 自分で遊びを考えることが苦手な子
はじめに
箸を上手に使えない,鉛筆の持ち方が違うなど,学校や家庭生活の中でお子さんの不器用さが気になることがあります。このようなとき,その動作を繰り返し練習してみたり,補助具を活用してみたりすることがあります。しかし,「何かができるようになる」ということは,その動作を支える様々な手の機能の発達が成熟することによって可能となるのです。このプロセスを踏むことなく一見得られたように見える技能は,時に断片的な技能であったり応用がきかない技能にとどまってしまっていたりすることがあるかもしれません。
本書では,手の不器用さや困りごとに対して,直接的に練習するのではなく,その苦手さの関連する要素に間接的に働きかけ,苦手さの背景にある土台の力から育もうとするものです。そして,その方法として,できるだけ訓練風ではなく,遊びを通して育むことを目指しています。遊びを活用する支援のメリットの一つは,生活上の苦手さに直面することなく,遊びゆえに気楽に取り組むことができるということがあります。苦手さを自覚している子どもたちは,少し緩い雰囲気の中で学ぶ方がよいことが多いようです。そして,周囲が不器用の改善といった見返りをあまり求めずに一緒に楽しんでいくことで,こっそりと能力は身についていくこともあるのです。
「何かができるようになること」これはとても大切なことです。しかし,それ以上に,「自分の手の能力に自信を持ち,自分の手を使って意欲的にチャレンジし,自信を持って自分の世界を広げていけるようになること」が大切です。本書が,そのような子どもの力を育むことの一助となれることを,心から願っています。
最後に,本書の出版にあたり,この機会を与えてくださった明治図書出版佐藤智恵氏,写真撮影にご協力いただいたプレイジム作業療法士田中涼子さん,そして執筆を支えていただいた太田真樹子さんに感謝いたします。
平成29年8月 著者 /太田 篤志
-
- 明治図書