- はじめに
- 国語の授業づくりに役立つ「技」を身につけ,確かな「言葉の力」をはぐくもう
- 第1章 国語の授業をつくる「技」を学び,使いこなそう
- 筑波大学附属小学校 /二瓶 弘行
- @ 「『言葉の力』をはぐくむ」とは?
- A 生きて働く「言葉の力」
- B 国語の授業をつくる「技」を学び,使いこなす
- 第2章 今日から使える国語授業づくりの技66
- 【教材・教具】
- 積み上げ,交流に生きるA4用紙活用の技
- グループ学習が充実するミニ黒板活用の技
- 話し合いを活性化するシート状ホワイトボード活用の技
- 子どもにわかりやすく示すICT機器の活用の技
- 漢字の間違いを減らす練習シート活用の技
- より多くの教材や資料を集める技
- 【発問・指示】
- 子どもを物語に夢中にさせる技
- 物語の出来事を正しくとらえさせる技
- イメージを深め,作品の心に迫らせる技
- 子どもの気づきを引き出す「とぼけ」の技
- 学習課題を子ども主体に近づける技
- 子どもの「だって,…!」をどんどん引き出す技
- 【指名・発表】
- どの子にも自信をもたせ,発表しやすくする技
- 授業を戦略的に進める,反応予測+机間指導+意図的指名の技
- よく聞き,よく発言する子どもを増やす技
- 発表の不安を解消する技
- 自分の立場を明らかにさせる技
- 【板書】
- 1本の軸を生かして話し合いを構造的にまとめる技
- 縦書き板書をまっすぐ整えて書く技
- 学習の見通しをしっかりもたせる技
- 振り返りや深い理解を促す示し方の技
- 授業のコンセプトに応じた使い分けの技
- 話し合いの拡散や混乱を防ぐ技
- 授業がめあてから逸れることを防ぐ技
- 【ワークシート】
- 子どもに思考力をつける構造化の技
- 自分の好きな本のよさを効果的に伝えさせる技
- ルーブリックを活用して振り返りの質を高める技
- 書く意欲を高める「ご本人登場」の技
- 苦手な子にもあきらめずに取り組ませる技
- 【ノート指導】
- どの子にも確実にノートをとらせる技
- 大切なことをスッキリ書き残させる技
- 子どもに自分の成長を実感させる技
- 授業を振り返って思考を整理させる技
- ノートを思考のツール化する技
- 自分の考えをすっきり整理し,深めさせる技
- 【ペア学習】
- 意見交換をガッチリ噛み合わせる技
- ペアをどんどん変えながら学習を深めさせる技
- 相手の反応を促しながら意見を述べさせる技
- 話を端的にまとめる力を身につけさせる技
- 子どもが自然に話したり,聞いたりしたくなる技
- 話し合いを可視化し,相手を尊重する態度をはぐくむ技
- 頭を使いながら楽しく音読をさせる技
- 【グループ学習】
- フェーズとターンで,話し合いにテンポと深まりを生み出す技
- より主体的に話し合わせる技
- 発表,話し合いを盛り上げる技
- 話し合いも個人の思考も深めさせる技
- 自然と話し合いたくなるホワイトボード活用の技
- 【学習環境】
- 身の回りの漢字に目を向けさせる技
- 認めたり認められたりが習慣化する技
- 子どもを本に向かわせる技
- 日常的に言葉に触れさせる技
- 学びの履歴を残し活用できるようにする技
- 校内放送を通して聞き手意識を育てる技
- 思わず詩を読み書きしたくする技
- 【宿題・テスト】
- 脳に効く新出漢字習得の技
- 短作文を書く力を底上げする技
- 宿題が楽しみになるクイズづくりの技
- よい取り組みを学級全体に広げる技
- 成績を素早く処理する技
- 単元末テストを即時に返却するシステムづくりの技
- 【すきま時間】
- 言葉を楽しく,たくさん身につけさせる技
- 言葉の関係の知識を楽しく増やす技
- 漢字の知識を楽しく増やす技
- 詩の世界をイメージする力を伸ばす技
- 言葉遊びを通して書く力を伸ばす技
- 文法力を鍛える「主述モンスター」の技
はじめに
国語の授業づくりに役立つ「技」を身につけ,確かな「言葉の力」をはぐくもう
国語の授業で育てるのは,言うまでもなく「言葉の力」です。読む力,書く力,話し聞く力,言葉にかかわる知識・技能。そのすべては,あらゆる学びの根幹となる学力。まさに,生きる力そのものです。
毎日必ず時間割に組み込まれている国語の授業。その1時間1時間の学習を通して,子どもたちに確かな「言葉の力」をはぐくんでいるはずです。
例えば,金子みすゞの「いぬ」という詩があります。
「この詩を学習材にして,国語の授業を構想せよ」。もし,こんな課題を与えられたら,私たち教師は様々に思案するでしょう。
「どんな学習材で」
「どんな『言葉の力』をつけるため」
「どんな導入で」
「どんな発問・指示で」
「どんな学習活動で」
この課題は,文学作品であろうと,説明文であろうと,ある文章を学習材にして十数時間の単元を構想する際にも,同じ重さをもつ課題となります。
いかなる「言葉の力」をこの単元を通して獲得させるのか。そのために,いかなる言語活動を組織するのか。さらには,子どもたちが学習を主体的に受け止められるように,いかにして導入と終末を仕組むか。
さて,金子みすゞの「いぬ」。
従来の詩を学習材にした読解指導では,場面の様子(情景)や人物の気持ちを言語表現から想像することが中心。したがって,この詩の最終行「ふっとさみしくなりました」における話者の心情が中心課題になるでしょう。
授業の導入で音読と視写。そして,一連,二連と詳細な読解を展開して,終末段階で第三連の話者の心情を話し合いによって理解する。そして,まとめとして,各自の音読。そんな1時間の授業がすぐに頭に浮かびます。
けれども,このような授業構成では,子どもたちは,この詩を読解できても,次の詩を自ら読み進める読みの力は獲得できません。教師があらかじめ用意した,ある妥当な解釈を求める「正解主義」に陥り,子どもたちが自分の読みをつくり,表出し,仲間と交流する楽しみを奪いかねないのです。
詩を学習材とした授業で,内容解釈とともに教えるべきは,表現技法です。一編の詩の世界は,どのように言葉が吟味され,表現技法を駆使して創造されたのか。それを学ぶことは,他の詩と出会ったときに自らの読みの創造に生かされ,また,自ら詩をつくる際の表現に生かされます。
詩の内容解釈と表現技法の学習を1時間の授業の中心に置いたら,今度はどのような言語活動を構成するのかが課題になります。
私は,自らの読みの創造と表現を関連づける展開を考え,そのための導入段階を検討します。どうすれば,子どもたちにこの詩の学習を自分のものとして受け止めさせることができるかを工夫しながら,授業を構想するでしょう。
本書は,そういった国語の授業づくりに役立つ「技」を,熱意あふれる実践者たちが持ち寄ってつくったものです。自らの実践を基に,十分に吟味された優れた提案ばかりです。
そのジャンルは,「教材・教具」「発問・指示」「指名・発表」「板書」「ワークシート」「ノート指導」「ペア学習」「グループ学習」「学習環境」「宿題・テスト」「すきま時間」と多岐にわたっています。きっと,日々の授業をつくるための大きな力となるはずです。
明日も,教室では子どもたちが待っています。彼らに,確かな「言葉の力」をはぐくんであげることを,教師ならだれもが願っています。
そんな先生たちに役立てていただければ幸いです。
2017年2月 /二瓶 弘行
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