国語教育シリーズ
小学校 文学教材を深く読むための国語授業デザイン
―3ステップで主体的・対話的な学びを実現する―

国語教育シリーズ小学校 文学教材を深く読むための国語授業デザイン―3ステップで主体的・対話的な学びを実現する―

インタビュー掲載中

たしかな教材研究から考える、深く学ぶための授業づくり

教材の新しい切り口を探り出会う・授業者自身が教材を読む力を鍛える・子どもが夢中になって読む学習プロセスをデザインする――3つのステップで超定番教材を再分析。骨太の教材研究あればこその多様で力のつく学習方法と言語活動を提案する。


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ISBN:
978-4-18-235325-3
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 216頁
状態:
在庫僅少
出荷:
2024年11月26日

目次

もくじの詳細表示

はじめに
本書の読み方
お手紙
ステップ1 教材と出会う
ステップ2 教材を読む
1 かえるくんまで悲しいのはなぜ?
2 かえるくんのお手紙は、素晴らしい?
3 どうしてかたつむりくんにお手紙を頼んだ?
ステップ3 授業をデザインする
1 「ナンセンス」と「ユーモア」の違いは?
2 「単元の目標」を設定する
3 子どもたちがユーモアを感じるのはどこ?
4 学習プロセスをデッサンする
ちいちゃんのかげおくり
ステップ1 教材と出会う
ステップ2 教材を読む
1 はじめのかげおくりって、楽しいの?
2 お母さんがぽつんと言ったのが、どうして聞こえたの?
3 助かるはずの場面がいくつもあったのに、なぜ助からなかったの?
4 最後のかげおくりの不思議なところは?
5 「ちいちゃん」でなく、「小さな女の子」と書いたわけは?
6 どうして「それから何十年」後の場面があるの?
ステップ3 授業をデザインする
1 なぜ読むの?
2 読みたくない子への手立て
3 「単元の目標」を設定する
4 学習プロセスをデッサンする
白いぼうし
ステップ1 教材と出会う
ステップ2 教材を読む
〈現代民話としての「白いぼうし」〉
1 なぜ、松井さんは、「ふしぎな世界=隠れ里」に出会えるの?
2 「白いぼうし」と、他の七作品の作品構造は同じ?
3 「ふしぎな世界=隠れ里」の戸を開ける「鍵」は?
4 「ふしぎな世界=隠れ里」への「通路」は?
5 なぜ、ちょうは、女の子に変身して松井さんの車に現れたの?
〈都市再生譚としての「白いぼうし」〉
1 「菜の花横町」は、当てずっぽうに言った町名なの?
2 ちょうは、どうして女の子の姿をして松井さんのもとに現れたの?
3 松井さんは、どうして白いぼうしに気づいたの?
4 夏みかんは、どんな働きをしているの?
5 白いぼうしは、「やさしさ」の象徴なの?
ステップ3 授業をデザインする
1 教材の解釈・分析と授業での読み
2 「単元の目標」を設定する
3 学習プロセスをデッサンする
ごんぎつね
ステップ1 教材と出会う
ステップ2 教材を読む
1 「ごんぎつね」の成立と教科書掲載の歴史
2 「ごんぎつね」に対する批判
3 新美南吉の物語創作観
4 「ごんぎつね」の基本構造
5 基本構造の変型
6 新しい読みを拓く
1 悪戯者のごんが、穴の中であんなにも想像をたくましくしたのはなぜ?
2 なぜ、ごんは死ななければならなかった?
3 「村の茂平といふおぢいさんから聞いたお話です。」という設定にしたのはなぜ?
ステップ3 授業をデザインする
1 授業の方向性を探る
2 教室を劇場空間に
3 「単元の目標」を設定する
4 学習プロセスをデッサンする
やまなし
ステップ1 教材と出会う
ステップ2 教材を読む
1 「青い幻灯」という設定にしたのは、なぜ?
2 クラムボンの正体とは?
3 なぜ五月と十二月なの?
4 なぜ「やまなし」という題名なの?
ステップ3 授業をデザインする
1 実態を知り、方向性を探る
2 「単元の目標」を設定する
3 学習プロセスをデッサンする

はじめに

 学校という組織を離れて、余った暇な時間を生きるようになったのだが、そう書いて不思議な思いにとらわれている。というのは、「学校」をあらわす英語schoolは、ギリシア語のschole(余暇)にさかのぼるそうなのだ(今里智晃『英語の語源物語』丸善ライブラリー 一九九七年)。え? 学校って余暇を過ごす場所だった?

 都市国家間の戦争に明け暮れた古代ギリシア人は、戦争のない束の間の余暇を思索や討論をして過ごした。こうした〈余暇=思索や討論をする時間〉という背景があって、のちにラテン語でschola(学校)になり、それが英語に借用されたというのである。

 思索や討論とは、まさに「アクティブ・ラーニング」の元祖みたいなものだが、彼らは学びのためではなく、暇つぶしにそれを行ったわけだから、ラテン語も「学校」などとせず、「暇つぶし溜り場」とでもしてくれていたら、schoolの雰囲気も、今とはだいぶ違うものになっていたかもしれない。


 ところで、古代ギリシア人のように時間のたつのも忘れて夢中になることができたら、それはもう言うことなしであるが、残念ながら思いつかない。といって、欠伸ばかりしていたり、日がな一日ボーッとしたりしているのも退屈だから、まずは、部屋の片づけ作業を行うことにした。

 すると、これまで折に触れて書き留めてきた文学教材に関する拙論たちが、押し入れの小さな段ボールの中で身を潜めていた。それらは、人の目に触れることもなく、やがて埋もれさってしまうだろう。ふっと恐竜の足跡の化石のことが脳裏に浮かんだ。気の遠くなるような年月、それらは誰かに見つけられ、掘り起こされることを待っていたのだろうか。そう思ったら胸がキューンとしてきて、私の足跡の化石たちも掘り起こしてやりたくなった。そして、年月のほこりをクリーニング作業で取り除き、学校現場の先生方や教師を目指している学生さんたちに読んでいただけるものに仕上げたいと思い立った。

 願いを受けとめてくれた編集部からの親身のこもったアドバイスは、されどシビアなものだった。

 読者は、化石など求めていません。教材との出会いを大切にした教材研究の仕方や、そこで検討したことが反映される授業デザインの方法、また、授業に落とし込むときに、どのような言語活動を通して課題解決に当たるのかという具体的な手法、そうしたことを知りたいのではないでしょうか。

 これじゃあ、まるっきり学校現場の最前線に身を置くに等しいではないか! え? 学校は余暇を過ごす場所……。がぜん闘志がわいてきた。ならば、足跡の化石の掘り起こしではなく、もう一度、教材と新しく出会って対話し、子どもたちが息づく授業をデザインしてみようじゃないか。


 それからは、時間のたつのは分かったが、夢中になれる日々が続いた。そして、それを支えてくれたのは、次の四人の方々である。

 全身小学校教師ともいうべき畏友、稲葉久子さん。彼女の教室は、教材を読む子どもたちの言葉の力が、いかなる言語活動で培われるのかを体感させてくれる道場だった。福井大学大学院生の吉田有里佳さん。言葉だけでは伝わりにくいことは、彼女のイラストに手助けしていただいた。編集部の林知里さん。出版に向けての航海の羅針盤。彼女の導きが無かったら、途中で難破していたはずである。最後は、能天気な私にあきれながらも、好き勝手させてくれた家人。記して感謝申し上げます。


 お読みいただいた方々からのご批正、ご教示をたまわれれば幸いである。

著者紹介

三好 修一郎(みよし しゅういちろう)著書を検索»

1950年,福井県生まれ。福井大学教育学部卒業。東京学芸大学大学院教育学研究科(修士課程)修了。同大学附属高等学校大泉校舎教諭,仁愛女子短期大学助教授を経て,福井大学教授。その間,附属小学校長,附属教育実践総合センター長を兼任。福井大学名誉教授。現在,越前市武生公会堂記念館(博物館)長。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 丁寧な説明でわかりやすかったです。
      2019/4/720代・小学校教員
    • 主要な教材について、たくさん、細かく書いてあり、非常に勉強になりました。
      2018/3/440代・小学校教員
    • 例が取り上げられており、わかりやすかった。
      2017/10/2920代・小学校教員
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