- はじめに
- 本書の使い方
- Part1 何問正解できる? 最低限おさえたい音楽用語
- Part2 未経験でもよくわかる! 合唱指導のポイント 基礎編
- 01 「話し声」と「歌声」の違い
- 02 腹式呼吸
- 03 息の通り道
- 04 姿勢
- 05 「地声」のコントロール
- 06 口の開け方
- 07 母音i〜他の母音もつかみやすくなる母音
- 08 母音e〜得意・不得意が分かれる母音
- 09 母音a〜実は難しい母音
- 10 母音o〜こもりやすい母音
- 11 母音u〜響きにくい母音
- 12 子音k・子音(n)g
- 13 子音s・子音z
- 14 子音t・子音d
- 15 子音h
- 16 子音f・子音v
- 17 子音n・子音m
- 18 子音b・子音p
- 19 子音y
- 20 子音l・子音r
- Part3 短期間で上達する! 合唱指導のポイント 実践編
- 01 歌いだしと歌いおわり〜安定した発声法を育てる
- 02 適切な言葉がけ〜大人の発音に変える
- 03 ア・カペラ〜音程改善を図る
- 04 母音唱〜よい響きのイメージをもたせる
- 05 フレーズ読み〜感情を伝達させる
- 06 ミーティング〜生徒の自主性を育てる
- 07 歌詞を読ませる指導〜情景をイメージさせる
- 08 背景知識の紹介〜作詞・作曲者への理解を深める
- 09 音程がとれない子への配慮
- 10 リズムがとれない子への配慮
- 11 変声期の子への配慮
- Part4 日々の練習に使える! 合唱のための身体・声づくり
- 01 合唱に必要な筋肉トレーニング
- 02 発声前のストレッチ
- 03 ウォーミングアップのための発声練習
- 04 課題克服のための発声練習
- Part5 成功間違いなし! 合唱コンクールに向けての指導
- 01 選曲の仕方
- 02 パート分け
- 03 パートリーダーの決め方・育て方
- 04 伴奏者の決め方・育て方
- 05 音とり
- 06 練習中の列の並び方
- 07 舞台上での列の並び方
- 08 指揮法
- 09 アインザッツ
- 10 アイコンタクト
- 11 指揮を置かない小編成のアンサンブル
- 12 本番前の指導法─2週間前
- 13 本番前の指導法─1週間前
- 14 本番前の指導法─3日前
- 15 本番前の指導法─前日
- 16 本番前の指導法─当日
- 17 演奏の振り返り
- Part6 さらにレベルアップさせる! 上級者のためのキーワード
- 01 歌声の理想「明るくて深い声」
- 02 多くの発声課題を解決する技術「支え」
- 03 よく飛ぶ声をつくる音響エネルギー「歌手のフォルマント」
- 04 演奏の印象を決める重要な要素「フレーズの山」
- 05 発声技術の二本柱の一つ「ソステヌート」
- 06 発声技術の二本柱の一つ「アジリティ」
- 07 歌の真髄「レガート」
- Column
- 学校での合唱指導に音楽の専門知識は必須か
- 合唱指導は未経験でもできる
- 合唱の上達を阻む3つのカベ
- 身体づくりの重要性
- 本番に弱い
- おわりに
はじめに
本書は,突然合唱部の顧問をすることになった悩める若い先生方,合唱コンクールの指導をすることになった学級担任の先生,そして,パートリーダーや学生指揮者など,部の指導的立場になった合唱部員のために書きました。
今から20年前,筆者が合唱指導の真似事を始めたころは,インターネットもなく,指揮法や発声は本屋さんで買った一冊の本をもとに,ああでもないこうでもないと研究したり,外国語曲の対訳を探して大きい図書館に行ったり,選曲は楽譜店に通ってよい曲がないかなと楽譜やCDを探したりしていた時代でした。
今やインターネットであらゆる情報が入手できます。しかしながら,合唱指導の実践に関する悩み事は,インターネットでもなかなか解決できないのも事実です。その理由の一つは,合唱指導が指導者と学習者とのかかわりの中に存在するからでしょう。
本書を利用すれば,現在の指導経験にかかわらず,合唱指導に必要な基本的な知識を得ることができます。筆者は専門性(合唱指導者にとっては指導力)を身につけることが,先生方の指導者としてのやりがいや,自信につながると信じています。また,反対にやりがいを感じられるようになると,指揮も,指導技能の習得もさらに早まるでしょう。
指導者が学び,かかわり方が変われば学習者たちの歌声は必ず変わります。学習者たちの歌声が変われば,学習者たちの生活が変わり,学習者たちの生活が変われば,学校が変わり,日々が変わります。
もちろん,本を読んだだけで優れた合唱指導者になった人はいません。本書に書いてあることを実践してみること,そして,それらを省察し,工夫を加えて再び実践することが,最もよいレッスンになります。そして,それによってあなたのオリジナルの合唱指導法が生まれるでしょう。
本書は,読み進めるにつれて,段々ステップアップしていくような構成になっています。もちろん,必要に合わせて飛ばし読みしてもOKです。明日の合唱指導から早速使ってみてください。もちろん,時間があれば,顧問の先生であればご自身が合唱団に所属して実際に合唱活動を経験することや,合唱の演奏会に通い,すばらしい合唱団のメソードをよく観察することも,さらなる学びになります。
皆さんは,有名な指揮者の言葉に「下手なオーケストラがあるのではない。下手な指揮者がいるだけだ」というものがあるのをご存知かもしれません。合唱指導の勉強を始める前に,この言葉をもじって,あえてこの言葉を皆さんに投げかけます。
「下手な部員がいるのではない。下手な指導者がいるだけだ」
さあ,一緒に合唱指導の勉強を始めましょう。
2017年5月 /黒川 和伸
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