国語教育選書
「判断する力」を育む国語科の授業づくり

国語教育選書「判断する力」を育む国語科の授業づくり

新刊

課題解決・言語活動を推進する「判断する力」を育てる

国語科で育成すべき資質・能力「思考力、判断力、表現力等」の「判断力」に焦点をあて、判断の質的な深まりを捉える視点や領域別の判断する視点を明らかにしつつ、AIを活用した事例も含めた「思考→判断→表現」の流れを豊かにする小・中学校等の授業づくりを提案。


紙版価格: 2,046円(税込)

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電子版予価: 1,841円(税込)

9/24刊行予定

ISBN:
978-4-18-236635-2
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中・高
仕様:
A5判 160頁
状態:
在庫あり
出荷:
2025年4月16日

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 「判断する力」を育てる国語科の授業づくりの理論
1 今育てたい「判断する力」とは
2 判断の質的な深まりをとらえる五つの観点
3 授業づくりにつながる判断の内容・契機
第2章 国語科3領域の判断する視点
1 話すこと・聞くことの判断する視点
2 書くことの判断する視点
3 読むことの判断する視点
第3章 「判断する力」を育てる国語科の授業プラン
1 判断の主体性
@【話すこと・聞くこと】「判断する力」を活用して課題解決をする
単元名:社会的な課題について改善策を話し合う(中学2年)
教材名:「シカとの共存のあり方を考える」(自主教材)
A【話すこと・聞くこと】ICTを活用して判断の主体性を育てる
単元名:プレゼンテーションソフトを活用しておすすめの本を紹介しよう(中学1年)
教材名:「読書を楽しむ」(光村)
B【読むこと】他者との対話をもとに思考し,主体的に判断(選択)する
単元名:ようこそ!おはなしランドへ(小学1年)
教材名:「おかゆのおなべ」(光村)
2 目的に合った判断内容
@【話すこと・聞くこと】コミュニケーションにおいて戦略的に判断する
単元名:聞き書きプロジェクト「ほんものと出会う夏」(小学4・5年)
教材名:自主教材
A【話すこと・聞くこと】論理と感性を組み合わせてバランスをくふうする
単元名:説得力のあるプレゼンテーションをしよう−COP会議−(中学2年)
教材名:「クマゼミ増加の原因を探る」「モアイは語る―地球の未来」(光村)
3 判断の根拠の確かさ・視野の広さ
@【話すこと・聞くこと】インタビュー学習でふり返りを重ねる
単元名:推しどころを見つけよう♪きいて,きいて,きいてみることで(小学5年)
教材名:「きいて,きいて,きいてみよう」(光村)
A【話すこと・聞くこと】聞きながら話しながら目的に沿って判断する
単元名:聞き上手になろう 質問で相手の思いに迫る(中学3年)
教材名:「聞き上手になろう」(光村)
B【書くこと】共有と推敲で「表したかったこと」を考える
単元名:私にとっての意味(小学6年)
教材名:「大切にしたい言葉」「今,私は,ぼくは」(光村)
C【読むこと】回想に着目して判断する
単元名:物語の展開の仕方をとらえる(中学3年)
教材名:「握手」(光村・三省堂)
4 判断のスムーズさ
@【読むこと】デジタル1枚ポートフォリオで「判断のスムーズさ」をとらえる
単元名:物語の魅力おすすめ会をしよう(小学5年)
教材名:「大造じいさんとガン」(光村)
A【語彙指導】大和言葉の趣を味わい,語感を生かして適語選択をする
単元名:「日本のふるさとの風景」を「趣言葉」で(中学2年)
教材名:自主教材
5 方法の適切性・くふうの見られる判断
@【読むこと】学習者の「選択しなかった」判断を生かす
単元名:描写を読む,楽しむ(中学1年)
教材名:「にじの見える橋」「はじまりの風」(光村)
A【各領域】日常の指導で判断する力を育てる
教材名:「お手紙」(光村・東書)「さけが大きくなるまで」(教出)「モチモチの木」(光村・教出)「ごんぎつね」(光村・東書・教出)
B【語句指導】日本語教育における「判断」
6 AIと判断する力
@【読むこと】生成AIを活用してディベートする
単元名:ディベートで深める「走れメロス」(中学2年)
教材名:「走れメロス」(光村)
A【書くこと】生成AIによる作文制作を考える
単元名:生成AIの補完援用による自立学習をめざして
あとがき
執筆者紹介

まえがき

 本書『「判断する力」を育む国語科の授業づくり』は,国語科で「育成すべき資質・能力」として取り上げられた「思考・判断・表現」のうち「判断」に光を当て,その能力の育成に資する授業づくりについて探究を行ったものである。

 研究対象として「判断」を選んだ理由は二つある。一つは,前回の研究対象であった「思考」や馴染みの深い「表現」に比べて「判断」の実態や指導法は十分には検討されておらず,検討の必要性を感じたからである。

 「思考」については周知のように盛んに取り上げられており,国語教育実践理論研究会(略称KZR)でも「論理的思考」(論理に則って行われる思考)と「感性的思考」(感性に則って行われる思考)という補完し合う2種類の「思考」を柱として探究し,前著『「感性的思考」と「論理的思考」を生かした「ことばを磨き考え合う」授業づくり』(明治図書,2020)としてまとめた。「表現」も馴染みのある作用・活動であり,これまでもしばしば研究対象として取り上げられてきている。

 「判断」には他の二つに比べ,先行実践・研究や説明が少なく,国語科指導の中で,どこまで視野に収め,どのように育てるかということについて戸惑いを覚えるような状態であった。

 今一つの理由は前回の研究成果とのつながりを見いだしたからである。前著においては,「感性的思考」を「思考」の一つの柱として位置づけたことによって,従来知的・理性的な作用としてとらえられがちであった「思考(考える)」を情意的な「思考(思う)」まで視野を拡げてとらえられるようになった。「判断」が論理学では「思考」の一機能と位置づけられていることを考えれば「思考」同様,知的・理性的な作用とだけ限定せずに,感性的な根拠に基づく「判断」があってもよいのではないかと考えた。そうすれば「思考」の実践的研究と併せて「思考→判断→表現」の流れを豊かにする授業づくりができるのではないかと考えた。

 研究を進めるにあたっては,研究対象を「判断」ではなく「判断する力」とした。動詞化することで授業者・学習者いずれの立場からも授業のめざすところや具体的な活動を見えやすくできるからである。

 本書は,第1章「『判断する力』を育てる国語科の授業づくりの理論」,第2章「国語科3領域の判断する視点」,第3章「『判断する力』を育てる国語科の授業プラン」の3章仕立てである。まず,第1章では,「1 今育てたい『判断する力』とは」「2 判断の質的な深まりをとらえる五つの観点」「3 授業づくりにつながる判断の内容・契機」からなる研究の基礎的な考え方を示した。

 なお,「判断の質的な深まりをとらえる五つの観点」は判断する力が深まったととらえるための観点であり,「判断する力」の備えるべき要件ともいえる。以下に示す5項目である。

 @判断の主体性 A目的に合った判断内容 B判断の根拠の確かさ・視野の広さ C判断のスムーズさ D方法の適切性・くふうの見られる判断

 第2章では「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域それぞれの「判断する視点」を表示し,授業づくりにあたっての手がかりとなるようにした。第3章は授業づくりの実践編であり,第1章の2節で示した「判断の質的な深まりをとらえる五つの観点」に沿った節立てと今日的課題である「AIと判断する力」の6項目からなっている。実践の授業プランの中に,日常の教育,日本語教育,AIの活用などの今日的課題や隣接領域からの視点あるいは日常的な指導を加えたのは本書の試みである。

 「判断」は行き止まりではなく,課題解決や言語活動を前に進め,新たなつながりを生み出す。「推進力としての判断」には「進める働き」と「つなぐ働き」がある。それらがうまく機能するようにしたいものである。


  2025年3月   /益地 憲一

著者紹介

益地 憲一(ますち けんいち)著書を検索»

国語教育実践理論研究会会長。元関西学院大学教育学部教授。

兵庫県生まれ。お茶の水女子大学付属中学校教諭,信州大学教育学部教授を歴任。

国語教育実践理論研究会(こくごきょういくじっせんりろんけんきゅうかい)著書を検索»

略称 KZR。1961年発足の「国語教育実践理論の会」(飛田多喜雄氏が主宰)の後継研究会。現場の国語科学習指導の実践と理論の架橋を目指して研究活動をしている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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