- はじめに
- 1章 「授業開き」で共に学ぶ楽しさを伝える
- 国語 ゲームと音読で、言葉でつながり合う楽しさを味わわせる
- 社会 教室を「ホッ」との笑いでいっぱいにする
- 算数 学び合いを通して、深い学びを味わわせる
- 理科 意見をつなげて学級全員で新たな発見を喜び合う
- 2章 学級経営の基盤となる「4月の授業づくり」で大切にしたいこと
- 国語 「聞くこと7割、話すこと3割」で相手の言葉を受け止め合う
- 社会 「はてな?」で教室を活気づける
- 算数 友だちを称賛する姿を価値づける
- 理科 グループ学習でお互いの発見や気づきを支え合う風土をつくる
- 3章 教室の「気になるあの子」を輝かせるために
- 国語 「目立ちがちなあの子」の見方のおもしろさを受け入れる
- 社会 「話が聴けないあの子」を学びに引き込む
- 算数 「積極的になれないあの子」の勇気を応援する
- 理科 「周囲から浮いてしまいがちなあの子」のこだわりを生かす
- 4章 「話し合い」で子どもをつなげる
- 国語 相互理解と合意形成で双方向の道を通す
- 社会 ジグソー学習法を活用し、考えと思いを伝え合わせる
- 算数 「聴いていたからこその発言」を価値づけ、聴く力を育てる
- 理科 「可視化」と「要約」で話し合いを支える
- 5章 「板書」で子どもをつなげる
- 国語 ネームプレートで、子どもの立ち位置、内面を明確にする
- 社会 子ども参加型板書でつながり、一体感を生み出す
- 算数 素直な子どもらしい感覚や表現を大切に扱う
- 理科 ミニホワイトボードで子どもの学びを生かす
- 6章 「教材」を生かして教室に温かい雰囲気をつくる
- 国語 お互いの見方や考え方のよさを認め合う過程を組み込む
- 社会 働く人への憧れ、その人の願い、工夫や努力を教材にすり込む
- 算数 教材のしかけで、子どもの素直な気づき・考え・思いを引き出す
- 理科 「いのち」の大切さを温かく見守る
- 7章 「学びの軌跡」を生かして成長を認め合う
- 国語 交流や振り返りのひと工夫でがんばりを認め合う雰囲気をつくる
- 社会 友だちが登場するノートをつくる
- 算数 「○○さんの方法」を学級の文化にする
- 理科 理科日記の活用でお互いの成長を認め合う
- 8章 「日常生活」で見取った子どものよさを生かす
- 国語 子どもの何気ない言葉を大切にする
- 社会 子どもの「はてな?」を授業に生かそう
- 算数 子どもが広げ、深めたことを次の授業の教材にする
- 理科 生活と授業を自らつなごうとする姿を価値づける
- 9章 授業の充実で「家庭」とつながる
- 国語 子どものよい学びの姿を家庭にたくさん伝える
- 社会 社会科の宿題を家族で楽しんでもらう
- 算数 板書写真で子どもの努力や成長を保護者に伝える
- 理科 学級通信で学校と家庭の双方から子どものよさを認める
- おわりに
はじめに
ある国語科の時間のこと、学習発表会に向けて、自分たちがどのような練習をしているのかを家の人に紹介することになりました。グループに分かれて話し合いを始めたのですが、Gくんの班はなかなか意見が出せず、司会のFさんをはじめみんなが困っていました。
助け舟を出す機をうかがっていると、司会のFさんがゆっくりとGくんに語りかけ始めます。
「じゃあ、みんなの後に発表してね」(Gくんうなずくも、みんなの後にも言えず)
「みんなの意見に賛成反対を言うのでもいいよ」(うつむいて固まるGくん)
「では、黒板に書いてあることを真似したら?」(猛烈な勢いでノートに書くGくん)
早く話し合いを進めなければという焦りもあったはずですが、FさんはあくまでGくんの困り感に寄り添い、優しく声をかけていました。その姿に胸を打たれた私は、Fさんの言葉を学級全体に紹介した後、次のように全員に伝えました。
「話し合いを上手に素早く進める司会も確かにすごいと思うけれど、優しく気配りをしながら進められるFさんのような人が司会だと、いいよね」
その後の話し合いは、明らかに雰囲気が変わりました。学級全体が、やわらかく、相手を受け止めるような空気に包まれていったのです。
私たち学級担任は、今日より少しでもよい授業をしたいと、日々研鑽を重ねています。同時に、少しでもよい学級にしようと、子どもたちの心に働きかけてもいます。
では、よい授業とよい学級とは、どのような関係にあるのでしょうか。
思えば、これまでにたくさんの先生からそれぞれの考える授業と学級経営のとらえを聞いてきました。
「授業さえうまくできていれば、学級なんてほうっておいてもうまくいくよ」
「授業と学級経営は車の両輪だ。それぞれ別のものとしてがんばらないと」
「学級経営ができていれば、力がなくても授業はなんとかなります」
みなさんは、どの言葉に賛同されますか?
「~さえすれば」とわかりやすい言葉にすることで、授業と学級経営をつなぐ大切な部分が抜け落ちてしまうように思いませんか?
教科の「深い学び」へ向かうためには、友だちとの温かい関係性が必要ですし、温かい関係を築くためには、一人ひとりが主体的に学び、認め合えるような授業が必要です。ですから、私たちは、それぞれの教科の本質へと向かう授業の中でこそ、学級経営ができるのではないかと提案します。
この本では、「こうしたら学級がさらによくなったよ」という授業の事例と、そのための教師の手立てについてまとめています。また、国語、社会、算数、理科の4教科の視点をもって、「この時期であれば」「こういう実態の子どもがいたら」「こういった場面ならば」といった状況に応じた9つの切り口(章構成)で書いています。これにより、例えば4月の授業で気をつけたいことを、4つの教科それぞれの視点で知ることができるようになっています。
4人の筆者がそれぞれの教科の視点から書いているとはいえ、大切にしていることは同じです。それは、一人ひとりの子どもが安心して自分の意思を表せる、互いの存在を大切にして認め合える学級をつくることです。
小学校の担任はほとんどの教科を1人で指導しなければなりません。当然、教科を超えて貫く学級づくりの方法をもっておくことは必要でしょう。
しかし、その教科の学びだからこそできる学級づくりの方法を知ることで、さらに指導の幅が広がるはずです。
「この教材のよさを生かして、もっともっと楽しい学級にするぞ」
と思ってくださる先生が1人でも増えるのであれば、望外の喜びです。ですから、声を大にして言います。
「温かい学級は、よりよい授業をつくろうとする過程ではぐくまれます」
2019年1月 /宍戸 寛昌
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- 明治図書
- 各章、4人の先生方の実践が短くわかりやすく書かれており、大変読みやすいです。とても勉強になりました。2019/2/1630代 小学校教諭