- 赤坂真二のまえがき
- 堀裕嗣のまえがき
- 赤坂真二×堀裕嗣のクロストーク
- 1章 【小学校】学級を最高のチームにする赤坂真二の学級開き・授業開き
- 学級開きのパスワード/赤坂真二
- 最初の3日間 一人残らず笑顔にする
- 出会いの演出のアイデア
- 自己紹介のアイデア
- 安心の場づくりのアイデア
- ほめる・叱る・やる気にするアイデア
- 最初の7日間 教師指導優位で集団をつくる
- 「聞き方ルール」を確立する
- 日直のシステムをつくる
- 係活動のシステムをつくる
- 給食当番のシステムをつくる
- 掃除当番のシステムをつくる
- 最初の30日間 子どもの自由度を増やしチームにする
- 学級目標をつくる
- 「チーム」になる意味を伝える
- ゲームで雰囲気をつくる
- 学級の最小単位を鍛える
- 小集団を鍛える
- 全員で課題達成の経験を積む
- クラス会議でチームにする
- 学級を自治的集団にする
- 自分たちで問題を解決できる集団づくり
- 最高の授業開きネタで学級をスタートする
- 1年 みんなができて,みんなが楽しい国語の授業開き
- 2年 みんなで楽しく,みんなができる国語の授業開き
- 3年 友達との仲を一気に縮める! 風船で体ほぐし運動
- 4年 授業開きで楽しくつかえる国語ネタ
- 5年 持続可能な社会づくりの担い手とみつめていきたいこと
- 6年 学びの楽しさを味わう授業開き
- 2章 【中学校】90日間システムで必ず成功する堀裕嗣の学級開き・授業開き
- 学級開きの10原理/堀 裕嗣
- 最初の3日間 学級開き10原理を意識する
- 余裕のある対応で生徒たちとの心理的距離を縮める
- 最初の7日間 学級のシステムを確立する
- 規律を求める姿勢を示す
- システム1 日直を機能させる
- システム2 給食の公平性・効率性を確保する
- システム3 清掃活動の公平性を徹底する
- システム4 最初の行事を念頭においた班づくり
- システム5 仕事内容に配慮して係分担を行う
- システム6 席替えのルールを徹底する
- システム7 机間巡視・小集団交流を念頭に座席を配置する
- 最初の30日間 学級のルールを定着させる
- 生徒の視覚に訴えながら,考える集団をつくる
- 最初の90日間 授業のルールを定着させる
- 全員参加に向けた授業のUD化を目指す
- 最高の学級開きネタで学級をスタートする
- 1年 エピソード暗唱で心をつかむ
- 2年 縦の関係をつくる「未来日記」
- 3年 笑いを共有することで学級のスタートに弾みをつける
- 執筆者紹介
まえがき
赤坂真二のまえがき
こんにちは,赤坂真二と申します。小学校に19年勤め,現在は教職大学院と呼ばれる教員養成の専門職大学院で教員をしております。昨年度の春,明治図書さんの企画で発刊された雑誌の特集に対する読者の皆さんの反応が大きかったのを受け,堀裕嗣先生のお声かけで本書の刊行が実現しました。
本書のテーマは,学級開きです。「一年の計は元旦にあり」などと言います。何事も始めが肝心ということでしょう。これが,お正月だったら気分の刷新や決意表明など「自分の内なる世界」の営みになりますから,違っていたら,次の日に「やっぱりやめた」ですむことでしょう。しかし,学級開きはそうはいきません。児童生徒というこれから学級を一緒につくる,協働のパートナーがいます。学級開きに「こうします」「こうしましょう」と一度口に出したことは,そう易々と変えることができません。
学級経営は,マイカーでの移動とは違います。自分の意思だけですぐに方向転換できません。また,電車のように行き先が,線路によって決まっているわけではありません。ちょうどそれは,大きな船で旅をするようなものかもしれません。実際に船の方向転換は,かなり難しく,スピード,船の大きさ,重さ,海流の様子を判断しなくてはなりません。大きな船になると1キロ先の障害物も除けきれないことがあるそうです。急な方向転換は,座礁や転覆のリスクを伴います。そもそも船出したばかりで行き先を変えたら,船長への信頼を失います。信頼を失った船長は,もはやその旅を先導することは不可能です。
マネジメントの視点から言えば,学級経営の初日は,極めて重要です。初日の設計の仕方は,その教師の1年のビジョンを示すのです。初日に無策な教師はほとんどいないだろうし,そもそも本書を手にしないことでしょう。初日に無策であることは,出会いにおける人に対する敬意がなさ過ぎます。みなさんも初対面の方に会うときは,少し服装や言葉遣いを正そうとすることでしょう。服装や言葉遣いに対する印象は,その後の人間関係にけっこう重要な影響を及ぼすことを経験的にご存じなのではありませんか。出会いのときを粗末にする姿勢は,すぐに児童生徒に見抜かれ,それがそれからの日々のあちこちで表出することでしょう。
本書を読むと各執筆者が,児童生徒との出会いを豊かにしようと様々な工夫を凝らしています。そこに一人ひとりの教師の個性や考え方の違いが表現されているように思います。しかし一方で,ある程度の傾向が見られると思います。特に,小学校と中学校の違いは明らかではないでしょうか。ひと言で義務教育とは言いますが,そのシステムの違いは思いの外大きいというのが,あちこちの小中学校を支援させていただいている際の印象です。その違いが,ときには小中の連携を阻む要因になっていると思います。
しかし違いを乗り越えるためには,まずは,それを知ることです。小学校の教師には,中学校の実践を読むことを,そして,中学校の教師には,小学校の実践を読むことをお勧めします。初日の設計の仕方が,小学校生活,中学校生活のあり方を象徴しています。初日の姿から,それぞれのあり方を推察することで,連携のヒントを得ることができることでしょう。小学校は中学校のあり方を知ることで,児童がどういう世界に行くのかを知ることができます。それによってそこに必要なものを身につける見通しが立ちます。また,中学校は小学校のあり方を知ることで,生徒がどういう世界から来ているのかを知ることができます。そして,生徒たちが何を求めているかを知り,必要なサポートを構想することができるでしょう。
クロストークでは,学級開きの話を発端にして,小中学校のあり方を見据えた議論をしたつもりです。「社会に開かれた教育課程の実現」をねらう時代に,まず実現したいのは小中の連携だと思っています。義務教育が一貫性をもつこともできずに,社会との連続を考えることなどできるのでしょうか。学級経営の初日は,単にセレモニーに非ず,実に意味深い日なのです。本書が,小中連携を促すためのヒントを示す1冊になることを願っています。
2018年1月 移動中の新幹線の中で
堀裕嗣のまえがき
こんにちは。堀裕嗣です。
「学級開き」をテーマに,「授業力&学級経営力」誌2017年4月号(明治図書)を赤坂真二先生と一緒に編集させていただきました。この号が瞬く間に売り切れ,たいそう評判が良かったものですから,その内容を下敷きに本書を編集しました。時代に即して移り変わっていくものと時代が移り変わっても決して変わらないものとがバランスよく配置された,よい内容になったなと自負しております。本書にはまさに,「いま必要なこと」が書かれたように思います。
「学級開き」は何度経験しても緊張するものです。
2017年度は中学2年生38名の担任。教職27年目で13回目の学級開きに臨んだわけですが,それだけ経験してきてもやはり独特の緊張感があるものです。特に2005年度以降は学年主任として,「学級開き」は自分の学級だけでなく,常にすべての学級をスムーズにスタートさせることを義務づけられてきましたから,緊張感もひとしおでした。
学級開きの緊張感を経験するたび,私はいつも4月の休日に,ふと私を担任してくれた先生方を思い出し,頭の中でしばし過去と戯れます。かつての恩師たちは既に鬼籍に入られた方も少なくないのですが,あの先生はどんな思いを抱きながら私たちと出会ったのだろう……そんなことを思うのです。 ある年の担任は退職まであと数年という時期。きっと「もしかしたらこの学級が最後の担任学級になるかもしれない」なんて思いを抱いていたのではないか。
ある年の担任は新婚ほやほや。しかも私たちを担任して夏には子どもが生まれましたから,学級開きの時期には仕事と家庭への配慮でたいへんだったに違いない,それにしてはずいぶんと迷惑をかけたなあ……なんてことも思います。
ある年の担任は四十代前半のバリバリ。生徒指導担当で,学校で一番怖い先生との評判。ああ,「絶対に自分の学級を崩すことなんてできない」とのプレッシャーに苛まれていただろうな。そんなことも思います。
私たちはいま,当然のように学級開きを迎えます。自分の仕事として。そして,子どもたちを成長させるのだと決意して。さらには自分にはその資格があるのだというプライドとともに。しかし,私たちの中には間違いなく,かつてお世話になったあの先生方が無意識のうちに生きています。学級活動のイメージ,行事への取り組みのイメージ,生徒指導で子どもたちにどう接するべきかというイメージ,子どもたちに語りかける作法のイメージ,必要事項を板書するときのイメージ……。私には自分が何気なく施した教育活動に「あっ,あの先生の真似してる…」と気づかされることがよくあります。自分が好きだった先生ばかりでなく,自分が嫌いだった先生でさえ,反面教師として自分の中に機能させているなあと感じることがよくあります。
もちろん,これはかつての恩師に限ったことではありません。かつての教え子に対する指導,成功事例であろうと失敗事例であろうと,当然のようにその経験を活かして学級開きにも生徒指導にもあたっています。
そんなことを考えていると,かつての先生方とも,かつての教え子たちとも,確かに1年か2年という短い期間とはいえ,「ああ,人生が交差していたのだなあ……」と感じるのです。
「学級開き」とはおそらく,自分にも子どもたちにも,その後の人生に無意識に影響を与えてしまうような「人生の交差」が始まる,そんな瞬間なのかもしれません。そう考えると,自分のできる最大限の準備,最大限の配慮をして臨まなくてはならない,素直にそう思えるのです。
2018年1月 小さな頃/八神純子を聴きながら……
単に、学級開きについて学びたい方は、来年度に役立つので、とてもいいと思います。